国から地方への財源移転(地方交付税)とは-公務員試験財政学
こんにちは、先輩。最近地方自治体の財政に関するニュースを見ているのですが、よく国が財政状況の悪い自治体にお金を渡していると思うのですが、具体的にはどうやってお金が移転しているのでしょうか?
こんにちは、カズ。自治体研究は大事だし、財政についてしっかりと勉強していて偉いね。
いえいえ、全然理解できていないのでまだまだです。
国から地方公共団体への財源の移転は、「地方交付税」という財源を通じて行われているよ。具体的に用途の決まっている財源とか色々な条件がつくこともあるので結構混乱しやすい部分だから、今日は地方交付税についてマスターできるようにしよう!
国から地方への財源移転
2020年10月現在、全国にはおよそ1,800もの地方公共団体が存在します。地域によっては過疎化や少子高齢化の影響によって税収が減少し、財源の確保が難しくなっています。そのような地方公共団体の財政収入格差を調整するため、国が地方へ財源の移転を行っています。
国から地方への財源移転は、国によって作成される「地方財政計画」に基づいて実施されます。
[出典]総務省「令和2年度地方財政計画のポイント」
上記は令和2年度の地方財政計画になります。国から地方への財源移転の額は、表の中の「地方交付税」という項目を見ると分かります。ちなみに令和2年度の「地方交付税」は16.6兆円と、歳入の中で二番目に大きい項目になっています。
地方交付税とは?
「地方交付税」とは、国から交付される依存財源のことを言います。「税」という言葉が使われていますが、「地方交付税」という税金があるわけではありません。しかし、地方交付税の財源として、以下の5つの国税の一定割合が用いられます。
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地方交付税として分配される割合 |
33.1% |
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33.1% |
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酒税 |
50% |
消費税 |
19.5% |
地方法人税 |
100%(全額) |
[参考]総務省『地方交付税制度の概要』
地方交付税の財源は上記の国税ではありますが、地方交付税の考え方としては、「国が地方に変わって徴収する地方税」、つまり地方の固有財源であるという立場をとっています。
地方交付税の種類
地方交付税の中身として、「普通交付税」と「特別交付税」の2つに大別することができます。「地方交付税法第6条の2」より、「普通交付税」は交付税総額の94%、「特別交付税」は交付税総額の6%とされています。
まず、普通交付税とは、「基準財政需要額が基準財政収入額を超える地方公共団体に対して、その差額を基本として交付されるもの」であり、年4回に分けて交付されます。基準財政需要額と基準財政収入額とは、総務省のHPより、以下のように計算できることが分かります。
[参考]総務省『地方交付税制度の概要』
上記の計算式だとイメージしにくいかもしれませんが、どちらも今年度必要になるであろう支出と、得られるであろう収入の見込み額となります。公務員試験レベルでは、計算問題は出題されないのでイメージを持てれば大丈夫です。
一方で、特別交付税とは、「基準財政需要額によって捕捉されない特別の財政需要(災害や地方バス路線維持など)がある場合において、それらの事情を考慮して交付されるもの」であり、年2回に分けて交付されます。
交付団体と不交付団体
地方交付税ですが、交付を受けている自治体も多くありますが、自治体によっては交付を受けていない自治体もあります。交付を受けていない自治体は特に、「不交付団体」といいます。
都道府県においては、東京都のみ一貫して不交付団体となっていますが、令和2年度においてその他の道府県はすべて交付団体となっています。市町村について、令和2年度は75もの市町村が不交付団体となっています。令和元年度は85団体が不交付団体であったことを考えると、今年度は減少しています。また、来年度も新型コロナウイルスの影響によって不交付団体の数はさらに減少するのではと思います。