AD曲線とは?-公務員試験マクロ経済学
あ、先輩、こんにちは...。
こんにちは、カズ。あれ、どうしたの?疲れがたまっているように見えるけど。
はい。最近スーパーの食品の価格が全体的に上がっていますよね。その分食費の割合が多くなってしまっていて、食費を切り詰めているのでよくお腹が空いて力が出ないです。
そうか...。確かに以前に比べると食品全体の物価が上昇しているから、食費が高くなってしまうよね。
そうですね。最近ニュースでは日本も景気が少しずつ良くなっているとか聞くのに、モノの価格が高くなってしまうとそれ以上に出費が多くなって結局個人レベルでは裕福にはならないですね。
うんうん。ただ、国民所得の変化と物価水準の変化って関連性があってしょうがない面もあるからね...。
そうなんですか?
そうそう。カズも今公務員試験でマクロ経済学の勉強をしていると思うけど、AD曲線(総需要曲線)と呼ばれる曲線を用いて物価水準と国民所得の関係が分かるよ。折角だから今日はAD曲線について理解できるようにしよう。
AD曲線(総需要曲線)とは?
そもそも、AD曲線(総需要曲線)とは、「財市場と金融市場を同時に均衡させる物価水準Pと国民所得Yの組合せの集合」になります。財市場とは、マクロ経済学では「財やサービスのやり取りを行う市場」のことで、人々による消費や、企業の投資、貿易、政府の支出などのやり取りが行われている市場です。
IS曲線について別のページ に詳細を説明しているのでそちらを見て頂ければと思いますが、下記のように縦軸に利子率、横軸に国民所得をとる図において、IS曲線は原則右下がりになります。なぜなら、銀行から借り入れる際の利子率が下がると、企業の投資が積極的になり国民所得が増加するためです。
次に、金融市場とは、「貨幣のやり取りを行う市場」のことです。縦軸に利子率、横軸に国民所得をとる図において、下記のようにLM曲線は右上がりの曲線になります。LM曲線について詳しくはこちらも別のページ で紹介しているためそちらを見て頂ければと思いますが、マネーサプライ一定の下で、国民所得が増加すると取引目的(予備的動機の貨幣需要も含む)の貨幣需要が増加して、逆に投機的目的の貨幣需要は減少するため、利子率は減少します。そのため、原則的にはLM曲線は右上がりの曲線になります。
IS曲線とLM曲線を下記のように同じ図に図示して、財市場と金融市場の両方で均衡する利子率と国民所得を分析するのが、IS-LM分析でした。
図;IS-LM分析
しかし、IS-LM分析ではLM曲線の定式の中にある物価水準Pについては一定という前提で進めていました。この前提をなくして、Pを変数としたとき(縦軸に物価水準、横軸に国民所得をとる図で考えたとき)の財市場と金融市場における物価水準と国民所得の関係を表した曲線がAD曲線といいます。
上記のスライドのように、財市場と金融市場では、例えば物価水準Pが上がる(下がる)と実質マネーサプライM/Pが減少(増加)して、利子率が上がる(下がる)ので、国民所得Yは減少(増加)するため、物価水準Pの上昇(下落)は国民所得Yの減少(増加)を表す右下がりの曲線になっています。
[物価水準Pと国民所得Yの関係] 1,物価水準Pの上昇(/下落) ↓ 2,(名目マネーサプライM一定の下で) 実質マネーサプライM/P下落(上昇) ↓ 3,利子率iの上昇(/下落) ↓ 4,投資の減少(/増加) ↓ 5,国民所得Yの減少(増加) |
上記の物価水準Pの変化による国民所得Yの変化のプロセスは単に暗記して覚えるのではなく、理解して使いこなせるようになるために重要なプロセスになります!
AD曲線のシフト
公務員試験ではさらに、AD曲線のシフトについて問われることがよくあります。AD曲線は財市場を分析するIS曲線と金融市場を分析するLM曲線を基にして作られているため、各市場の要素(政府支出Gや投資I、名目マネーサプライMなど)の変化によってIS曲線やLM曲線がシフトするケースではAD曲線もシフトします。以下では、IS曲線が右シフトしばケースを見ていきたいと思います。
図;AD曲線のシフト
上記のようにIS曲線がシフトする際、物価水準Pは一定とすると、国民所得Yは変化します。そのため、スライド2のようにAD曲線はシフトします。
最後に
いかがでしたでしょうか?受験生の中には、AD曲線の形状などは理解できても「なぜこのような形になるの?」とか「そもそもAD曲線って何?」という本質的な部分の理解ができていない受験生がいると思います。理解してしまえば応用問題が出ても解けるようになります。プロセスを理解することが一番大切なので、AD曲線ができるプロセスをぜひマスターしてください!