あっ、先輩、こんにちは!この間は「死荷重損失(デッド・ウエイト・ロス)」と「従量税」と「従価税」の2種類の課税について教えて頂きありがとうございました。
どういたしまして。カズ。そういえば、この間まだ「死荷重損失(デッド・ウエイト・ロス)」を引き起こす「課税」と「規制」という2種類の政府の介入のうちの「規制」についてはまだ話していなかったね。
そうでしたね。「課税」は消費税とか身近なので何となくイメージできたのですが、「規制」ってどんな感じなのですか?よく分からないです...。
「規制」もそんなに難しく考える必要ないよ。「規制」も身近な例を使って考えることができるから!今日は「死荷重損失(デッド・ウエイト・ロス)」が発生する「規制」についてみていこう!
余剰分析とは?
「余剰分析」とは何かというと、「市場の効率性の指標」のことを言います。「余剰分析」は、分析という名の通り、財やサービスのやり取りを行う市場メカニズムの中で効率的に資源が配分されているかを分析する手法になります。
公務員試験で出題される「余剰分析」では、下記の図のようにグラフに囲まれた部分の面積が「消費者余剰」と「生産者余剰」を足し合わせた合計が「総余剰」になります。
上記のケースは、生産価格/販売価格が1,200円だった場合の生産量/販売量と価格になります。1,200円の時生産量/販売量は2(人)となるため、消費者も2(人)のみとなります。この時、2人の消費者はそれぞれ1,600円、1,400円までなら出していいと思っているため、1,200円だった場合にはその分得をします。そして、緑色に塗られた部分が消費者の余剰となります。逆に、生産者側は、1人目は1,000円、1人目は1,200円で提供可能なので、青色に塗られた部分だけ得をしているということになり、青色部分が生産者の余剰となります。
次に下記のように、生産量/販売量と消費量が3(人)で均衡し、価格が1,400円の時、最初の図の時と比べて、緑色と青色の面積が大きくなります。
消費者余剰を表す緑色部分と生産者余剰を表す青色部分を合計した総余剰の面積は最初の図と比べると大きくなったといえます。そのため、「余剰分析」という観点から見ると、二つ目のケースでは市場でより効率的に資源配分ができているといえます。
デッド・ウエイト・ロスとは?
「デッド・ウエイト・ロス」とは、市場で効率的な資源配分がなされていない時に、「効率的な総余剰」から「現在の総余剰」を差し引いた残りを言います。「デッド・ウエイト・ロス」は英語でdead weight lossのことで、「死荷重損失」や「厚生損失」とも呼ばれます。
基本的に、市場で自律的に効率的な資源分配を実現できるとする完全競争市場の場合、政府が介入などしなければ下記のように総余剰が最大化される状態になります。総余剰最大化は通常、需要曲線と供給曲線の交点における価格、生産量において達成されます。
しかし、下記のように「需要と供給」の一致する交点における価格と生産量で売買が成り立っていない場合、「デッド・ウエイト・ロス」が発生します。
上記のケースは、政府により課税がなされているケースになります。課税により政府の収入になるため、図中の黄色部分は政府余剰になります。1個300円で企業が販売しようとするときに政府は200円分の課税を行っており、1個500円で販売されます。市場での生産量が3個の時、消費者は1個500円までなら払ってもよいと考えます。その結果、課税後の価格500円、生産量3個で均衡します。
そして、新たな供給曲線は課税後の供給曲線として、上方シフトします。この時、課税がなかった場合の総余剰の面積に比べ、白茶色の三角の面積分だけ総余剰が少なくなっています。このように、元の総余剰に対して減少した部分の総余剰を「デッド・ウエイト・ロス」と言います。
この時、新たな供給曲線と需要曲線で数量と価格は均衡します。というのは、企業が価格を上げようとすると税込価格も上昇し、これ以上高い価格で買いたいという消費者が増えないためです。
死荷重損失を発生させる「規制」とは?
そもそも「規制」と一口に言っても、現実には様々な「規制」があります。しかし公務員試験では、「数量規制」と「価格規制」という2つの規制の方法が出題されます。「数量規制」はいくつまでしか市場で売買してはいけませんという形の規制です。二つ目に、政府がこれ以上価格を高くしてはいけませんよという「最高価格(上限価格)」を設定する「規制」があります。例として、電気料金、都市ガス料金、鉄道運賃、乗合バス運賃、高速道路料金などがあります。今回は「価格規制」について図を使って見ていきたいと思います。
例えば水道や鉄道、電気は大規模なインフラを整える必要があるため、初期投資が大きくなります。すると、新しい会社が新規参入しにくくなるため、価格競争に陥りにくくなってしまいます。というのも、企業は元々利潤を追求することが目的のため、競合企業がいないのであれば、価格を上げることによって利潤を高くしようとします。
しかし、水道や電気は生きていくために不可欠なものなので、価格があまりにも高くなってしまうと、使えなくなってしまう人も出てきます。そうならないようにするために価格の上限が設定したりします。
では、「上限価格」という「規制」方法は図に表すとどうなるかですが、実際に見てみましょう。
図;上限価格の設定による「規制」
今市場ではチョコレートが売買されているとして、元々は1個200円で4個売買されていたとします(スライド1)。この時、総余剰は以下のようになり、市場では総余剰が最大となります。
上限価格が設定されていないときの総余剰は800円になります。
上限価格規制がされていない状況下の総余剰
総余剰=消費者余剰+生産者余剰
消費者余剰=(400-250)×4×1/2
=200×2
=400(円)
生産者余剰=200×4×1/2
=400(円)
総余剰=400+400=800(円)
この時は均衡状態で通常価格は変化することはありませんが、例えば政府が「1個150円より高い価格で売るな!」と上限価格が設定されたとすると、スライド2のように、価格は150円になって売買される数量は3個になります。
その結果、消費者余剰、生産者余剰は以下のようになり、総余剰は750円となります。
上限価格規制状況下の総余剰
総余剰=消費者余剰+生産者余剰
消費者余剰=(400-250)×3×1/2+(250-150)×3
=150×3×1/2+100×3
=225+300=525(円)
生産者余剰=150×3×1/2
=225(円)
総余剰=525+225=750(円)
以上より、上限価格が設定される前後で総余剰は50円の違いが出てきました。これが上限価格設定の「規制」における「死荷重損失(デッド・ウエイト・ロス)」となります。