所得変化による予算制約線のシフト-公務員試験ミクロ経済学
あっ、先輩、こんにちは...。
こんにちは、カズ。どうしたの?いつもより暗い表情だけど。
はい...。実は今月はバイトのシフトあまり入れなくていつもより給料が低かったので、自由に使えるお金が5,000円になってしまいました。
そうだったんだ…。どれくらい減っちゃったの?
先月まで10,000円くらいは自由に使えていたので5,000円ほど減ってしまいました。
そうだったんだ…。5,000円は大きいね。
そういえば、ミクロ経済学では消費者が消費を行う時に「予算制約線」など使っていましたが、今回のように自由に使えるお金が減ってしまったりする現象も分析したりするのですか?
「予算制約線」のことよく覚えていたね。そうだね。今回みたいに消費者が自由に使える予算が変化することを「予算制約線のシフト」と呼んだりしているよ。公務員試験で最頻出の「スルツキー分解」でも重要になってくるから、今日は「所得変化」による予算制約線のシフトについて理解できるようにしよう!
所得変化とは?
ミクロ経済学では、消費者の財の消費の最適な組合せを分析する際には、その人が自由に使える所得を「予算制約」と、「消費者の主観的な満足度」を示す「効用」という2つの考え方を使います。
例えば、予算は1,000円のみで、1個250円のチョコレートと1冊500円のマンガという2財を組み合わせて消費することによって効用最大化を目指す消費者にとって、最適消費点は、「効用曲線(無差別曲線)」と「予算制約線」が接する赤い点になります。この赤い点(チョコレート2個、マンガ1冊という組み合わせ)で効用が最大化されます。
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予算が1,000円であれば(*財の価格も変化しなければ)、「予算制約線」は変化しません。しかしながら、収入の変化などによって使えるお金(予算)が変わってしまった時、「予算制約線」は並行にシフトします。この時、消費できる財の組合せが増える(減る)ため、最適消費点も変化します。
実際に例を使って見てみましょう。まず、自由に使える予算が10,000円の消費者が1個250円のチョコレートと1冊500円のマンガを組み合わせて効用最大化を目指すとします。この時、効用曲線と予算制約線の赤い交点(チョコレート20個、マンガ10冊)の時、効用が最大になります。
しかし今、自由に使えるお金が減ってしまい5,000円になると、以下のように予算制約線は左側に平行シフトしてしまいます。そして、最適消費点は「チョコレート10個、マンガ5冊」の消費の組み合わせの時になってしまいます。
このように、自由に使えるお金が減ってしまうと「消費可能領域」(予算制約線の左側範囲)が小さくなり、最適な消費の組み合わせを考え直さないといけなくなってしまうため、当初の効用曲線と比べて新たな効用曲線は左下にシフトします。したがって、所得の減少によって消費者の効用は下がってしまうことになります。
ちなみに、予算10,000円と5,000円の間に位置する8,000円が自由に使えるお金であるとき、最適消費点は以下のようになります。
自由に使えるお金が8,000円の時の最適消費点は、「チョコレート16個、マンガ8冊」の消費の組み合わせが予算8,000円の中で効用が最大になる組み合わせになります。このように所得の変化によって予算制約線は平行シフトします。
ただしここで注意なのは、所得の変化だけでなく、財の価格が変化した場合は予算制約線の傾きも変化するため単純な平行シフトとはいかなくなります。ひとまずここでは、所得のみが変化した時には、「予算制約線は平行シフトするんだ」ということをイメージしてもらえればと思います。
所得消費曲線とは?
ここまでで、財の価格変化がないと仮定した場合の、予算制約線のシフトに伴う最適消費点のシフトについてみてきました。公務員試験では時々しか出題されませんが、所得が5,000円、8,000円、10,000円…と変化した時の最適消費点を全てつなぎ合わせた「所得消費曲線」という曲線が出題されることがあります。
図;所得消費曲線
「所得消費曲線」は、それぞれの予算時の効用最大となる消費の組み合わせをつないだ曲線です。上図の「所得消費曲線」は右上がりの直線になっていますが、この時、チョコレートとマンガは所得の増加(/減少)によって需要量が増加(/減少)する「上級財」であるといえます。逆に所得が増えても需要量が増加しない「中立財」や「下級財」と呼ばれるものだとした場合、所得消費曲線は右上がりの曲線ではなく、くねくねとした曲線になったりします。
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エンゲル曲線とは?
頻出ではないですが、公務員試験では、エンゲル曲線というものが出題されることがあります。エンゲル曲線とは「所与の所得に対して財の需要量を対応させる規則(エンゲル関数)を示す曲線」のことで、簡単に言うと、所得と財の需要量の関係を表した曲線です。
エンゲル曲線を図示する際には、縦軸に所得、横軸に対象となる財の需要量をとる図を使います。「所得消費曲線」の説明をした際に、「上級財」「中立財」「下級財」という用語が出てきました。これらの財の分類は、所得と需要量の関係を表しており、「上級財」「中立財」「下級財」によってエンゲル曲線の傾きも変化してきます。
上記のエンゲル曲線における財は、所得によって「上級財」「中立財」「下級財」それぞれに変化しています。まず、点A(財の需要量x1、所得I1)の時、所得が増加すると財の需要量も増加するため、「上級財」であると言えます。
次に、点B(財の需要量x2、所得I2)の時、所得が増加しても財の需要量は増減しないため、「中立財」であると言えます。
最後に、点C(財の需要量x3、所得I3)の時、所得が増加すると財の需要量は減少するため、点Cの時には「下級財」であると言えます。
このように、エンゲル曲線において、財が「上級財」の時には、右上がりの曲線となり、「中立財」の時には垂直な直線となります。そして「下級財」の時には右下がりの曲線となるように、エンゲル曲線は財が「上級財」「中立財」「下級財」のうちどれに該当するのかを示しています。エンゲル曲線は計算問題が出題されるというよりも図の読み取りで聞かれるため、曲線のどの時点で「上級財」「中立財」「下級財」なのか理解することがポイントになります。
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