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憲法の規定する生存権って一体何?-公務員試験憲法を分かりやすく

最近よく憲法の講義で「生存権」という用語がよく出てくるのですが、人々が生きていく権利を与えているってことでしょうか?

確かに生存権は人々が生きる権利なのだけど、日本国憲法では、ただ生存を保障するだけではなくて、健康で文化的な最低限度の生活という最低ラインは必ず国は保障しましょうという社会権的な規定になっているよ。生存権については時々出題されるので、今日はしっかりと理解できるようにしようか。

社会権とは?

そもそも生存権は、福祉国家的思想に基づいて、社会的・経済的弱者を保護するために保障されるに至った社会権の一種になります。社会権とは、国家に干渉されない自由(国家からの自由)を訴える自由権とは異なり、より良い環境で生活をするために国家に改善を求める権利(国家による自由)になります。日本国憲法では、社会権は大きく以下の4つがあります。

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日本国憲法における社会権の規定

日本国憲法では、社会権に関する規定として①生存権(25条)、②教育を受ける権利(26条)、③勤労の権利(27条)、④労働基本権(28条)があります。ただし、例えば②の26条教育を受ける権利のように、社会権的性質だけでなく、教育内容について干渉されないという自由権的性質を持つものもあります。

 

 

憲法25条生存権とは?

今回は社会権の中でも生存権について見ていきたいと思います。日本国憲法には、25条で以下のように生存権を規定しています。

憲法25条

①すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

②国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

25条1項は、生存権という国民の権利を宣言したものであるとされています。そして2項で、生存権保障のための国の責務を定めているとするのが通説です。

 

 

生存権の法的性質

憲法25条1項の規定ですが、ここで問題になるのが生存権の法的性質になります。つまり、25条1項の規定が、国が国民の生存権を保障してくれない時、25条1項に基づいて訴えることができるのかどうかという問題です。25条1項の捉え方として、公務員試験で出題される学説は以下のように大きく3つあります。

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生存権の法的性質

まず一つ目は、プログラム規定説と呼ばれる考え方です。これは「憲法25条は国民の生存を国が確保すべき政治的・道義的目標を定めただけで、具体的な権利は定めたものではないという考え方」になります。そのため、生存権を保障するための法律がない状態で「国の対応はおかしい!」と違憲確認訴訟を起こすこともできませんし、違憲の根拠にもなりません。なぜなら、25条の規定は国の責務を宣言しただけで、法的義務はないためです。

 

次に二つ目は、抽象的権利説と呼ばれる考え方です。これは「生存権は直接25条に基づき訴えを起こせず、生存権を具体化する法律があって初めて訴えを起こせるという考え方」になります。これもプログラム規定説と同様に、生存権に関する法律がない状態で違憲確認訴訟を起こすことはできません。しかし、プログラム規定説とは異なり、25条は政治的・道義的目標を定めているのではなく、生存権は国民の権利であることを規定しています。そのため、具体的な法律や国家行為に対しては違憲かどうか判断する際の根拠として25条をつかうことができます。

 

三つ目は、具体的権利説と呼ばれる考え方です。これは「憲法25条は生存権の内容を具体化する法律がなくても直接25条に基づき訴えを起こせるという考え方」になります。そのため、抽象的権利説と同様に具体的な法律や国家行為に対して違憲かどうかを判断する根拠になるのはもちろんのこと、具体的な法律がなくとも違憲確認訴訟を行うことができるという点で異なります。

 

どの考えが通説であるかは国によって異なりますが、日本の場合は二つ目の抽象的権利説が通説であるとされています。

まとめ

社会権とは、福祉国家的思想に基づいて、社会的・経済的弱者を保護するために保障されるに至った権利のこと。

生存権社会権の一種である。

生存権の法的性質として、①プログラム規定説、②抽象的権利説、③具体的権利説があるが、日本では②の抽象的権利説が通説とされる。

憲法22条1項が規定する居住・移転・職業選択の自由とは?-公務員試験憲法を分かりやすく

憲法の講義を受けていると、よく精神的自由と経済的自由という用語が出てくるのですが、精神的自由は思想・良心の自由など既に勉強したので理解できているのですが、経済的自由って具体的にどういうことなのでしょうか?

経済的自由は、①職業選択の自由と、②居住・移転の自由、③財産権という3つの権利のことを言うんだけど、①と②は憲法22条に規定されている自由になるよ。公務員試験でもよく出題されるから、今日は特に憲法22条1項について詳しく見ていこう~!

経済的自由とは?

そもそも経済的自由とは、国家によって個人の経済活動が侵害されない自由を表しています。日本国憲法では、経済的自由権は以下のように3つに大別されます。

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経済的自由権の分類

ただし、②の居住・移転の自由は、他の人との交流や自分自身の知見を広めるという目的の下で移転などを行うという理由もあるため、経済的自由権ではなく、精神的自由権に分類されるという考え方もあります。しかし、日本国憲法では、②の居住・移転の自由は、憲法22条1項で①の職業選択の自由と同列に記載されているため、経済的自由とされます。

 

元々経済的自由権は、国家に自分の財産を保障してもらうための重要な権利として、市民革命期には不可侵の権利であるとされてきました。しかしながら現代では、法律による規制もやむを得ないものとして、精神的自由に比べ緩やかな基準で合憲性が審査されています。

 

 

憲法22条1項の規定する自由は?

日本国憲法には、22条と29条において経済的自由が規定されています。憲法22条1項では、以下のように職業選択の自由と居住・移転の自由が規定されています。

憲法22条1項

何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

憲法22条1項では、①職業選択の自由、②居住の自由、③移転の自由という3つの自由を規定しています。まず①の職業選択の自由ですが、これは自分のやりたい職業を決定する自由を意味します。さらに判例・通説では、職業選択の自由には、自分の選択した職業を遂行する自由、つまり「営業の自由」も含まれているとされています。

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職業選択の自由とは?

さらに、憲法22条1項は②と③の居住・移転の自由も規定しています。居住・移転の自由とは、自分の住む場所を自由に決定、移動できる自由で、国内旅行の自由も含まれます。ちなみに、海外旅行の自由は22条2項で規定されています。

 

 

職業選択の自由の保障の限界とは?

経済活動をする以上、他の人との関わりの中で活動をする必要があります。そのため、いくら自由があるといっても周りの人たちに迷惑をかけるような経済活動の場合、場合によっては国家によって規制されることがあります。この点、憲法22条1項でも、文言の中に「公共の福祉に反しない限り」と規定しており、そのほかの精神的自由権などに比べ公共の福祉による制約が厳しくなることが類推できます。

 

 

二重の基準論とは?

そこで、学説においては、「二重の基準論」を用いて、職業選択の自由を規制する立法の合憲性を審査するべきとしています。

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二重の基準論とは?

「二重の基準論」とは、精神的自由を規制する立法の合憲性は、経済的自由を規制する立法よりも厳しい基準で審査されなければならないという考え方になります。つまり、経済的自由の一種である職業選択の自由を規制する立法を裁判所が審査する場合、精神的自由に対する規制の審査と比較して、より緩やかな審査基準で判断されるべきとなります。

 

これは、経済的自由に対する規制がもし不当なものであったとしても、議会という立法過程で修正可能であるためです。また、行政による専門的な知見によって立法された規制について、裁判所は審査しにくいという点もあり、経済的自由に対する規制については緩やかな審査基準で判断するべきとしています。

 

 

職業活動の自由を規制する立法の違憲審査基準は?

職業選択の自由を規制する立法に対して緩やかな審査基準で判断するとしていますが、その審査基準も立法目的によって少し基準が異なってきます。

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経済的自由に対する違憲審査基準

経済的自由に対する規制を審査する際、まず大きく規制目的を「消極目的規制」と「積極目的規制」の2つに分けます。「消極目的規制」とは、「国民の生命及び健康に対する危険を防止するために加えられる規制」のことを言い、国家が国民を守るためにやむを得ず行う規制になります。一方で、「積極目的規制」とは、「経済の調和のとれた発展を確保し、特に社会的・経済的弱者を保護するための規制」を言います。これは、国民の生命や健康など直接的な危害はないが、弱い立場の人たちを守るために国家が積極的に施行する規制になります。

 

「消極目的規制」については、生命・健康というやむを得ない規制であるため、裁判所は専門的知識が不要であり、その他のより良い規制方法はないか審査することになります。これが「厳格な合理性の基準」になります。

 

一方で、「積極目的規制」については、国家が弱者保護のために行う規制であるため、専門的な知見に基づいて規制を行います。そのため、裁判所としても判断が難しい部分があります。そこで「明白性の原則」に基づいて、規制が著しく不合理であることが明確である場合に限り違憲にしています。

 

この考え方に基づいて判断された判決としては、「薬局距離制限事件」と「小売市場距離制限事件」があります。

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「薬局距離制限事件」と「小売市場距離制限事件」

「薬局距離制限事件」では、薬局開設の許可制について、「薬局が自由に開設されてしまうと競争が激化し、経営状態が悪くなる薬局も出てくるため、国民の生命や健康に悪影響を及ぼすための規制」であるという積極目的による規制を行っていましたが、裁判所は「厳格な合理性の基準」に基づいて、規制には合理的な正当性がないとして、当該規制を違憲としました。

 

一方で、「小売市場距離制限事件」では、小売市場の許可制について、「過当競争は中小企業の共倒れを招く可能性があり、安定的な経済発展のための規制」であるという消極目的による規制を行っていましたが、裁判所は「明白性の原則」に基づいて、著しく不合理である明白ではないため合憲としました。

まとめ

・経済的自由とは、国家によって個人の経済活動が侵害されない自由のこと。

・経済的自由は、①職業選択の自由と、②居住・移転の自由、③財産権から成る。

・①職業選択の自由と、②居住・移転の自由は、憲法22条1項に規定されている。

・経済的自由を規制する法律の合憲性は、「消極目的規制」と「積極目的規制」に分けて「厳格な合理性の基準」と「明白性の原則」に基づいて審査される。

表現の自由って一体何?-公務員試験憲法を分かりやすく

最近よく憲法の授業の時に「表現の自由」って用語が出てくるのですが、あまりよく理解できていません…。「自分の言いたいことを自由に言える自由」なのは理解しているのですが、そんな簡単なものではないような感じなので、頭がこんがらがってきました…。

確かに公務員試験の憲法科目の「基本的人権」の中でも多くのページが割かれる部分だし、経済的自由など他の基本的人権と大きく関わってくる分野だから、意外と覚えにくい基本的人権ではあるよね…。そうしたら今日は、「表現の自由」について一から理解できるようにしようか!

憲法21条1項の規定は?

日本国憲法では、憲法21条1項で以下のように基本的人権を規定しています。

憲法21条1項

集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

実は憲法21条1項は、表現の自由そのものだけでなく、集会や結社の自由も規定しています。詳しい内容は割愛しますが、何か自分の意見をみんなに知ってもらいたい時、場合によってはデモや集会など注目を浴びやすい場所で発信するのも手段の一つになると思います。また、自分一人が声をあげても注目してもらえないかもしれませんが、同じ考え・志をもつ人たちと一緒になって声をあげることで世間に注目してもらいやすくなります。このように、一緒に集まって声を上げたり、同志を集めて自分の意見を発信するという集会の自由や結社の自由は、表現の自由に大きく関わってきます。そのため、憲法21条1項は集会、結社の自由を表現の自由として規定しています。

 

 

表現の自由とは?

憲法21条1項に規定される表現の自由とは、「自分の考えている意見や立場を公権力に調べられたり規制されることなく表明する権利」を言います。

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表現の自由とは?

なぜ表現の自由基本的人権の保障に不可欠かというと、①言論活動を通じて自己の人格を発展させるという個人的な意義(自己実現の価値)と、②言論活動によって国民が政治的意思形成に参加するという社会的な意義(自己統治の価値)という2つの理由があるためです。

 

また、憲法21条の表現の自由は、知る権利も含まれているとします。表現の自由とは、自分が一方的に意見を発信する自由だけでなく、情報のコミュニケーションの自由という双方向のやり取りの自由を意味しています。そのため、マスメディア(新聞社やテレビなどマスコミのこと)や個人が、国家の持つ情報を請求する権利などが憲法21条から導かれるとされます。

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知る権利とは?

知る権利には、①情報の受領を侵害されない権利と、②情報の開示を請求する権利という2つの性質があります。①の情報の受領を侵害されない権利は、憲法21条1項によって直接的に保障されるとされますが、②の情報の開示請求については、具体的な権利として保障されるためには法律や条例などの立法が必要とされます。

 

イメージとしては、公務員試験の成績開示が分かりやすいかと思います。各自治体のHPなどを見ると、成績開示を行っている自治体もありますが、行っていない自治体もあります。つまり②の情報の開示請求については、具体的な権利ではないため、各公共団体で情報開示制度がない限り②の権利を保障する必要がないためです。

 

 

表現の自由の制限

個人の尊厳を確保するために必要不可欠な表現の自由ですが、無制限ではありません(公共の福祉による制限)。なぜなら、いくら表現の自由があるからと言っても他人を誹謗中傷したり、社会的に好ましくない場所、方法で自身の意見を発信すると、別の人に迷惑が掛かってしまうことがあるためです。

 

そこで学説では、「二重の基準論」を用いてどのような表現が規制されても違憲とならないかを検討しています。「二重の基準論」とは、精神的自由を規制する立法の合憲性は、経済的自由を規制する立法よりも厳しい基準で審査されなければならないという考え方になります。

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二重の基準論

なぜ同じ基本的人権にも関わらず精神的自由と経済的自由で審査基準が異なるかと言うと、精神的自由は一度侵害されてしまうと、国民の力によって元通りの状態に戻すことが困難になるためです。一方で、経済的自由は一度侵害されたとしても、精神的自由が損なわれていなければ議会で国民の手によって戻すことも可能です。また、経済的自由の規制については、専門的な事項が多く、裁判所が判断するにも困難な面もあるため、立法府の判断が尊重されるためです。

 

 

表現の自由違憲審査基準

表現の自由は、精神的自由に含まれます。そこで裁判所は表現の自由を規制する立法の合憲性について厳しい基準を用いて審査することとなります。精神的自由を違憲審査基準は通説と裁判所で意見が異なる部分があるため理解するのは難しいですが、表現の自由に関して、①表現の内容自体に規制をかけた立法と②表現の時・場所・方法という内容以外に対する規制をかけた立法で合憲性の判断基準が異なります。

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表現の自由違憲審査基準

まず、①の表現の自由自体への規制の審査基準ですが、通説では「煽動」を処罰する法規については「明白かつ現在の危険」の基準を適用するべきとしています。また、性表現や名誉棄損表現には「定義づけ衡量」など、厳格な基準を用いるべきとしています。しかしながら、判例では「明白かつ現在の危険」の基準を用いていなかったり、「定義づけ衡量」も不十分であるなど、通説と判例では異なっています。

 

一方で、規制自体はしょうがないとしても、国民の表現の自由を最大限保障するために、時と場所によってはその内容でも認めてあげるべきです。例えば、渋谷のスクランブル交差点で届け出なしでデモをするのはもちろん規制されるべきですが、手続きを踏んだデモなどは認められるべきです。そこで②の表現の内容以外に対する規制の審査基準として、通説では「LRAの基準」(より制限的でない他の選びうる手段の基準)を用いて、最大限表現の自由を認めてあげるべきとしています。しかしながら、判例では合理的関連性の基準を用いており、通説と判例では差異が生じています。

まとめ

憲法21条1項は、表現の自由を規定している。

表現の自由とは、「自分の考えている意見や立場を公権力に調べられたり規制されることなく表明する権利」のことを言う。

表現の自由の合憲性判断のために、「二重の基準論」が用いられる。

表現の自由に対する規制の合憲性判断は、表現の内容自体に規制をかけた立法と②表現の内容以外に規制をかけた立法とで異なる。

憲法の規定する学問の自由の具体的な内容は?-公務員試験憲法を分かりやすく

先日憲法の講義で、「学問の自由」について勉強したのですが、憲法の規定する「学問の自由」は自分の好きな勉強をできる自由だけでなく、研究の自由とか色々と含んでいると聞いて、何だか混乱してきました…。

そうだね。憲法の規定する「学問の自由」は、「学問研究の自由」や「研究発表の自由」、「教授の自由」など様々な自由を含むと解するよ。その他「大学の自治」もあるのだけど、今日は「学問の自由」の全体像を理解できるようにしよう!

憲法の規定する学問の自由とは?

戦前の明治憲法下において、滝川事件や天皇機関説事件など学問の自由が公権力によって干渉されてしまうことがありました。その反省から、日本国憲法憲法23条で、以下のように「学問の自由」を規定しています。

憲法23条

学問の自由は、これを保障する。

とてもシンプルな条文ですが、学問の自由は一般に、①学問研究の自由や、➁研究発表の自由、③教授の自由と言う3つが含まれているとされています。

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学問の自由の内容

①の学問研究の自由や➁の研究発表の自由はイメージしやすいと思います。一方で③の教授の自由とは、教師の教え方や授業の内容に関する自由になります。

 

教授の自由ですが、通説では、小中高等学校の教師や大学教授全てに認められるとしています。一方で、大学などの高等教育の教授/教員が持つ教授の自由の範囲と、小中高等学校の教師が持つ教授の自由の範囲は異なるとしています。

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教授の自由

小中高等学校など普通教育機関は、その性質上教員によって教える内容などに差が出ては教育の機会均等が維持できないためです。一方で、大学などは高等教育機関として専門的に学ぶ場所でもあるため、教授の自由が広く認められています。

 

 

大学の自治とは?

憲法23条の保障する「学問の自由」には、①学問研究の自由や、➁研究発表の自由、③教授の自由以外にも、「大学の自治」の保障も含んでいるとされます。「大学の自治」とは、直接的には人々が自由に勉強のできる学問の自由のことではありません。しかしながら、実際に国民の学問の自由を保障するためには、自由に学問を学び研究をする施設自体が政府に不当に介入されないようにする必要があります。そのため、「学問の自由」を直接的に規定するだけではなく、「大学の自治」という制度面から間接的に保障する必要があるため、「大学の自治」も「学問の自由」の一つとして保障されると解されます。

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大学の自治とは?

大学が自由に決定できる「大学の自治」の範囲として、判例では上記のように①学長・教授その他の研究者の人事の自治と、②大学の施設・学生の管理の自治の2つを挙げています。

 

特に、②については東大ポポロ事件判決では、大学の自治と警察権との関係が争論になりましたが、判決では、「実社会の政治的社会的活動のための集会は、大学の学問の自由と自治には含まれないから、大学の了解のない警察官による大学構内の警備公安調査活動であっても、違法ではない」としました。

まとめ

憲法23条は、「学問の自由」を規定する。

・「学問の自由」は、①学問研究の自由や、➁研究発表の自由、③教授の自由と、④大学の自治の保障も含んでいるとされる。

・大学の自治は、制度的保障として、学問の自由を間接的に保障している。

憲法における国民の三大義務ともう一つの義務とは?-公務員試験憲法を分かりやすく

憲法の講義で、憲法の規定する国民の義務は何かを質問されたのですが、ど忘れしてしまっており答えられず、恥ずかしかったです…。

常識でもいきなり聞かれると緊張して忘れてしまったりするからしょうがないよね。じゃあ、今はもう思いだした?

えぇっと、①納税の義務、➁勤労の義務、③教育の義務だったと思います。

そうだね。それらは国民の三大義務と言われたりするよね。でも憲法には、意外と知られていないんだけど、三大義務以外にも国民の義務について規定している部分があるよ。せっかくだから、国民の三大義務と併せて今日は理解できるようにしよう!

国民の義務とは?

日本国憲法は全11章から成る日本の最高法規ですが、第三章では「国民の権利及び義務」が規定されています。

 

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日本国憲法の構造

憲法の趣旨は個人の尊厳の確保であるため、第三章のメインは「国民の権利」になります。しかしながら、国家の存在を前提とする以上、国家の維持や公共の福祉の維持・整備のため国民一人ひとりが果たすべき義務も規定されています。

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国民の義務

そこで憲法は、中学校の社会科の時間に勉強する「納税の義務(30条)」や、「勤労の義務(27条1項)」、「教育の義務(26条2項)」といういわゆる「国民の三大義務」や、一般的な義務として「人権保持義務(12条)」の計4つの義務を規定しています。

 

 

国民の三大義務とは?

憲法は「国民の三大義務」として、「納税の義務」、「勤労の義務」、「教育の義務」という3つの個別的義務を規定しています。

納税の義務

納税の義務は、憲法30条で以下のように規定されています。

憲法30条

国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

国家が国民の基本的人権を確保するためや、国家そのものを運営するためには、言うまでもなくお金が必要になります。憲法30条は、国民はその能力に応じて国家の財政を支える義務があるとしています。しかしながら、立法府が恣意的に徴収してもいいというわけではなく、立法府、つまり議会の承認を得た法律によって納税額などを決定することが憲法には規定されています。

勤労の義務

憲法27条1項には、以下のように勤労の義務を規定しています。

憲法27条1項

すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

27条1項は、勤労の権利を規定するとともに、義務についても規定しています。働いて生活を維持できる者は自分で稼いで生活を維持するべきという自由主義に立脚した考え方になります。もちろん、病気などで働けない人も強制的に働かなければいけないという強制性はなく、社会保障が必要とされる人に対して憲法社会権という基本的人権を規定することによって保障しています。

教育の義務

憲法26条2項には、以下のように教育の義務を規定しています。

憲法26条2項

すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

26条1項では、国民が「教育を受ける権利」を持っているとしましたが、「教育を受ける権利」とは、国家が国民に対して保障するべき権利になります。

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学校教育法における教育の義務と罰則

一方で、26条2項の「教育の義務」とは、親が自分の子どもに対して負う義務になります。学校教育法では、17条1項と2項で子どもが小学校、中学校に通わせる保護者の義務を規定しており、義務の督促を受けてなお履行しない保護者は144条の規定に基づき10万円以下の罰金に処するとされています。但し、不登校など一定の事情の下では義務を怠っているとは言えないため、この規定が適用されることはありません。

 

 

国民の一般的義務とは?

「国民の三大義務」は、「納税の義務」、「勤労の義務」、「教育の義務」ですが、日本国憲法ではこれらとは別に、「人権保持義務」という義務が憲法12条に定められています。

憲法12条

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

国家が国民の自由や権利の保障するべき責任を負いますが、国家は納税などの国民の協力によって初めて正常に成り立ちます。そのため、憲法では、自由及び権利を享受できるよう国民自体もその努力を怠ってはならないという趣旨を規定しています。

 

この規定は、納税の義務などのように具体的な義務を規定しているわけではなく、「人権保持のために国民一人ひとりが努力しましょう」という趣旨を述べたものであるため、「国民の三大義務」とは一緒にされませんが、この「人権保持義務」も合わせて憲法に規定される国民の義務であるといえます。

まとめ

憲法では、納税の義務、勤労の義務、教育の義務、人権保持義務が規定されている。

憲法14条の規定する法の下の平等とは?-公務員試験憲法を分かりやすく

最近憲法の過去問演習始めたのですが、憲法14条の「法の下の平等」について意味が曖昧だったのでよく間違えてしまいます。

過去問演習始めてて偉いね。「法の下の平等」については公務員試験でも最頻出分野だからしっかり覚えてないと他の受験生と差がついてしまう分野だね。それじゃあ今日は「法の下の平等」についてマスターできるようにしよう!

法の下の平等」とは?

そもそも法の下の平等の原理は、「国家からの自由」という原理とともに、アメリカ独立宣言やフランス人権宣言など18世紀から明確に宣言されている大原則になります。日本国憲法でも「個人の尊厳」を守るために14条1項で規定されている原理になります。

憲法14条

①すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

③栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

 

法の下の平等」の意味とは?

憲法14条1項に規定されている「法の下の平等」は、通説では①法内容の平等と➁法適用の平等という2つの意味を持っているとされています。

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法の下の平等の意味

①法内容の平等と➁法適用の平等という2つの平等が、「法の下の平等」の平等の意味であるとするのが、法内容平等説(立法者拘束説)と呼ばれる説です。元々は、法が適用される時点での平等だけを規定する法適用平等説(立法者非拘束説)がありましたが、いくら法が平等に適用されたとしても、そもそも適用する法自体が不平等なものなら法適用の平等が保障されていても意味がないので、法内容平等説が通説とされています。

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法内容の平等と法適用の平等



平等の具体的な内容は?

憲法14条に規定されている「平等」ですが、人によって平等の定義はまちまちです。例えば、どんな人であっても全て同一に取り扱うという考え方は「絶対的平等」と言われています。例えば、プログラミング経験者であるAさんと未経験者のBさんという2人がいると仮定します。この時、スキルが異なっていても給料や待遇に差を設けてはいけないというのが「絶対的平等」になります。しかしながら、全て同一の待遇となってしまったら、逆に不公平になってしまいます。

 

そこで憲法の規定する「平等」とは、個人の現実の違い(スキルや性別、年齢、経済格差など)を前提とした取り扱いの違いは許容するが、同じ事情や同じ条件については平等に取り扱う「相対的平等」のことであるとしています。

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絶対的平等と相対的平等

また、憲法14条1項後段では、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」とどのような場面において平等が要請されるか具体例が規定されています。人種や信条など、14条に規定された例のみ平等が要請されるとする「制限列挙説」もありますが、判例では、14条に規定された例だけではなく、年齢などその他の事情も差別してはならず、14条に規定された内容は例であるという「例示説」をとっています。

 

 

法の下の平等違憲審査基準は?

憲法14条の「法の下の平等」は、「相対的平等」を表していることを話しましたが、具体的にどのような区別が認められて、どのような差別が認められないのでしょうか?判決や学説では、ある取り扱いの違いが差別として憲法に反するか否かの判断基準として、正当な理由のある合理的な区別の場合には、合憲と判断しています。

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法の下の平等に反するか否かの判断基準

では「合理的な区別」とはどういった区別であるかについてですが、公務員試験で出題される違憲審査基準では、人種・信条など平等が要請される内容の重要性によって審査基準を分けるという方法をとっています。

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合理的差別かどうかの違憲審査基準

要請される平等の重要性に合わせて、裁判所が合憲か違憲かを審査する基準が変わってきます。まず、わざわざ憲法が14条1項に規定さている人種や信条などに対する制限は、どうしても必要不可欠な規制ではない限り、違憲であると判断する「厳格な審査基準」を採用しています。また、一度侵害されてしまうと回復が困難になってしまう精神的自由に対する制限も「厳格な審査基準」によって判断されます。

 

次に、経済的自由権の中でも、「国民の安全を守るための必要最小限度の規制」を課すような消極目的規制の場合には、「厳格な合理性の基準」を採用して違憲かどうかを判断しています。「厳格な審査基準」によって審査する時には、実質的に関連性のある手段であれば合憲と推定されます。

 

最後に、一番緩やかな審査基準として「合理性の基準」があります。「合理性の基準」は、経済的自由権の中でも、「社会・経済政策関係の専門知識が必要とされる規制」を審査する際に採られる審査基準になります。立法に高度な専門知識が要求されるような規制については、裁判所には判断が難しい場合もあります。そのため、原則としては立法府の判断に任せながらも、立法府の判断が明確に不合理なものである場合には、裁判所が判断するという流れになっています。

まとめ

憲法14条は「法の下の平等」を規定している。

・「法の下の平等」は、①法内容の平等と、➁法適用の平等を意味する。

・平等の意味について、「絶対的平等」と「相対的平等」があるが、通説は「相対的平等」である。

違憲審査基準として、「厳格審査基準」、「厳格な合理性の基準」、「合理性の基準」があり、審査対象によって審査基準が使い分けられる。

憲法の規定する人身の自由ってどういう意味?-公務員試験憲法を分かりやすく

最近北朝鮮の収容所に関するニュースを見たのですが、不当に捕まえた人に対して拷問したりとかしていて本当ひどいですね…。でも日本でも昔はそういった拷問とかが普通に行われてたと聞きました。実際、日本ではいつからそういった拷問とか不当逮捕がなくなったのでしょうか?

日本では、明治憲法下においては人身の自由を不当に制限するような逮捕や拷問とかが行われていたんだけど、戦後日本国憲法ができてからは、過去の反省から人身の自由をしっかりと保障するようになったんだよ。公務員試験では出題は多くない部分ではあるけど、それでも出題されることはあるから、今日は「人身の自由」について勉強していこうか。

人身の自由とは?

日本国憲法に規定される基本的人権は、①自由権、➁社会権、③参政権、④その他の権利と大きく4つに分類することができます。

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基本的人権の種類

その中でも①の自由権とは、個人に対する国家の介入を排除する「国家からの自由」を規定しており、人権保障の考え方が確立した当初から現代に至るまで、人権体系の中心的地位を占める権利になります。①の自由権は、①精神的自由、➁経済的自由、③人身の自由に分類されます。

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自由権の分類

今回紹介する人身の自由は、上記のように自由権の一つとして分類されます。人身の自由とは、不当な逮捕や監禁、拷問など人身に対する不当な迫害からの自由を言い、「身体の自由」と言われることもあります。冒頭でも少し話しましたが、明治憲法下では、政府による不当な逮捕や拷問が制限されておらず、人身に対する不当な迫害がまかり通ってしまっていました。そこで、日本国憲法では、戦前の反省を踏まえて、以下のような体系で人身の自由を保障しようと試みました。

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憲法における人身の自由の全体像

まず、日本国憲法では、憲法18条や31条で人身の自由それ自体について規定を置いています。そしてさらに、人身の自由の規定をより確実にするために、逮捕時の被疑者の権利や被告人の権利を33条から39条の間で規定しています。以下、それぞれ具体的に見ていきましょう。

 

 

憲法18条における奴隷的拘束・苦役からの自由とは?

憲法18条では、以下のように奴隷的拘束・苦役からの自由を規定しています。

憲法18条

何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

18条に規定される「奴隷的拘束」とは、人間の尊厳に反する身体の拘束のことを言います。これは例えば、人身売買や、タコ部屋での強制労働などが奴隷的拘束に当たります。また、「意に反する苦役」とは、本人の意思に反して強制される強制的な労務のことを言い、徴兵制については、日本国憲法では徴兵義務を規定していないため、意に反する労務として、禁止されています。

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憲法18条の意味

「奴隷的拘束」については絶対的に禁止され、公共の福祉による制約もしてはならないとされています。一方で、「意に反する苦役」については犯罪による処罰の場合など例外が認められています。

 

 

憲法31条における適正手続きの保障とは?

また、憲法では国家による刑罰権行使の濫用を防ぎ人身の自由を保障するため、憲法31条で以下のように法定手続の保障についても定めています。

憲法31条

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

憲法31条の条文だけ見ると、法律で手続きが定められていることのみ規定しているように見えますが、通説では、以下4つのことについて規定していると考えられています。

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憲法31条の内容

図上の「手続きの法定」と「手続きの適正」についてですが、まず人身の自由を保障するためには、手続きという過程に関する法律が明確かつ適正に定められている必要があります。例えば、二つ目の「手続きの適正」について、公権力が国民に刑罰その他の不利益を科す場合、当事者にあらかじめその内容を告知し、弁解と防御の機会を与えなければならないという「告知と聴聞を受ける権利」が保障されています。

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手続きと実体の関係

一方で、「実体の法定」と「実体の適正」についてですが、「実体」とは「権利や義務」そのものを言います。具体的には、学問の自由や思想・良心の自由など具体的な権利義務のことを言います。憲法31条の文言は直接的には法律の手続きについて規定していますが、そもそも手続きの前提となる具体的な権利義務も法律で適正に定められている必要があります。そうでないと、公権力が恣意的に「○○という権利は基本的人権ではないから保障する必要はない!」として、基本的人権が侵害されかねないからです。

 

そのため、憲法31条では、「手続きの法定」、「手続きの適正」、「実体の法定」、「実体の適正」という4つを保障していると考えられています。

 

 

刑事裁判手続きに関する規定(33条~39条)

18条と31条は、人身の自由の基本的原理を定めていました。一方で、33条から39条は、刑事裁判手続きについてのルールを規定しており、「被疑者の権利」と「被告人の権利」の2つに分類することができます。

刑事裁判手続きの保障

1.被疑者の権利(33~35条)

2.被告人の権利(37~39条)

被疑者の権利(33~35条)

被疑者の権利とは、捜査過程における被疑者の人権を確保するための規定になります。

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被疑者の権利

被疑者の権利を規定する33~35条では、①不当な逮捕からの自由、➁不当な抑留・拘禁からの自由、③住居の不可侵について規定しています。被疑者というのは「罪を犯した疑いがあるが、まだ起訴されていない者」のことを言います。罪を犯した確証はない状態の人たちであるため、不当な逮捕や扱いがされないよう憲法で保障されています。特に、現行犯逮捕など緊急の場合を除き、逮捕や家宅捜索などの場合には「令状主義」の原則が適用されます。

 

被告人の権利(37~39条)

次に、37条から39条では、被告人の権利を定めています。被疑者とは異なり、被告人とは「証拠十分として起訴された者」を言います。しかしながら、罪を犯した確証があるからと言って、不当に扱ってよいわけではありません。そこで憲法では、公平な裁判を確保するため、以下のような規定が置かれています。

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被告人の権利

公務員試験では各条文について詳細に出題されることはないので、細かく覚える必要はなりと思いますが、37条1項の公平な・迅速な公開裁判を受ける権利や38条の黙秘権、自白強要からの自由については択一で出題されることがあります。

憲法37条

①すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

➁刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。

③刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

憲法38条

①何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

➁強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。

③何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

憲法37条1項では、刑事裁判上の手続に関する権利を規定しています。

刑事裁判上の手続きに関する権利

1.公平な裁判所の裁判

2.迅速な裁判

3.公開裁判

つまり、被告人は①公平な裁判所で、➁迅速かつ③公開された裁判を受けることが保障されているとなります。3つの要件については試験では問われやすい部分になります。

 

次に、憲法38条では、黙秘権や自白を強要されない自由が規定されています。黙秘権については日常でも聞いたことがあると思いますが、38条2,3項の「自白強要からの自由」では、「自白排除の法則」と「補強証拠の法則」について規定しています。

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自白強要からの自由

まず、「自白排除の法則」とは、拷問や長期間の抑留など不当な方法によって得られた自白は、証拠とすることができないというルールです。一方で、「補強証拠の法則」とは、自白だけで有罪とすることを禁止するルールです。自白に対してしっかりとした証拠があって初めて有罪とできるという考え方になります。

まとめ

・人身の自由とは、不当な逮捕や監禁、拷問など人身に対する不当な迫害からの自由を言う。

・人身の自由は、基本原理と手続きに関する規定に分類される。

・刑事裁判手続きの規定は、被疑者の権利と被告人の権利に分類される。

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