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ビルトインストビライザーとは? -公務員試験マクロ経済学

あ、こんにちは。先輩。 

こんにちは、カズ。あれ、顔がだいぶ疲れている感じだけど大丈夫? 

はい、僕の父親の話なんですけど、今年に入って会社で昇格して給料が上がったって喜んでいたんですけど、その分所得税も高くなってしまって公務員批判を延々と聞かされていました..。

そうだったんだね。所得税の制度は各人の所得によって上下するビルトインスタビライザーとしての機能があるからしょうがないよね。 

ええっと、何なんですか、そのビルトインスタビライザーって?英語苦手なのでよく分かりません...。 

あれ、公務員試験のマクロ経済学や財政学の分野ではよく出てくる用語ではあるけど、まだ聞いたことなかった? 

講義で出てきたことはあるかもしれませんが、あまり授業に集中していない久手内容が頭に入ってきてないので覚えてないです。 

折角の授業なのにもったいないよ!今回お父さんの所得税の例があるんだから、今日覚えてしまおう!

ビルトインスタビライザーは?

ビルドインスタビライザーと言われると横文字でなんだか難しそうな印象を受けてしまうと思いますが、ビルトインスタビライザーとは「経済を自動的に安定化させる機能」のことで、日本語で自動安定化装置と呼ばれています。 

 

「経済を自動的に安定させるってどういう意味?」と思う受験生も多いかもしれませんが、自動的に安定させるというのは、景気が良くなったり悪くなったり変化した時に、そのまま良くなりすぎたり悪くなりすぎたりして歯止めが利かなくなるのをおさえる役割を政府主導で行うのではなく、あらかじめ組み込んだ制度が担うというものです。

 

ここで、「景気が悪くなった時に悪くなりすぎないようにっていうのは意味が分かりますが、良くなるんだったらそのままどんどん良くなった方がいいんじゃないの?」と思う受験生が出てくるかもしれません。少し古い例でまだ生まれてきていない方も多いと思いますが、バブル期をイメージしてみるといいと思います。詳細は割愛しますが、当時、景気が過熱しすぎたからこそ(よかったからこそ)最終的にバブル崩壊につながってしまいました。このように行き過ぎた好景気も反動で不況に陥る原因となるため、セーブした方が良いと考えられています。

 

 

所得税制度がビルドインスタビライザーの機能を有しているとは? 

ここまでで、ビルドインスタビライザーが行き過ぎた景気を抑える機能を持つということは分かったと思います。しかし始めの会話の中で、所得税制度がビルドインスタビライザーの機能を持つという話をしました。実際にはなぜ所得税制度が、行き過ぎた景気を抑えるビルトインスタビライザーとしての役割を持つのか話していきたいと思います。

 

そもそも所得税の説明を簡単にすると、所得税というのはその人の所得(稼いだ額)によって税率が変わってきます。国税庁のHPに載っている累進課税について見てみると以下のように所得によって課税額が変わってくるのが分かります。

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[引用]国税庁所得税の仕組み

例えば所得150万円の人だと税率5%で7.5万円の所得税が徴収されます。他方で、所得が300万円の人は税率10%で30万円所得税が徴収されてしまいます。つまり所得が多くなればなるほど所得に占める所得税の割合が多くなってしまっていて消費とか他の支出に占める割合が減ってしまいます。

 

所得が減ってしまえばその分所得税の税率も減るため、所得に占める消費等の割合を増やすことができて景気が悪くなった時に国民所得の変動を小さくできるということになります。 

 

 

投資乗数の比較 

ここまででビルトインストビライザーの理解はできたと思います。ここで終わりでもいいのですが、最後にもう一歩進んで公務員試験でよく用いられる財市場の均衡条件を使って、所得税が組み込まれている場合と、組み込まれていない場合の比較をしてモデル上でも本当に国民所得の変動が小さくなるのか見ていきたいと思います。 

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財市場の均衡条件

そもそも財市場の均衡条件とは、一国内で総供給と総需要が一致することです。総需要とは、消費Cや、投資I、政府支出Gなどのことで、租税はTで表されたりします。上記の図の場合、そのままTで表されているため、所得の多寡に依存する所得税ではなく、定額税を表しています。これら以外にも総需要には、輸出入などがありますが、上記では簡便化のために記載しませんでした。ともかく、財市場の均衡条件とは、諸々の総需要の合計と総供給が一致するという考え方です。

 

次に、財市場の均衡条件を使って所得税が含まれるケースと含まれないケースについてみていきたいと思います。所得税は所得に依存するため、財市場の均衡条件の中ではtYとあらわされます。

 

下記の図において、左が所得税tYが含まれていない財市場の均衡条件をYについて整理したもので、右が所得税tYが含まれている財市場の均衡条件をYについて整理したものとなります。 

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所得税がある場合とない場合の国民所得の変化分△Y 

tは所得税の税率を表していて、tが0.1とすると所得税率が10%で所得Yのうち10%が税金として引かれた可処分所得となることを表しています。なお、左の所得税が含まれていない財市場の均衡条件は定額税Tを使っても結果は変わらないため、定額税もないパターンを記載しています。

 

上記の図の場合は、例えば投資Iの変化したときの国民所得Yの変化についてそれぞれの式を見てみると、乗数が左は1/(1-c)で、右が1/1-c(1-t)となっています。この時、右の所得税があるときの方が乗数は小さくなります。理由は、(1-t)をcに乗じていてc>c(1-t)、即ち分母の部分の大小関係が(1-c)<1-c(1-t)となるからです。 

 

c=0.5、t=0.2とすると、所得税のない左は1/(1-0.5)=2となりますが、所得税のある右は、1/1-0.5(1-0.2)=1/(1-0.4)=1.666…となります。つまり、所得税がない時は投資Iによって当初の2倍国民所得も変化するけど、所得税があるときには約1.67倍しか変化しないということになります。

 

このように、所得税がある方が財市場の均衡条件のモデルからも国民所得の変動を抑えるっていうのが分かります。

 

 

最後に

いかがでしたでしょうか?ビルトインスタビライザーは経済学や財政学の範囲で用語はよく出題されます。用語について身近な例を使いながら理解すると、理解が深まると思います。ぜひマスターしてみてください!

 

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