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国際法における捕虜の定義とその取り扱いは?-国際法を分かりやすく

歴史について勉強していると、よく戦時中の捕虜の取り扱いの問題に関する記事や文献などを見るのですが、捕虜って捕まえた相手国の人全員のことを言うのでしょうか?

現実には様々なケースがあって誰が捕虜なのかって実際には難しい問題だけど、国際法上は戦闘員で捕まった人のことを言うよ。

一般住民で投降した人などは捕虜には含まないんですね~。ちなみに、近年のアフガンやISの捕虜や、戦時中の日本など度々捕虜の待遇に関して問題になることがありますが、国際的なルールなどはあるのでしょうか?

捕虜に関して言うと、1949年ジュネーブ第三条約(捕虜待遇条約)などに規定されているよ。国際法にも出てくるし、一般教養としても勉強になると思うから、今日は国際法上の捕虜の定義と取り扱いの規定について見ていこうか。

戦闘員と犯罪者の違いは?

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バルジの戦いで捕虜となったアメリカ兵(1944年12月)

[出典]goo Wikipedia捕虜

 

そもそも、元々殺傷破壊を行う戦闘員が敵国の権力内に陥った場合、捕虜となります。戦闘員の殺傷破壊それ自体は、武力紛争法という国際ルールに則ってなされる限り、法的責任は追及されず、通常の犯罪者とは区別されます。

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戦闘員と犯罪者の違い

このように法的責任を追及されないことを「戦闘員特権」といい、敵国に捕らえられた後も犯罪者ではなく、捕虜として保護されます。そのため、後述するような捕虜待遇条約のような国際ルールに従って捕虜を拘束した国は、捕虜を適切な手続や方法で保護する義務があるとされています。

 

 

戦闘員と一般住民への保護の違いは?

戦闘員ではない一般住民も戦闘員と同様に捕虜となるかですが、紛争当事国の権力内に陥った場合、一般住民は捕虜ではなく、国際法上「被保護者」という扱いになります。

 

もちろん、捕虜資格を得られないからといって保護されないのではなく、「被保護者」という扱いで保護されることとなります。「被保護者」の資格を得る一般住民は国際法上「文民」と呼ばれ、文民保護の内容は1949年ジュネーブ第四条約(文民保護条約)に規定されています。

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戦闘員と文民の保護の違い

文民保護については、捕虜への待遇以上に手厚い保護が求められます。例えば、戦禍に巻き込まれないようにするための消極的保護はもちろんのこと、宗教上の習慣の尊重や強制移送・労働の禁止など積極的保護も要求されます。

 

 

国際法上の捕虜の定義は?

戦闘員とは基本的に「アメリカ軍所属の軍人」や「日本軍軍人」など正規軍の構成員のことを言います。捕虜資格についてはじめて規定した国際ルールは、ハーグ陸戦条約附属規則(1899年、1907年)になります。

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ハーグ陸戦条約附属規則における捕虜資格

ハーグ陸戦条約附属規則において、正規軍の将校については特に条件を付けることなく捕虜資格を与えるとしましたが、正規軍の構成員ではない民兵義勇兵については、上記の4つの条件を満たす場合にだけ捕虜資格を認めました。

 

しかしながら、正規軍だけでは戦力を補うことができない国では、制服や標識をつけない非正規軍やゲリラなど現実には戦闘員や文民との区別が曖昧な人たちもいます。そこで、捕虜条約やジュネーブ諸条約第一追加議定書は、より多くの人々が適切に扱われるよう捕虜の定義を拡大しています。

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捕虜条約における捕虜資格の拡大

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ジュネーブ諸条約第一追加議定書における捕虜資格の拡大

近年では民族自決団体や正規軍と戦う反政府組織など戦闘の主体も多様化してきています。そのため、犯罪者としてではなく、捕虜として保護されるように捕虜資格が拡大されています。

 

 

捕虜待遇条約における捕虜取扱いのルールは?

具体的な捕虜の取扱いのルールについては、捕虜待遇条約の条文を見ると分かります。全て紹介することはできないので、今回は取扱いのルールについていくつかピックアップしてみました。

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例えば、上記は第25条の条文になります。捕虜が抑留される環境に関する規定や火災の予防措置など具体的な条件などが規定されています。さらに興味深いのは女性捕虜に対する待遇など、細かく規定しています。

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第28条は軍隊内の捕虜のための売店に関する規定になります。

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第38条は捕虜への娯楽や運動を行う機会の提供について規定されています。上記はあくまで一例ですが、捕虜条約は結構具体的な規定で国際法初学者でも理解しやすい規定なので、興味がある方は捕虜待遇条約で全文を見てみるといいかと思います。

日本において難民が少ない理由は?難民の定義とその現状-国際法を分かりやすく

少し前に、ヨーロッパにおけるシリア難民や、ミャンマーロヒンギャなど難民問題が盛んに報道されていましたが、それらの社会問題って今はどうなったのでしょうか?

両方とも難民の受入体制や国民の反発、難民が発生している当事国における課題などまだまだ解決には至ってないよ。実際、難民問題って生活支援や他国への定住支援なども含めて長いスパンが必要になってくるから、すぐに解決するってことはないかな…。

そうだったんですね…。そういえば、よく「難民」という用語はよく使われていますが、実際どういった人たちを指すのでしょうか?それと、僕はまだ日本で難民の方にお会いしたことがないのですが、日本の現状ってどうなっているのでしょうか?

日本は島国で難民が入りにくい環境だから日本人は他人ごとに感じてしまうトピックではあるよね。でも、国際法を勉強する時に重要なトピックの一つになるから、今日は難民の定義や日本の現状について見ていこう!

難民の定義は?

難民というと、「戦禍から逃げてきた人」というイメージがあるかもしれませんが、実際にはそれだけではありません。また、人によって様々なケースで母国から離れなければならないケースがある中で、難民を「戦禍から逃げてきた人」という定義に限定してしまうと、困っている人たちを救済することができなくなってしまいかねません。そこで1951年に採択された難民条約の第1条は、以下のように難民を定義しています。

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難民条約上の難民の定義

難民条約上の難民の定義のポイントは、迫害の理由を5つ挙げているという点と、国籍国の外にいるという場所的な定義になります。国内で別の場所に避難する「国内避難民」や国内の紛争や戦争によって一時的に国籍国の外にいる「一時避難民」は難民条約上の難民ではないと解釈されることがあります。

 

しかしながら、このような限定的な定義だと本当に助けを求めている人たちを助けられない可能性があります。そのため、条約難民の定義の解釈を拡大させるアプローチや、アフリカ難民条約など地域的な条約では、難民の定義を広くしていることがあります。

 

 

難民問題の歴史

1951年に難民条約という統一的なルールによって難民の定義や国際協力の枠組みが作られましたが、難民問題について議論されるようになった時期は第一次世界大戦までさかのぼります。

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難民条約締結までの歴史的経緯

第一次世界大戦前までも、政治亡命者などの国外退避はありましたが、現在の難民の越境のような大規模なものではありませんでした。しかしながら、戦争規模の拡大に伴い、第一次世界大戦後、大量の難民が発生しました。そこで国際連盟難民高等弁務官を設立して難民問題への国際的な対応を開始したことが難民問題への国際的な取り組みの第一歩とされています。第二次世界大戦後には新たな国連体制下で今の難民高等弁務官(UNHCR)事務所が設立され、難民条約も締結されました。

 

 

難民条約締約国の義務

難民条約は2019年時点で146カ国が加盟していますが、難民条約では難民を受け入れる義務は課していません。しかしながら、現に難民に相当する人々が国内にいる場合や難民認定がなされた難民に対する保護義務などがあります。

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難民条約締約国の義務

締約国の義務については、上記のように2つに大別できます。一つは、締約国内にいる人々の保護義務です。難民は生命の危機を感じて緊急で避難してくるため、難民認定の手続が完了しないで締約国に避難してくることがあります。そのため、制度上は不法入国となってしまったりすることもあり、締約国の法律を遵守すると強制送還となってしまいます。しかし、国籍国に強制送還されると殺されたりする可能性もあります。そこで、難民条約は締約国に最小限の保護義務を課しています。

 

次に、難民条約は締約国に積極的待遇義務を課しています。積極的待遇義務とは、難民認定を受けた難民に対して、生活費の援助や身分証の発給などを行う義務になります。例えば通常、パスワードなどの身分証は国籍国が発給しますが、難民は国籍国の保護を受けられないので、パスワードの発給も望めません。しかしながら生活の中で個人の証明は不可欠になるため、受入国にそのような支援などを義務づけています。

 

 

世界の難民の現状

UNCHRのHPを見ると、2019年時点で難民は2,600万人いるとされています。また、難民の定義に当てはまらない国内避難民や庇護申請者など故郷を追われた人々は合わせて7,950万人いるとされています。

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[出典]国連UNHCR協会『数字で見る難民情勢(2019年)

 

全体の3分の2以上をシリア、ベネズエラアフガニスタン南スーダンミャンマーの5カ国が占めており、シリアやアフガニスタンが近いトルコが360万人の難民を受け入れているそうです。

 

私自身、上位5カ国の内のある国に住んでいたことがあるのですが、国内も利害関係が複雑で難民問題も平和的に解決したいけど自国だけでできないというのが現状のようです。以下の動画は国連UNHCR協会の『数字で見る難民情勢(2019年)』に埋め込まれていた動画になります。難民のリアルな現状が分かるのでぜひ見てみてください!

 

日本における難民の現状

一方で、日本の難民受け入れの現状はどうでしょうか?アムネスティ日本によると、2019年に難民認定申請を受けた人数は10,375人で、その内申請が認められたのはたったの44人になります。

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[出典]日本アムネスティ難民認定申請者と認定者の推移

 

申請の認められる割合が極端に少ないのが現状になりますが、これは①日本の難民認定審査の厳しさや、②申請を受ける人々の質が挙げられます。特に②については、ヨーロッパの場合はシリアやアフガニスタンなど激しい紛争が起きている地域からの避難民であるため、難民の要件に当てはまりやすいです。しかしながら日本の場合は、ネパールやインドネシアなどアジアの人々の申請も多く、難民の基準に明らかに該当しないケースもあるようです。

 

だからと言って難民認定を必要とする人々に行き渡っていないとすると問題ですが、この点は予算や不正をなくすという点とのバランスを保つ必要があるので、なかなか難しいところです。

外交官は違反をしても捕まらない?外交関係条約から見る不逮捕特権の根拠-国際法を分かりやすく

最近、他国の外交官が外交特権を理由に駐禁の違反金を支払わないというニュースを見たのですが、どうして払わなくても問題にならないのですか?

国を代表する外交官なんだから、しっかりと相手国のルールは守ってほしいという気持ちはあるよね…。でも、国同士で取り決められた国際法というルールにのっとって、そういったことが認められているんだよ。実際には、外交官や領事官などの対象や犯した犯罪の重さによっては逮捕などが認められることがあるんだけど、通常外交官には裁判が免除されたり逮捕されなかったりなどの特権が認められているよ。

そうなんですね…。知らなかったです…。

国際関係や国際法について勉強をする機会がない人にとっては理解しにくいところだよね。そしたら今日は、外交関係条約や不逮捕特権の根拠について理解できるようにしようか!

外交特権の根拠となる外交関係条約とは?

外交官や領事官など特定の外国人が逮捕されない根拠は何でしょうか?国際社会では、国によってルールや習慣が異なっているため、国同士で条約という共通のルールを設定します。そして、派遣先(=駐在する国)での外交官に関する取扱いについても条約を定めています。それが、外交関係条約(正式名称は、外交関係に関するウィーン条約、1961年)になります。

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外交関係条約とは?

2018年時点で、日本を含む192ヵ国が外交関係条約を加盟/批准しています(*参考1)。2020年現在、日本が承認している国の数が196ヵ国となるので、ほぼ全ての国が外交関係条約に加盟していることになります。

 

「外交関係条約に加盟していない国には不逮捕特権などの外交特権は適用されないの?」と思う方もいるかもしれませんが、外交関係条約は、中世よりヨーロッパを中心とした各国で形成されてきた外交特権に関する習慣を条約という法律に明文化したものになります。そのため、加盟国でなくても国際慣習法としてルールが適用される可能性はあります。国際慣習法などの話は難しいと思いますが、ひとまず「外交特権の根拠は外交関係条約」ということを理解してもらえばいいと思います!

 

 

領事関係条約という条約も根拠の一つとなる

冒頭の会話で、「領事官(領事)」という言葉も使いましたが、領事官も領事関係条約(正式名称は、領事関係に関するウィーン条約、1963年)によって不逮捕特権などのルールが規定されています。

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領事関係条約とは?

裁判権が免除されたり、不逮捕特権などは国際法上「特権免除」と言います。ニュースなどでは外交官と領事官をあまり区別して報道していることはないですが、外交官と領事によって特権免除の範囲、つまり免除される度合いなどが異なってきます。

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外交官と領事の特権免除の範囲が異なる理由は?

外交官の主な役割は相手国との折衝になります。そのため、自国の代表者として、①代表説と、②機能説という2つの立場から特権免除が認められているとされます。

 

一方で領事の主な役割は、相手国との交渉というよりは、相手国に住む自国民の対応やパスワード、ビザの発行など事務的なものが多いです。そのため、機能説という立場から特権免除は認められていますが、外交官と比べると特権免除の度合いは小さくなっています。

 

 

特権免除の具体的な内容は?

外交官、領事官ともに、身体の不可侵や裁判権免除など様々な特権免除があります。

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特権免除の内容

上記は外交官・領事の特権免除の内容の一例になります。今回は、不逮捕特権に関連して、①身体の不可侵と②裁判権免除について見ていきたいと思います。

 

身体の不可侵とは?

外交官や領事官にはまず、身体の不可侵という特権免除があります。身体の不可侵とは、警察に逮捕されたり留置所に入れられることを強制させられない権利になります。そのため、路駐したり交通事故を起こしたりしても逮捕されることはありません。

 

特に外交官の場合は、絶対不可侵となっており、受入国が外交官の身体の不可侵のための適切な措置をとる義務もあります。絶対不可侵ということは、犯罪を犯した外交官に対して逮捕することもできず、受入国ができることは「ペルソナ・ノン・グラータの通告」による退去要請のみになります。

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外交官と領事官に対する身体の不可侵

一方で、領事官に対しても同様に身体の不可侵が保障されており、事件や事故などの犯罪を犯しても警察に逮捕されることはありません。しかしながら領事官の場合は外交官よりは緩く、重大犯罪を犯した場合には逮捕・抑留も認められています。

 

裁判権免除とは?

さらに、外交官、領事官には裁判権免除も認められています。まず外交官の場合には、刑事裁判権は絶対免除の対象となります。また、公務の範囲内で民事・行政裁判権も免除されるとされています。この免除は、出国時まで存続するとされています。国外に出国してしまえば受入国はどうしようもないので、もう裁判できないということになってしまいます。ただ、人的事故を引き起こした場合、被害を受けた相手がいるため、損害賠償責任自体はなくならないとしており、国際法上外交官を派遣した国が裁判権免除を放棄することで賠償含めてしっかりと解決をするべきとしています。しかしながら、外交官がこれまで引き起こした事件などを見てもらうと分かると思いますが、そうなっていないことも多くあります。

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外交官と領事官の裁判権免除

一方で、領事官の場合は裁判権免除が適用されない範囲も大きくなります。特に、民事裁判権については適用されず、外交官に比べると受入国が裁判を起こしやすくなります。

 

 

どうして不逮捕特権などの特権免除が認められるの?

罪を犯したにも関わらず逮捕されたり裁判にかけられたりしないなど、一見理不尽なルールに見えますが、なぜ特権免除が外交官や領事官に認められているのでしょうか?

 

特権免除が認められる根拠については既に①代表説や②機能説などの考え方があることを紹介しました。また、世界には独裁国家や価値観や法体系の全く異なる国家が多くあります。もし外交関係条約などのルールがなかったとすると、自分たちにとって都合の悪い相手国の外交官を難癖つけて逮捕・拘束したり死刑にしたりなどがまかり通ってしまいます。そのようなことがないようにするために外交官や領事官についてはルールを設けて不逮捕特権などの特権免除が認められているのです。

予算の法的性格と成立過程-公務員試験憲法を分かりやすく

ニュースで「予算案が成立」という表現がよく使われますが、予算って国会で成立するんですよね?

そうだね~。ちゃんとニュースをチェックしていて偉いね!

いえいえ、分からないことがたくさんです…。ちなみに、国会では法律の審議などが行われますが、予算も法律と同じものという考え方でいいのでしょうか?

いい所に気が付くね~。その点に関しては学説上の対立もあって、公務員試験でも出題される部分になるよ。その部分は憲法86条の条文が関係してくるんだけど、今日は憲法86条の予算に関する規定について理解できるようにしようか!

憲法86条の規定とは?

日本国憲法において、財政に関する規定は83条から91条まであります。

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第7章の各規定

予算については、上記の各規定を見ると分かるように86条にあり、以下のような規定となっています。

憲法86条

内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。

予算を実際に執行するのは、言うまでもなく内閣(行政)になります。しかしながら、国民の税金を使って執行するため、国民の代表から構成される国会での審議・議決を要求しています。これによって予算を適切かつ民主的なものにできるようにしています。

 

 

予算の法的性格は?

予算は、単なる歳出入の見積もり表ではなく、政府の行為を規律する法規範とされています。しかしここで、予算は法律と同じものなのか、それとも独自の方形式なのかなど、法的性格について疑問が生じます。なぜなら、法律と同じか同じじゃないかなどによって、国民が予算案に厳格に拘束されるかや、予算案成立過程などの考え方が変わってくるためです。実際、予算の法的性格について以下3つの考え方があります。

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予算の法的性格

まず一つ目の「予算行政説」ですが、これはそもそも予算には法的性格はないと考える説になります。この説を採ると、予算は行政行為であり、国会の議決はあくまで予算という行政行為に対する承認ということになります。そのため、法的拘束力もありません。しかし、この考え方は、予算には法的拘束力もなく民主的コントロールも必要としないため、財政民主主義に反するとの批判があります。

 

次に、「予算法形式説」という考え方があります。この考え方は、「予算は法律とは異なる法の一形式」であるという立場になります。実際、実務上でも予算は法規範性を持っていますが、法律とは異なり①国民を直接拘束しない、②効力が一会計年度に限られている、③予算発議権が内閣だけにしか認められていない、など法律とは異なる性質のため、法律とは異なる法形式だという考え方になり、通説とされています。

 

最後に、「予算法律説」という考え方があります。この考え方は、「予算は法律それ自体である」という考え方になります。なぜなら、予算は法律と同様に国会で審議され、議決を経てから効力を発するためです。しかしながら、「予算法形式説」でも話したように、法律と異なる取り扱いをする場面も多いため、不都合が生じることがあるため、多数説とまではいきません。

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3つの説のまとめ
まとめ

憲法86条は「予算の作成と国会の議決」について規定している。

・予算の法的性格として、①予算行政説、②予算法形式説、③予算法律説という考え方があり、予算法形式説が通説である。

憲法における租税法律主義と財政民主主義について-公務員試験憲法を分かりやすく

憲法の講義で財政について勉強しているのですが、「租税法律主義」や「財政民主主義」など○○主義という用語が出てきて、頭が混乱しています…。

今財政の部分勉強しているんだね~!公務員試験憲法の範囲では財政について頻出度はあまり高くないけど、しっかりと理解できれば他の受験生より一歩リードできるよね。

そうですね~。なので、「租税法律主義」や「財政民主主義」などを教えてください!

憲法における財政の規定は?

憲法は前文と11章全103条から成る日本における最高法規です。今回紹介する財政については、第7章83条から91条に規定されています。

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日本国憲法の構造

公務員試験憲法の分野で出題されることはまずないですが、憲法の規定は短く抽象的な部分も多いため、憲法の下に財政法や会計法などの法律があり、それらが財政のことについて具体的に規定しています。いずれにしても、憲法は国の財政制度について大枠を規定しており、公務員試験憲法の範囲では、それらを学ぶ理解する必要があります。

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第7章の各規定

各規定の詳細については割愛しますが、国家運営にはお金が必要になるため、安定的な国家運営を行うことができるよう会計処理の方法やチェック体制の整備など様々な事柄を規定しています。

 

 

財政民主主義とは?

国家運営のためにはお金が必要になりますが、そのお金は国民の税金によって賄われます。そのため、行政による恣意的な財政の処理が行われないよう、国民によるコントロールが保たれるようにする必要があります。そこで憲法83条では、以下のように財政処理の権限について国会の議決を必要とするとしています。

憲法83条

国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。

国会の議決とは、国会が租税に関する法案を審議した上で採決するということです。国会は国民の代表によって構成される議会なので、行政が税金や予算を決定したり変更したりしたいとしたとき、国民の代表である国会がチェックすることを憲法は求めており、これを「財政民主主義の原則」と言います。

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財政民主主義とは



租税法律主義とは?

財政民主主義の他の○○主義としては、租税法律主義という原則もあります。

憲法84条

あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

租税が賦課される対象は国民になるため、国会によって審議がなされる法律の形式によって租税も決定される必要があります。そのため、下記のように法案成立の流れと同様に、租税関連以外の法案も国会で審議され、これを「租税法律主義の原則」と呼びます。

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租税法律主義とは

租税に関する法律として、新設される法律と租税内容が変更される法律と大きく2つに分類することができます。両者とも国会の議決を経る必要がありますが、租税を変更する際、元々法律上課税できるのにも関わらず実務上非課税扱いしていたものを通達により課税扱いする際は、元々課税すること自体は国会で承認を得ているため新たに改正案を提出する必要はなくなります。

 

また、国会の議決を経る法案についても、租税の種類や根拠だけでなく、租税条件(①納税物件、②課税物件、③税率、④賦課手続、⑤徴収方法)が厳格に定められていることが「租税法律主義の原則」になります。

まとめ

日本国憲法は第7章で財政に関する規定を置いている。

・財政民主主義とは、財政の運用に関して、国民主権・民主主義に基づくことを要求される原則である。

・租税法律主義とは、新たな税の徴収、税の変更の際には国民の代表である国会の議決が必要であるという原則である。

憲法が規定する受益権(国務請求権)とは?-公務員試験憲法を分かりやすく

昨日憲法の授業で、「請願権」という用語が出てきました。「請願権」って日常生活でも聞きなれない言葉で、何だか難しそうに感じてしまったのですが、どういう権利なのでしょうか?

請願権は、国や地方公共団体に対して要望を言ったりする権利になるんだけど、他の基本的人権の保障をより強固にするために保障されている権利になるよ。請願権は受益権の一つとされていて、重要な基本的人権の一つになるよ。公務員試験では他の人権に比べると出題頻度は下がるけど、覚えておくべき内容にはなるから、今日はしっかりとマスターできるようにしよう!

受益権(国務請求権)とは?

日本国憲法が規定する基本的人権は、自由権社会権など様々な権利を規定していますが、それら以外の権利として受益権(国務請求権)と呼ばれる権利もあります。受益権(国務請求権)とは、人権保障をより確実なものとするために認められた権利であり、①請願権(16条)、②裁判を受ける権利(32条)、③国家賠償請求権(17条)、④刑事補償請求権(40条)という4つの権利のことを言います。

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国務請求権(受益権)の種類

 

 

請願権とは?

請願権とは、国民が国や地方公共団体に対して自身の希望や要望などを申し立てる権利を言います。日本国憲法は、個人の尊厳を守るために自由権社会権など様々な基本的人権の保障を規定していますが、基本的人権の保障をより確実なものとするため、権利が侵害されている場合などに、国民が国家に意見を言うことができる体制が不可欠となります。このように国家に意見を言うことのできる権利を請願権と言います。

憲法16条

何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

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請願権とは

憲法16条に規定されている請願権は具体的に請願法によって手続き等が定められています。請願を行うことのできる主体は、国民だけではなく法人や外国人も含まれます。また、請願法5条は請願を受けた機関が誠実に処理する義務を規定していますが、請願内容に応じた処理を行う義務自体はないとされています。

 

政府へ要望を行う権利である請願権は、現在では言論の自由の拡大や普通選挙の確率に伴い国民の政治参加手段が増加しているため重要度は減ってきています。しかしながら依然として不可欠の権利と考えられています。

 

 

裁判を受ける権利とは?

次に、憲法32条は以下のように裁判を受ける権利を規定しています。

憲法32条

何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

32条に規定される裁判所とは、最高裁判所下級裁判所を指します。また、憲法32条の規定する裁判を受ける権利には以下のように2つの意味があるとされています。

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裁判を受ける権利の意味

 

 

国家賠償請求権とは?

憲法17条では、受益権の一つとして以下のように国家賠償請求権を定めています。

憲法17条

何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

公務員の不法行為によって損害を被った時、国民は国または公共団体に賠償を求めることができます。詳しくは別のページで紹介していますが、ポイントとしては損害を与えた公務員に直接賠償請求をするのではなく、その公務員が所属する機関に請求するという点になります。

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国家に対する賠償請求

国家賠償請求権は、公務員が国民に対してお願いするような(強制的ではない)行政指導や勧告などの非権力的作用や、租税の賦課徴収や警察権の行使などの権力的作用にも適用されます。

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賠償が認められるケース

また、国家賠償請求権について具体的には国家賠償法という法律に規定されていますが、上記のようなケースで損害賠償請求が認められているとされています。

 

 

刑事補償請求権とは?

憲法40条は受益権の一つとして以下のように刑事補償請求権を規定しています。

憲法40条

何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

憲法40条は、無罪の裁判を受けた者を救済する規定になります。特に条文上にも規定されているように、拘留や拘禁など身体の自由を制約された場合に刑事補償を受けることができるとされています。ただし、通説では身体を拘束されたが、起訴されずに釈放されば場合には、本条の適用はないとされています。

まとめ

憲法で規定される受益権(国務請求権)は、①請願権(16条)、②裁判を受ける権利(32条)、③国家賠償請求権(17条)、④刑事補償請求権(40条)という4つの権利がある。

・請願権とは、国民が国や地方公共団体に対して自身の希望や要望などを申し立てる権利を言う。

・裁判を受ける権利とは、裁判所に訴えを起こす権利と公平な裁判を受ける権利を規定している。

・国家賠償請求権は、公務員の不法行為によって被った損害の賠償請求を国または公共団体に行うことのできる権利である。

・刑事補償請求権とは、無罪の裁判を受けた者を救済するための権利である。

憲法の規定する生存権って一体何?-公務員試験憲法を分かりやすく

最近よく憲法の講義で「生存権」という用語がよく出てくるのですが、人々が生きていく権利を与えているってことでしょうか?

確かに生存権は人々が生きる権利なのだけど、日本国憲法では、ただ生存を保障するだけではなくて、健康で文化的な最低限度の生活という最低ラインは必ず国は保障しましょうという社会権的な規定になっているよ。生存権については時々出題されるので、今日はしっかりと理解できるようにしようか。

社会権とは?

そもそも生存権は、福祉国家的思想に基づいて、社会的・経済的弱者を保護するために保障されるに至った社会権の一種になります。社会権とは、国家に干渉されない自由(国家からの自由)を訴える自由権とは異なり、より良い環境で生活をするために国家に改善を求める権利(国家による自由)になります。日本国憲法では、社会権は大きく以下の4つがあります。

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日本国憲法における社会権の規定

日本国憲法では、社会権に関する規定として①生存権(25条)、②教育を受ける権利(26条)、③勤労の権利(27条)、④労働基本権(28条)があります。ただし、例えば②の26条教育を受ける権利のように、社会権的性質だけでなく、教育内容について干渉されないという自由権的性質を持つものもあります。

 

 

憲法25条生存権とは?

今回は社会権の中でも生存権について見ていきたいと思います。日本国憲法には、25条で以下のように生存権を規定しています。

憲法25条

①すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

②国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

25条1項は、生存権という国民の権利を宣言したものであるとされています。そして2項で、生存権保障のための国の責務を定めているとするのが通説です。

 

 

生存権の法的性質

憲法25条1項の規定ですが、ここで問題になるのが生存権の法的性質になります。つまり、25条1項の規定が、国が国民の生存権を保障してくれない時、25条1項に基づいて訴えることができるのかどうかという問題です。25条1項の捉え方として、公務員試験で出題される学説は以下のように大きく3つあります。

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生存権の法的性質

まず一つ目は、プログラム規定説と呼ばれる考え方です。これは「憲法25条は国民の生存を国が確保すべき政治的・道義的目標を定めただけで、具体的な権利は定めたものではないという考え方」になります。そのため、生存権を保障するための法律がない状態で「国の対応はおかしい!」と違憲確認訴訟を起こすこともできませんし、違憲の根拠にもなりません。なぜなら、25条の規定は国の責務を宣言しただけで、法的義務はないためです。

 

次に二つ目は、抽象的権利説と呼ばれる考え方です。これは「生存権は直接25条に基づき訴えを起こせず、生存権を具体化する法律があって初めて訴えを起こせるという考え方」になります。これもプログラム規定説と同様に、生存権に関する法律がない状態で違憲確認訴訟を起こすことはできません。しかし、プログラム規定説とは異なり、25条は政治的・道義的目標を定めているのではなく、生存権は国民の権利であることを規定しています。そのため、具体的な法律や国家行為に対しては違憲かどうか判断する際の根拠として25条をつかうことができます。

 

三つ目は、具体的権利説と呼ばれる考え方です。これは「憲法25条は生存権の内容を具体化する法律がなくても直接25条に基づき訴えを起こせるという考え方」になります。そのため、抽象的権利説と同様に具体的な法律や国家行為に対して違憲かどうかを判断する根拠になるのはもちろんのこと、具体的な法律がなくとも違憲確認訴訟を行うことができるという点で異なります。

 

どの考えが通説であるかは国によって異なりますが、日本の場合は二つ目の抽象的権利説が通説であるとされています。

まとめ

社会権とは、福祉国家的思想に基づいて、社会的・経済的弱者を保護するために保障されるに至った権利のこと。

生存権社会権の一種である。

生存権の法的性質として、①プログラム規定説、②抽象的権利説、③具体的権利説があるが、日本では②の抽象的権利説が通説とされる。

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