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消費関数に関する議論-公務員試験マクロ経済学

こんにちは、先輩。明日マクロ経済学の小テストで、消費関数に関する色々な仮説について出題されるようなのですが、それぞれの違いが整理できません…。僕に分かりやすく教えて頂けませんか…?

こんにちは、カズ。私もはじめは色々な消費関数の考え方があって理解できていなかったなー。確かに全て区別して覚えるの難しいよね。

そうなんですよ…。

公務員試験のマクロ経済学では、消費関数に関する考え方の違いを説明するための仮説が3つ出てくるから、それらの考え方についてそれぞれ理解できるようにしていこうか。

短期と長期の消費関数

そもそも消費関数とは、国民所得に対してどれだけ人々は消費するかを明らかにする関数であり、国民所得Y、限界消費性向cと場合によっては基礎消費C₀と租税Tを使って消費額Cを導出します。IS-LM分析などで出てくる財市場における国民所得Yを分析する際、以下の消費関数が使われ、この消費関数をケインズ型消費関数と言います。

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ケインズ型消費関数

ケインズ型消費関数は、現在の消費が現在の所得Yのみに依存するという考え方から、絶対所得仮説と呼ばれ、後述するクズネッツ型消費関数と比較すると、短い期間を分析する際に使われる消費関数です。

 

一方で、長い期間を分析する際に用いられる消費関数が、クズネッツ型消費関数になります。クズネッツ型消費関数では、ケインズ型消費関数と異なり基礎消費がありません。

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クズネッツ型消費関数

今、短期と長期によって消費関数が異なることを紹介しましたが、なぜ異なるのかを説明するために、公務員試験のマクロ経済学では3つの代表的な仮説が出てきます。今から、その3つについて一つずつ紹介していきたいと思います。

 

 

相対所得仮説とは?

まず一つ目の仮説として、アメリカの経済学者であるデューゼンベリーによって考えられた相対所得仮説があります。相対所得仮説には大きく「時間的相対所得仮説」と「空間的相対所得仮説」があります。

 

時間的相対所得仮説

時間的相対所得仮説とは、現在の消費は現在の所得Yだけでなく「過去の最大消費Ymax」にも依存するという仮説になります。現実社会でも、一度お金持ちを経験した人の中には、その後収入が減ったりしてしまっても、浪費癖が治らないという方がいると思います。このように、現在の消費量を決定する際、現在の所得Yにも依存しますが、過去の浪費癖(つまり、過去の最大所得Ymax)にも依存してしまうことがあると考えたのが、時間的相対所得仮説です。

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短期の時間的相対所得仮説



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長期の時間的相対所得仮説

短期的には、もし所得が以前に比べて下がってしまったとしても、すぐに落ち込んだ所得に消費を合わせることが難しいことが多いと思います。それを示しているのが一つ目の式になります。このように、過去の浪費癖がやめられないことによって、現在の所得に見合った消費額に調整できないことをラチェット効果(歯止め効果)と言います。

 

一方で、浪費癖が長期間治らないとそれでは破産してしまうので、長期的には現在の所得に見合った消費額に調整できるようになります。そのため、二つ目の式を見ると分かるように、長期的には過去の最大の消費には依存しなくなります。もちろん、現在が所得水準が過去最高を更新しているのであれば、過去一の所得額が現在の所得額になるので、Ymax=Yとなります。

 

空間的相対所得仮説

空間的相対所得仮説とは、現在の消費は現在の所得Yだけでなく「自己の属する社会階層の平均的消費額Cavg」にも依存するという仮説です。「自己の属する社会階層」とは何かというと、例えばタワーマンションに住む特定の地域・所得水準の方々をイメージしてみてください。僕はタワーマンション在住ではないので、実情は分かりませんが、時々ネットニュースなどで、住居者が見栄を張って自分たちの消費水準以上に浪費してしまうこともあるのを見ます。このように「自己の属する社会階層」内の他人の消費水準に合わせて自分たちの消費水準も変化してしまうことを意味するのが、空間的相対所得仮説です。

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短期の空間的相対所得仮説

 

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長期の空間的相対所得仮説

但し、いつまでも周りに合わせて浪費してしまうと破産してしまうので、長期的には他者の平均的消費額には依存しないとされます。従って、長期の空間的相対所得仮説は二つ目の式のようになります。

 

 

恒常所得仮説とは?

恒常所得仮説は、アメリカの経済学者フリードマンによる考え方で、所得Yを「恒常所得Yp」と「変動所得Yt」に区別し、消費は「恒常所得Yp」によって決まるとする考え方です。ここで出てきた「恒常所得Yp」とは、景気などによってほとんど変動しない所得のことを言います。具体的には、「恒常所得」は、学歴や職歴、経験などその人の能力を考慮したうえで、その人が将来に渡り得られると予想される所得の平均を表しています。一方で、「変動所得Yt」は、ボーナスなど一時的な要因による所得を言います。

 

恒常所得仮説は、「恒常所得Yp」のみが消費に依存すると考えますが、短期と長期に期間を考えるとき、変動所得があることによって平均消費性向C/Y(=所得に対する消費の割合)が違ってきます。

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短期の平均消費性向

 

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長期の平均消費性向

長期の場合には、「変動所得Yt」は一時的な所得のため、長期的には0であると考えるため、平均消費性向はαで一定となります。一方で、短期の場合には、恒常所得と変動所得を分けて考えるため、変動所得Ytが増加すると、一つ目の式の分母は大きくなるため、平均消費性向は低下します。つまり、長期の場合と異なり、短期の平均消費性向は所得に依存して一定ではなくなります。

 

 

ライフ・サイクル仮説とは?

最後にライフ・サイクル仮説について説明していきたいと思います。ライフ・サイクル仮説はよく公務員試験で出題されるので、特に重要になります。ライフ・サイクル仮説とは、「消費は将来の収入まで考慮に入れて決められ、消費は『生涯消費=生涯所得』という予算制約を満たすように決定される」という仮説です。

 

異時点間に渡る仮説であるため、具体的にモデルを設定しようとすると複雑になってしまいます。そこで、公務員試験で出題されるライフ・サイクル仮説の場合、簡便化のために諸々の仮定が置かれます。

[ライフ・サイクルの仮定]

・利子率はゼロ。

・遺産はゼロ(所得は全て消費仕切る)。

・寿命をL年とし、W年間働き、退職後R年間生きる(L=W+R)。

・W年間は毎年一定額所得Yを稼ぐが、退職後R年間の所得はゼロ。

・年間の消費はCで一定。

・基準時点における、資産残高をAとする。

 

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生涯消費=生涯所得

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予算制約式

上記の式を見るとなんだか難しそうに見えてしまいますが、そんなに難しくありません。まずは、一つ目の式の「生涯消費=生涯所得」の右辺に注目し、一生涯の中でどれだけのお金を使えるかを、資産残高AとW年間における稼いだ総所得を合計して明らかにします。

 

その後、生涯所得を生きる年数L年で割ることによって、1年ごとの消費額を割り出すことができます。

 

また、ライフ・サイクル仮説のポイントは、毎年一定の所得を稼ぐ現役時代と、所得がゼロの退職後の2つの期間に分けて分析する点です。また、現実では現役時代に資産を残している場合、投資などを行うことによって利子所得分増加することがありますが、公務員試験レベルでは、利子所得はゼロと考えているため、受験生としては解きやすくなっています。

 

公務員試験では、計算問題として出題されることがほとんどで、以下のような形で出題されます。

Q,以下の条件時における個人の毎年の消費額と、限界消費性向、平均消費性向は?

・現在30歳のある個人は、今後30年働き、80歳まで寿命がある。

・現役時代に毎年400万円を稼ぎ、退職後は毎年の所得ゼロ。

・毎年の消費額は一定とし、遺贈はなし。

・現在1,000万円の資産を保有

・貯蓄による利子所得はなし。

 

①生涯所得を算出する。

 生涯所得=YW+A=400×30+1,000=1億3,000万円

②毎年の消費額を算出する。

 消費額=1億3,000(万円)÷50(年)=260万円

③平均消費性向を算出する。

 平均消費性向とは、年間の所得額に対する年間の消費額であるため、以下のようになる。

 平均消費性向=260÷400=0.65

④限界消費性向を算出する。

 限界消費性向とは、所得が1単位増加したら消費はどれだけ増加するかを意味しているため、消費関数(=予算制約式)C=(W/L)Y+(A/L)の傾き(W/L)である。

 限界消費性向=W/L=30(年)÷50(年)=0.6

 

平均消費性向と限界消費性向はよく問われるため、違いをしっかりと理解して、混乱しないようにしましょう!

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