衆議院の解散と解散権に関する学説-公務員試験憲法を分かりやすく
最近「衆議院の解散」をするかどうかのニュースをよく見ます。これまで衆議院の解散について理解していると思っていたのですが、実際に憲法の問題を解いてみると色々な学説もあって結構間違えてしまいます…。
「衆議院の解散権」については公務員試験でもよく出題されるし、いくつも学説があって択一問題でも惑わされやすい部分だよね。そうしたら今日は、衆議院の解散と解散権に関する学説について見ていこうか。
衆議院の解散とは?
衆議院の解散とは、衆議院議員全員に対して、その任期満了前に、議員の身分を失わせることを言います。なぜ衆議院の解散という制度があるかというと、解散後の選挙で「今後の政権運営はどの政党が担当するべきですか?」という質問を問うためです。
国会では日々様々な問題について議論が行われていますが、内容によっては与党と野党の意見が対立して法案が議会を通過できないということがあります。意見が対立したままで法案が通過しないとなると、行政運営が停滞してしまいます。「それじゃあどっちがいいのか国民に聞いてみよう!」というのが解散の趣旨になります。
衆議院解散の過程は?
それでは、どのようなケースで衆議院が解散となるのでしょうか?憲法69条では、衆議院が解散となるケースを以下のように規定しています。
憲法69条では、内閣不信任決議案が可決(または、信任決議案が否決)後、10日以内に内閣が衆議院解散を宣言することによって解散となります。また、後述するように学説上の対立はありますが、一般的に69条の規定に基づく解散以外でも、内閣は自由に衆議院解散を宣言することができます。
つまり、衆議院の解散は、①内閣不信任決議の可決(内閣信任決議の否決)と、➁内閣の決定という2つのケースに分類することができます。そして、①のケースで内閣が衆議院の解散を行わない場合、内閣はそのまま総辞職となります。一方で、①と➁のケースで衆議院が解散となった場合、40日以内に総選挙を行う必要があります。そして総選挙後、30日以内に国会に召集(特別会と呼ばれます)となり、新たな内閣総理大臣が任命されます。
解散権に関する学説
日本国憲法において、どのような場合に内閣が衆議院解散を行うことができるか明確に規定しているのは憲法69条のみになります。しかしながら衆議院解散の方法が憲法69条のみしかないとすると、内閣不信任決議/信任決議という国会起点でしか解散というアクションがとれなくなってしまい、内閣が解散権を行使できる範囲が著しく狭くなってしまいます。
そこで、学説上は、衆議院が解散できるケースを憲法69条の条文だけに制限する69条説のほかに、65条説(行政説)、制度説、自律解散説(41条説)、7条説という4つの学説があり、内閣の解散権を広くするための根拠づけがなされています。
色々な学説がありますが、69条説以外は、各条文や制度を基に、内閣の自由な解散権を認めるという立場をとっています。特に、65条説(行政説)は、衆議院の解散権を行政作用と捉え、「解散権は行政作用なのだから内閣が自由に解散できる権限があるよね」という無制限に解散権を認める立場をとっています。
しかしながら、内閣に自由な解散権は認めるけど、主権者はあくまで国民であり、解散は国民の信を問うための制度で行政の無制限な解散権は認めないという立場をとっているのが、制度説や自律解散説、7条説となります。特に、天皇の国事行為に対する内閣の助言と承認を通じて内閣に実質的な決定権があるため、自由な解散権を認めるという7条説が通説となっています。