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憲法の規定する人身の自由ってどういう意味?-公務員試験憲法を分かりやすく

最近北朝鮮の収容所に関するニュースを見たのですが、不当に捕まえた人に対して拷問したりとかしていて本当ひどいですね…。でも日本でも昔はそういった拷問とかが普通に行われてたと聞きました。実際、日本ではいつからそういった拷問とか不当逮捕がなくなったのでしょうか?

日本では、明治憲法下においては人身の自由を不当に制限するような逮捕や拷問とかが行われていたんだけど、戦後日本国憲法ができてからは、過去の反省から人身の自由をしっかりと保障するようになったんだよ。公務員試験では出題は多くない部分ではあるけど、それでも出題されることはあるから、今日は「人身の自由」について勉強していこうか。

人身の自由とは?

日本国憲法に規定される基本的人権は、①自由権、➁社会権、③参政権、④その他の権利と大きく4つに分類することができます。

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基本的人権の種類

その中でも①の自由権とは、個人に対する国家の介入を排除する「国家からの自由」を規定しており、人権保障の考え方が確立した当初から現代に至るまで、人権体系の中心的地位を占める権利になります。①の自由権は、①精神的自由、➁経済的自由、③人身の自由に分類されます。

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自由権の分類

今回紹介する人身の自由は、上記のように自由権の一つとして分類されます。人身の自由とは、不当な逮捕や監禁、拷問など人身に対する不当な迫害からの自由を言い、「身体の自由」と言われることもあります。冒頭でも少し話しましたが、明治憲法下では、政府による不当な逮捕や拷問が制限されておらず、人身に対する不当な迫害がまかり通ってしまっていました。そこで、日本国憲法では、戦前の反省を踏まえて、以下のような体系で人身の自由を保障しようと試みました。

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憲法における人身の自由の全体像

まず、日本国憲法では、憲法18条や31条で人身の自由それ自体について規定を置いています。そしてさらに、人身の自由の規定をより確実にするために、逮捕時の被疑者の権利や被告人の権利を33条から39条の間で規定しています。以下、それぞれ具体的に見ていきましょう。

 

 

憲法18条における奴隷的拘束・苦役からの自由とは?

憲法18条では、以下のように奴隷的拘束・苦役からの自由を規定しています。

憲法18条

何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

18条に規定される「奴隷的拘束」とは、人間の尊厳に反する身体の拘束のことを言います。これは例えば、人身売買や、タコ部屋での強制労働などが奴隷的拘束に当たります。また、「意に反する苦役」とは、本人の意思に反して強制される強制的な労務のことを言い、徴兵制については、日本国憲法では徴兵義務を規定していないため、意に反する労務として、禁止されています。

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憲法18条の意味

「奴隷的拘束」については絶対的に禁止され、公共の福祉による制約もしてはならないとされています。一方で、「意に反する苦役」については犯罪による処罰の場合など例外が認められています。

 

 

憲法31条における適正手続きの保障とは?

また、憲法では国家による刑罰権行使の濫用を防ぎ人身の自由を保障するため、憲法31条で以下のように法定手続の保障についても定めています。

憲法31条

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

憲法31条の条文だけ見ると、法律で手続きが定められていることのみ規定しているように見えますが、通説では、以下4つのことについて規定していると考えられています。

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憲法31条の内容

図上の「手続きの法定」と「手続きの適正」についてですが、まず人身の自由を保障するためには、手続きという過程に関する法律が明確かつ適正に定められている必要があります。例えば、二つ目の「手続きの適正」について、公権力が国民に刑罰その他の不利益を科す場合、当事者にあらかじめその内容を告知し、弁解と防御の機会を与えなければならないという「告知と聴聞を受ける権利」が保障されています。

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手続きと実体の関係

一方で、「実体の法定」と「実体の適正」についてですが、「実体」とは「権利や義務」そのものを言います。具体的には、学問の自由や思想・良心の自由など具体的な権利義務のことを言います。憲法31条の文言は直接的には法律の手続きについて規定していますが、そもそも手続きの前提となる具体的な権利義務も法律で適正に定められている必要があります。そうでないと、公権力が恣意的に「○○という権利は基本的人権ではないから保障する必要はない!」として、基本的人権が侵害されかねないからです。

 

そのため、憲法31条では、「手続きの法定」、「手続きの適正」、「実体の法定」、「実体の適正」という4つを保障していると考えられています。

 

 

刑事裁判手続きに関する規定(33条~39条)

18条と31条は、人身の自由の基本的原理を定めていました。一方で、33条から39条は、刑事裁判手続きについてのルールを規定しており、「被疑者の権利」と「被告人の権利」の2つに分類することができます。

刑事裁判手続きの保障

1.被疑者の権利(33~35条)

2.被告人の権利(37~39条)

被疑者の権利(33~35条)

被疑者の権利とは、捜査過程における被疑者の人権を確保するための規定になります。

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被疑者の権利

被疑者の権利を規定する33~35条では、①不当な逮捕からの自由、➁不当な抑留・拘禁からの自由、③住居の不可侵について規定しています。被疑者というのは「罪を犯した疑いがあるが、まだ起訴されていない者」のことを言います。罪を犯した確証はない状態の人たちであるため、不当な逮捕や扱いがされないよう憲法で保障されています。特に、現行犯逮捕など緊急の場合を除き、逮捕や家宅捜索などの場合には「令状主義」の原則が適用されます。

 

被告人の権利(37~39条)

次に、37条から39条では、被告人の権利を定めています。被疑者とは異なり、被告人とは「証拠十分として起訴された者」を言います。しかしながら、罪を犯した確証があるからと言って、不当に扱ってよいわけではありません。そこで憲法では、公平な裁判を確保するため、以下のような規定が置かれています。

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被告人の権利

公務員試験では各条文について詳細に出題されることはないので、細かく覚える必要はなりと思いますが、37条1項の公平な・迅速な公開裁判を受ける権利や38条の黙秘権、自白強要からの自由については択一で出題されることがあります。

憲法37条

①すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

➁刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。

③刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

憲法38条

①何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

➁強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。

③何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

憲法37条1項では、刑事裁判上の手続に関する権利を規定しています。

刑事裁判上の手続きに関する権利

1.公平な裁判所の裁判

2.迅速な裁判

3.公開裁判

つまり、被告人は①公平な裁判所で、➁迅速かつ③公開された裁判を受けることが保障されているとなります。3つの要件については試験では問われやすい部分になります。

 

次に、憲法38条では、黙秘権や自白を強要されない自由が規定されています。黙秘権については日常でも聞いたことがあると思いますが、38条2,3項の「自白強要からの自由」では、「自白排除の法則」と「補強証拠の法則」について規定しています。

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自白強要からの自由

まず、「自白排除の法則」とは、拷問や長期間の抑留など不当な方法によって得られた自白は、証拠とすることができないというルールです。一方で、「補強証拠の法則」とは、自白だけで有罪とすることを禁止するルールです。自白に対してしっかりとした証拠があって初めて有罪とできるという考え方になります。

まとめ

・人身の自由とは、不当な逮捕や監禁、拷問など人身に対する不当な迫害からの自由を言う。

・人身の自由は、基本原理と手続きに関する規定に分類される。

・刑事裁判手続きの規定は、被疑者の権利と被告人の権利に分類される。

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