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憲法における戦争の放棄の規定-公務員試験憲法を分かりやすく

この間憲法9条の戦争放棄や交戦権に関するニュースを見ました。憲法の基本原理の一つは「平和主義」でとても重要な部分なのに、公務員試験ではほとんど出題されませんよね。これってどうしてなんでしょうか?

確かに公務員試験では出題頻度は高くないね。これは戦争放棄の規定が第2章第9条にしかなくて条文の数が多くないということもあるんだけど、第9条はかなり政治的な内容で議論のある部分でもあるから出題しにくいというのもあるんだと思うよ。

なるほど、そういうことだったんですね。ということは、全く戦争放棄の章については全く勉強しなくても大丈夫ということでしょうか?

勉強しなくても他でカバーすれば大丈夫だけど、他のトピックにも関連してくるトピックでもあるから、時間があるならしっかり勉強しておくのがいいと思うよ!

憲法における平和主義とは?

日本国憲法の最終目標は、一人ひとりの「個人の尊厳」にあります。その「個人の尊厳」を守るため、憲法は3つの基本原理を据えています。

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3つの基本原理

日本国憲法の3つの基本原理は、「国民主権」、「基本的人権の尊重」、「平和主義」となっています。今回紹介する戦争放棄の規定は特に、「平和主義」という基本原理に基づいて規定されている条文になります。

 

「平和主義」は、第二次世界大戦の反省を踏まえ、再び戦争の惨禍が起こることがないようにという平和への希望が込められています(憲法前文)。なぜ「平和主義」という原理が「個人の尊厳」に結びつくのかと言うと、個人の尊厳の確保は平和の確保によってのみなされるからです。例えば、学問の自由(23条)や生存権(25条)、財産権の保障(29条)など全ての人が有する基本的人権は平和な状態によってこそ保障できます。そのため、「個人の尊厳」を守るためには「平和主義」が重要な原理となってくるのです。

 

 

戦争の放棄とは?

日本国憲法は全11章103条から成る法規になります。

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日本国憲法の構造

この中で、「平和主義」に大きく関わる章は、第2章の「戦争の放棄」という章になります。第2章と章立てされていますが、第2章は条文が第9条一つのみとなっています。

憲法第9条

①日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

➁前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

憲法第9条は、2つの項から構成されています。第1項は、戦争や武力による威嚇・行使の放棄、第2項は戦力の不保持・交戦権の否認について言及しています。

 

戦争放棄の解釈

9条第1項は、戦争や武力による威嚇・行使の放棄について言及しています。しかし条文上では、戦争や武力行使・威嚇を「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と規定しており、「国際紛争を解決する手段として以外なら、戦争などは認められるの?」と思う方もいると思います。実際、戦争放棄の範囲については人によって解釈が異なり、様々な説があります。公務員試験の出題はほぼありませんが、解釈に関する3つの説について見ていきましょう。

 

まず前提として、日本から攻撃を仕掛ける「侵略戦争」はどの説・立場をとっても禁止(放棄)されています。一方で、他の国が日本へ攻撃を仕掛けてきた際の反撃としての「自衛戦争」については、解釈が分かれています。

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戦争放棄の解釈

A説

一つ目は、自衛の手段としての武力行使は認められているという立場です。第1項の「国際紛争を解決する手段として」の戦争は、「侵略戦争」のことを表しているため、「自衛戦争」は認められるという考え方になります。現実として、他国から攻撃を受けたのに反撃してはいけないとなってしまうと国を維持できなくなってしまいますし、国民の生存を脅かされてしまいます。そのため、自衛の手段としての戦争は放棄していないというこの立場が通説となっています。

 

B説

二つ目は、自衛戦争自体も第1項の文言から放棄しているという立場になります。「国際紛争を解決する手段として」の戦争を、「侵略戦争」だけでなく、「自衛戦争」も含むという考え方です。他国から攻撃された場合、外交ルートや国際世論に訴えるなどして攻撃をやめさせるという対抗策をとることになると思います。理想論としては良いのでしょうが、実際に日本が攻撃された際、抑止力が働かないので現状では通説とはなっていません。

 

C説

三つ目も、自衛戦争自体も放棄しているという立場になりますが、第1項の文言から導かれるのではなく、第2項の文言から自衛戦争自体も放棄しているという考え方になります。C説では、第1項の「国際紛争を解決する手段として」の戦争には、「自衛戦争」は含んでいませんが、第2項で「戦力の不保持」や「交戦権の否認」をしているため、自衛戦争を行うための手段がそもそもないからという考え方になります。

 

学者や裁判所などはB説かC説かどちらの解釈が適切かで議論になるのでしょうが、私みたいな一般人にとってはB説もC説も自衛戦争を放棄しているという結論自体は変わらないですし、いずれにしてもA説の自衛戦争は放棄していないという立場が通説になるため、3つの説があるんだなぁくらいでいいと思います。

 

 

自衛戦争集団的自衛権行使は含まれるか?

公務員試験の憲法科目の範囲では出題されませんが、教養の時事で出題されやすいのが「自衛戦争集団的自衛権行使は含まれるか?」という点です。集団的自衛権についての詳細は、「集団的自衛権と集団安全保障の違いって何?」というページを見てもらえると理解できると思いますが、簡単に言うと「ある国が他国に攻撃された際に、第三国が共同で反撃する国家の権利」になります。例えば、日本が他国に攻撃された際、直接的な被害を受けていない韓国やアメリカが日本の要請に基づいて武力行使を行うことが、(韓国とアメリカの)集団的自衛権の行使となります。

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集団的自衛権とは?

日本の歴代内閣は、「日本も集団的自衛権は持っているが、行使することは憲法上許されない」という立場であったため、例えば韓国が他国に攻撃され、日本が援助要請を受けたとしても、憲法の規定から共同で反撃行動は取れないという立場でした。

 

しかし、2014年に安倍内閣はこの憲法解釈を変更し、集団的自衛権発動も憲法上許されるとする閣議決定を行いました。もちろん無制限の行使ではなく、以下の3要件を満たした場合に集団的自衛権の行使が可能であるとしています。

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集団的自衛権の発動要件

この憲法解釈の変更が良いか悪いかまでは公務員試験では問われませんが、集団的自衛権の発動要件が定められたという点は時事問題で出題されるのでよく覚えておく必要があります。特に、2014年より前からも日本が直接攻撃を受けた際には、個別的自衛権に基づいて反撃できるという解釈は変わっていないので、個別的自衛権集団的自衛権を混同しないよう注意が必要です。

 

 

戦力の不保持・交戦権の否認

憲法第9条2項では、戦力の不保持・交戦権の否認が規定されています。第2項では「前項の目的を達成するため」、戦力の保持はしないとされており、一切の戦力の保持が禁止されている説が通説であり、従来政府が取ってきた見解も通説通りとなります。

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戦力の不保持に対する見解

「それじゃあ自衛隊も禁止されるんじゃない?」と思う方もいると思いますが、政府は、自衛のための必要最小限度の実力は第9条の「戦力」には該当せず、現在の自衛隊憲法の禁ずるところではないという立場をとっています。

 

また、交戦権については、国際法上交戦国に認められる権利(相手国の軍事施設の破壊、船舶の臨検、拿捕等)を指す説と、広く戦争を指す権利を解する説などがあり、立場によって放棄した交戦権の範囲が異なります。

まとめ

日本国憲法は「個人の尊厳」を守るため、「平和主義」を規定している。

・「平和主義」達成のため、第2章では「戦争の放棄」が規定されている。

・第9条は、①戦争の放棄、➁戦力の不保持・交戦権の否認を規定している。

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