通貨乗数とは?-公務員試験マクロ経済学
こんにちは、カズ。あれ、どうしたの?そんなに真剣にスマホの画面を見て。
あ、こんにちは、先輩。実はマクロ経済学の授業でマクロ経済学に関連のあるニュースを調べてレポートにまとめる課題を出されて、今そのために最近の記事を調べたりしていました。
そうなんだ。何か良い記事とかは見つかった?
うーん。マクロ経済学に関連するニュースはたくさんありそうなのですが、ニュースの中にマネーサプライとかマネタリーベースとか聞きなれない横文字が多くあって理解できないので難しいですね。
そうか、まぁ経済の用語とか初めて聞く用語もたくさんあって意味が分かっていないと難しいよね。マネーサプライとかが出ているニュースってことは、金融緩和を行ったとかのニュースかな。
多分そうです(笑)。あまり僕も理解はできていないのですが、日銀の金融緩和政策と記事に書いてあるのでそうだと思います。ただ、マネタリーベースとか通貨乗数とかよくわからない用語がたくさんあって困ります(笑)。
まぁ難しい言葉だらけで経済学を専攻していない人にとっては確かに分かりにくいかもね。公務員試験でもよく出てくる用語だからしっかりと覚えておくと他の受験生と差をつけることができるよ!今日は通貨乗数やその計算について勉強していこう!
マネーサプライとは?
まず「マネーサプライ」と「ハイパワードマネー」(マネタリーベース)が何なのかについて始めに説明していきたいと思います。「マネーサプライ」とは「一国内で流通しているお金の総額」(貨幣供給量)を表します。「サプライ(supply)」というのは英語で供給を表しています。
公務員試験ではそこまで問題として出題されることはないですが、「マネーサプライ」は『貨幣供給量(マネーサプライ)市中の現金流通量+預金通貨』(M=C+D)から成り立っています。言い換えると、市中に出回っている現金の流通量と、銀行が預かったお金を他の人に貸し出したりして増やした現金の合計になります。
図;貨幣の供給と需要の原理
経済学では「需要」と「供給」は一致するため、上記の図のように、一国全体の貨幣需要(貨幣を使ったり保有すること)と貨幣供給(マネーサプライ)も一致します。
ハイパワードマネーとは?
次に「ハイパワードマネー」(マネタリーベース)は何かというと、「民間が保有する現金と、民間銀行の日銀へ預けた準備金の合計」のことを言います。定義はすごく分かりにくいと思うため、下記のイラストを見てみて下さい。
「ハイパワードマネー(マネタリーベース)」はイメージとして世の中にある硬貨と紙幣の総量だと考えることができます。もちろん、硬貨と紙幣にプラスして民間銀行の日銀への預ける一定額の準備金が含まれるので厳密には異なりますが、とにかくイメージとしては硬貨と紙幣で、日銀が新たに硬貨と紙幣を作らない限り増えたりしないマネーだと考えるといいと思います。
一方で「マネーサプライ」はハイパワードマネー、即ち紙幣・硬貨のやり取りによって増えた貨幣の合計額だと考えることができます。例えば100万円の紙幣が一国にあったとして、この100万円を所有する人が銀行に預けて50万円をまた別の人に貸し出して使ったら世の中で150万円のお金のやり取りが行われていることになります。
このように、銀行が預かったお金を他の人に貸し出して世の中のマネーサプライが増えていくことを「信用創造」と言います。「信用創造」という用語は公務員試験でもよく出てくるのですが、「ハイパワードマネー(マネタリーベース)」は信用創造のもととなるお金のことで、「マネーサプライ」はもととなるお金を信用創造で増やした分の貨幣供給量のことを言います。
通貨乗数を理解しよう!
ここまでで、「マネーサプライ」と「ハイパワードマネー(マネタリーベース)」の違いが分かったと思います。最後に公務員試験で頻出の「通貨乗数」について話していきたいと思います。
「通貨乗数」とは、「ハイパワードマネー(マネタリーベース)が増加するとどれだけマネーサプライが増加するか」が分かる乗数を意味しています。先ほど「ハイパワードマネー(マネタリーベース)」と「マネーサプライ」の違いを話しましたが、「ハイパワードマネー(マネタリーベース)」は信用創造のもととなる硬貨と紙幣のことで、「マネーサプライ」は「一国内で流通しているお金の総額」(貨幣供給量)を表しており、通常は「マネーサプライ」は「ハイパワードマネー」を上回ります。
例えば、100万円分しか発行されていなければ、ハイパワードマネー(マネタリーベース)は100万円のままです。他方、マネーサプライは日銀が100万円分しか発行していなかったとしても、銀行が貸し出しを行ったり信用創造を行うことで200万円にも300万円にもなります。
つまり、「通貨乗数」というのは、中央銀行(日本だと日銀)が新たに発行した紙幣・硬貨によってどれだけ日本経済全体としてお金が流通するかを表したものになります。
図;通貨乗数とは?
上記のように、通貨乗数は、ハイパワードマネーHの変化に対してマネーサプライMがどれだけ変化したかというのを分数にして表します。例えば、ハイパワードマネーHが2億円で、マネーサプライMが10億円だとすると、10/2で5になりますが、これは新たに2億円分の紙幣・硬貨を日銀が作ると一国の経済の中で10億円分となるということを表しています。つまり、5倍になるということなので、通貨乗数は5となります。
今のは簡単な数値を使って考えてみましたが、実際に公務員試験になるとハイパワードマネーHは現金通貨Cと準備金Rから成り、マネーサプライMは現金通貨Cと預金通貨Dから成ります。また、上記の図のように分母分子に預金通貨Dで割って、C/DやR/Dの形にすることもあります。
C/Dは預金現金比率と呼ばれ、R/Dは支払準備率と呼ばれていて、出題されるときに設問の中に出てくることがあるため、必ず覚えておくポイントになります。最後に実際の日本ではマネーサプライ(マネーストックとも言う)とハイパワードマネー(マネタリーベース)がどれほどなのかを見てみましょう。
[引用]東洋経済
このように、マネーサプライの方がハイパワードマネーよりも大きいことがわかると思います。
最後に
いかがでしたでしょうか?用語が似たようなものなので、始めのうちは混乱してしまうこともあると思います。公務員試験ではよく出てくる分野なのでぜひマスターしてみてください!