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マンデル・フレミング・モデル(IS-LM-BP分析)-公務員試験マクロ経済学

こんにちは、先輩。来週、公務員試験である自治体の一次試験があってマクロ経済学の復習をしているのですが、BP曲線とかの範囲がいまいち理解できません…。

こんにちは、カズ。試験来週なんだ、頑張って!BP曲線か~。マンデル・フレミング=モデルと呼ばれている範囲なんだけど、公務員試験ではよく出るから要チェックの部分だね。

そうなんですか?それじゃあなおさら今のうちにしっかり覚えておかないといけませんね。

そうだね。この分野はただ暗記しているだけじゃ対応できなくなってしまうから、しっかりとパターンを理解する必要があるよ。それじゃあ今日は、マンデル・フレミング・モデル(IS-LM-BP分析)について理解できるようにしていこう!

マンデル・フレミング・モデルとは?

まずそもそも、「マンデル・フレミング・モデル(IS-LM-BP分析)」とは何でしょうか?マクロ経済学の学習を始めると、まず基礎として、財市場と貨幣市場における利子率と国民所得の均衡を分析する「IS-LM分析」を習うと思います。基本的な「IS-LM分析」では、消費C、投資I、政府支出Gという国内需要のみを用いて分析を行います。

 

しかしさらに発展させて、海外部門、即ち「経常収支(=輸出額-輸入額)」も財市場の均衡条件に含めて分析させることもあります。「マンデル・フレミング・モデル」とは、国際収支、つまり経常収支や金融収支も考慮に入れて国民所得Yと利子率iの関係を分析するモデルとなります。

 

BP曲線とは?

BP曲線は、日本語で「国際収支均衡線」と言います。BP曲線の定義として、「国際収支が均衡(BP=0)する際の、自国の国民所得と自国の利子率の組み合わせの集合」です。

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国際収支均衡式とは

国際収支は、上記のように、「経常収支CA」と「金融収支(資本収支とも言います)」の和がゼロになることで均衡となります。「経常収支CA」は自国の「輸出額-輸入額」を表し、「金融収支CX」は「資本輸出-資本輸入」を表します。国際収支はなぜゼロの時に均衡であるかというと、例えば2国のみある世界を仮定してみてください。自国の国民総生産が100億円であるのに、国民総支出額が150億円だったとします。これは自国の生産量100億円分に対して50億円多く支出していることになります。これはつまり、50億円分多く輸出しているということになります。しかし一方で、輸出の50億円分相手国に支払わないといけません。この時、相手国への50億円分の支払いのために資本が流出しているため、金融収支CXは50億円のマイナスになります。従って、経常収支CAの増加分50億円と金融収支CXの減少分50億円を合計した国際収支BPはゼロとなるのです。

bestkateikyoshi.hatenablog.com

国際収支統計について詳しくは上記のページでも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

 

 

国際収支均衡式はどう決まる?

ここまででBP曲線についてなんとなくイメージできたかなと思います。ここでは国際収支均衡式の中身について詳しく紹介していきたいと思います。先ほど」国際収支BP=経常収支CA+金融収支CX=0」ということを説明しましたが、今から経常収支CAと金融収支CXの中身についてそれぞれ具体的に話していきたいと思います。

 

経常収支CA

経常収支CAは、以下のように、為替レートe、自国の国民所得Y、外国の国民所得Y*によって決まります。

f:id:bestkateikyoushi:20200918111355p:plain経常収支CAは輸出入額の差のことなので、上記の3つの数値によって決まります。なぜこの3つなのかについては、別ページで紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

 

金融収支CX

金融収支CXは、以下のように自国の利子率iと、外国の利子率i*によって決まります。

f:id:bestkateikyoushi:20200918111414p:plainより具体的に言うと、金融収支は、内外金利差によって決まります。内外金利差とは、i-i*のことを言い、自国と外国の利子率を比較して、より高い利子率の国に資本が収入するという考え方です。利子率が高くなればなるほど、投資家にとってはリターンが大きくなります。つまり、利子率の高い国に投資を行うために資本を投下するという考え方です。

 

以上より、国際収支均衡式は、為替レートe、自国の国民所得Y、外国の国民所得Y*、自国の利子率iと、外国の利子率i*によって決まる式になります。

f:id:bestkateikyoushi:20200918111449p:plainここで、以下のような仮定をおいたとき、縦軸に(自国の)利子率i、横軸に(自国の)国民所得Yをとる以下の図において、BP曲線は右上がりの曲線となります。

[仮定]

外国の国民所得Y*、外国の利子率i*は所与で一定

為替レートeは一定

 

図:右上がりのBP曲線

上記のように、利子率iが上昇したとき、国際収支均衡式の金融収支CXが改善します。しかし、国民所得Yも増加することによって経常収支CAは悪化するため、国際収支均衡式全体で見ると、プラマイゼロとなります。

 

 

資本移動完全自由の場合のBP曲線

ここまでは、右上がりのBP曲線を見てきました。しかし、公務員試験では、水平なBP曲線、垂直なBP曲線を使うことが多くあります。そこで、まず水平なBP曲線を見ていきましょう。BP曲線は、資本移動が完全自由という前提の場合に水平になります。

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水平なBP曲線

資本とは、金融収支CXに関わる部分になります。資本が流出入するケースは、前述したように、国内利子率iと外国利子率i*がイコールではないケースです。例えばi>i*の場合、国内利子率の方が高いということなので、資本が流入します。この時、資本移動が完全自由の場合、i=i*となる水準まで資本流入が続きます。その結果、国内の資本が大量になってしまうため、銀行などの貸し手も高い利子率で貸す必要がなくなりますよね。その結果、i=i*の均衡でようやく落ち着くことになります。

 

 

資本移動ゼロの場合のBP曲線

一方で、資本移動がゼロの時、BP曲線は垂直になります。資本移動がゼロとは、国際収支均衡式における金融収支CX=0ということです。国際収支均衡式において、CX部分で国内利子率i、外国利子率i*が出てくるので、CX=0ということは、BP曲線は国内外の利子率に依存しないということになります。そのため、以下のような垂直なBP曲線となります。

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垂直なBP曲線

 

 

マンデル・フレミング・モデル(IS-LM-BP分析)の解法

それでは実際に、公務員試験でよく出題される出題形式に即してマンデル・フレミング・モデル(IS-LM-BP分析)を説明していきたいと思います。なお、今回は基本として、小国(自国の経済環境・経済政策の変化が国際的に影響を与えない国)の仮定を置きます。

 

この分野からの出題としては、各パターンでの政策の有効性が問われることがほとんどです。まずパターンについてですが、2種類の為替相場制度、2種類の資本移動の状態、2種類の政策をそれぞれ組み合わせた8パターン(=2×2×2)を覚えておく必要があります。

 

為替相場制度

→変動相場制or固定相場制

資本移動の状態(BP曲線の傾き)

→資本移動完全(BP曲線水平)or資本移動ゼロ(BP曲線垂直)

政策

→拡張的財政政策(IS曲線右シフト)or金融緩和政策(LM曲線下シフト)

 

変動相場制と固定相場制という用語が出てきましたが、変動相場制の際には、自国通貨のレートが変化することによって経常収支CAが変化し、IS曲線と場合によってはBP曲線のシフトが引き起こされます。一方で、固定相場制の際には、為替レートが変化しないよう中央銀行が介入するため、マネーサプライMが変化します。そのため、LM曲線のシフトが引き起こされます。この違いは、とても重要なのでよく押さえておく必要があります。

 

もちろん、資本移動の状態として、資本移動が完全でもなく、資本移動がゼロでない(つまり、BP曲線が右上がり)のケースも出題されることはありますが、基本的には資本移動が完全の場合か、資本移動がゼロのケースが出題されることが多いので、これらについてケースごとに説明していきたいと思います。

 

パターン1:変動相場制・資本移動完全のケース

資本移動が完全なので、BP曲線は水平となります。また、変動相場制のため、IS曲線のみ変化します。

拡張的財政政策←効果なし

図:拡張的財政政策①

拡張的財政政策、つまり政府支出Gを増加させるので、IS曲線が右シフトします。すると、シフト後の均衡点はE₁となりますが、国内利子率i₀>海外利子率i*となってしまうため、国内に資本が流入します。その後、為替レートeは増価するため、経常収支CAは悪化します。経常収支CAとは、輸出入を意味する外国需要でもあるため、経常収支CAが悪化するということは、財市場における輸出入がマイナスになるということです。

 

その結果、IS曲線はせっかく右シフトさせたのに、元のE*の均衡点まで戻ってしまいます。従って、変動相場制・資本移動完全のケースでは、拡張的財政政策は効果なしということになります。

 

金融緩和政策←効果あり

図: 金融緩和政策①

次に、金融緩和政策による効果ですが、まず、金融緩和政策を行うと、上記のようにLM曲線が下方シフトします。すると、国内利子率i<海外利子率i*となるため、資本が海外に流出します。すると為替レートeは減価するため、経常収支CAが改善し、財市場における輸出入がプラスとなるので、IS曲線が右シフトします。その結果、政策後の均衡点はE*となります。このように、変動相場制・資本移動完全のケースにおいて、国民所得が増加したので、金融緩和政策は効果ありとなります。

 

 

パターン2:固定相場制・資本移動完全のケース

資本移動が完全なので、パターン1と同様BP曲線は水平となります。固定相場制なので、為替レートの変化を防ぐため、中央銀行が介入、つまりLM曲線がシフトします。

拡張的財政政策←効果あり

図:拡張的財政政策②

まず、拡張的財政政策を行うと、IS曲線が右シフトします。すると、国内利子率i>海外利子率i*となるため、放っておくと円高、つまり為替レートeの増価を招いてしまいます。そこで中央銀行は、邦貨を売って外貨を買うという為替介入を実行することによって、マネーサプライMを増加します。そのため、LM曲線は下方シフトするので、新たな均衡点はE*となります。この時、国民所得は増加したので拡張的財政政策は効果ありとなります。

 

金融緩和政策←効果なし

図: 金融緩和政策②

金融緩和政策を実施すると、LM曲線は下方シフトします。その結果、国内利子率i<海外利子率i*となるため、為替レートeは減価するため、円安を防ぐために中央銀行は邦貨を買って外貨を売るという為替介入を実施します。その結果、マネーサプライMは減少するため、元の水準E*に戻ってしまいます。この時、国民所得は変化しなかったので金融緩和政策は効果なしとなります。

 

 

パターン3:変動相場制・資本移動ゼロのケース

資本移動がゼロなので、BP曲線は垂直となります。また、変動相場制のため、IS曲線とBP曲線が変化します。

拡張的財政政策←効果あり

図:拡張的財政政策③

拡張的財政政策を実施すると、IS曲線が右シフトします。この時、IS曲線とLM曲線の交点はE₁となりますが、BP曲線は均衡していないため、ここで終わりとはなりません。交点E₁では、国民所得Yが増加したため、経常収支CAは悪化します。しかし、国際収支均衡式BP=CA+CXにおいて、CXはゼロのため、BP=CA=0に戻るために、経常収支CAが再度変化することになります。そこで、為替レートeが減価するため、経常収支CAは改善します。その結果、IS曲線とBP曲線が同時に右シフトするため、最終的な均衡式はE*となります。国民所得は当初と比べて増加したため、変動相場制・資本移動ゼロのケースにおいて、拡張的財政政策は効果ありとなります。但し、均衡点E*における利子率を見てもらうとわかるように、当初と比べて利子率は増加しています。つまり、ここではクラウディング・アウトが発生しており、拡張的財政政策の効果が100%ではないということは分かると思います。

 

金融緩和政策←効果あり

図:金融緩和政策③

金融緩和政策を実施すると、LM曲線は下方シフトします。この時、IS曲線とLM曲線の交点E₁における国民所得Yは増加するため、経常収支CAは悪化します。しかし、先ほどと同様に、BP=0に戻るために経常収支CAが改善するので、IS曲線とBP曲線は右シフトします。そのため、最終的な均衡点はE*となり、国民所得Yは増加します。従って、変動相場制・資本移動ゼロのケースにおいて、金融緩和政策も効果ありとなります。

 

 

パターン4:固定相場制・資本移動ゼロのケース

資本移動がゼロなので、BP曲線は垂直となります。また、固定相場制のため、為替レートの変化を防ぐため、中央銀行が介入、つまりLM曲線がシフトします。

拡張的財政政策←効果なし

図:拡張的財政政策④

拡張的財政政策を実施すると、IS曲線が右シフトします。この時、IS曲線とLM曲線の交点はE₁となりますが、E₁では国民所得Yは増加するため、経常収支CAが悪化します。するとBP<0となるため、為替レートが変化しようとしますが、中央銀行が為替レートの変化を阻止しようとします。中央銀行は邦貨買い・外貨売りを実施するため、マネーサプライMが減少するため、LM曲線は上方シフトします。その結果、最終的な均衡点はE*となるため、国民所得Yは変化しないどころか、利子率のみ上昇してしまうという結果となってしまいました。つまり、固定相場制・資本移動ゼロのケースにおいて、拡張的財政政策は効果なしとなります。

 

金融緩和政策←効果なし

図:金融緩和政策④

金融緩和政策を実施すると、LM曲線は下方シフトします。すると、IS曲線とLM曲線の均衡点E₁において、国民所得Yが増加するため、経常収支CAは悪化します。その結果BP<0となってしまうため、中央銀行が為替レートの維持のため、邦貨買い・外貨売りを行うため、マネーサプライMが減少します。その結果、LM曲線は上方シフトするため、当初の水準E₀で均衡します。従って、固定相場制・資本移動ゼロのケースにおいて、金融緩和政策は効果なしとなります。

 

 

最後に

いかがでしたでしょうか。かなり長くなってしまいましたが、マンデル・フレミング・モデルにおいて、今回の8つのパターンは必ず理解しておくべき部分になります。最悪、試験直前にパターンだけ暗記してしまうこともできるとは思いますが、試験直前にここに時間をかけるよりも、事前になぜこのようにシフトするのか考え方を理解する方がいいと思います。難しいと思いますが、ぜひマスターできるようにしてください!

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