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役所の窓口はどうして機械化が進まないの?ー元公務員が教える公務員事情

こんにちは、元市役所職員のトモノリです。世間からは公務員は目の敵にされる対象だと思います。特に異動の手続や戸籍などを取り扱う市民課や、保険課や年金課、市民税課など住民との直接のやり取りを行う窓口は、職員が多く配置されておりコストがかかる一方で、混雑することも多いため機械化しろという声をよく聞きます。

 

僕も以前いた部署では、住民の方が一日300~400人の住民が手続に来るにも関わらず、ある住民の方に「職員は1人で後は機械化すれば十分だろ!!」とご指摘を受けました。

 

確かに個人的には、現状の職員配置だと住民対応でのストレスや、時間のロスによって、住民のために業務を行おうとするモチベーションの維持ができなくなってしまったり、クリエイティブな業務ができずルーティンワークだけになってしまうという問題点があるので、機械化できれば機械化して、住民と職員との接点を極力減らすのも一つの施策としてありなのではと思います。

 

しかし現実には、機械化が進まない理由があります。そこで今回は、役所における窓口業務の機械化が進まない理由をお伝えしていきたいと思います。特に3つ目4つ目の理由は、公務員の立場じゃないと分からない、かつ皆さんに知ってもらいたい部分なので、見ていただけると幸いです。

 

 

コスト面の問題

まず一つ目に考えられるのが、コスト(費用対効果)の問題です。数年前にマイナンバー制度が開始しましたが、マイナンバー制度に付随してマイナンバー(個人番号)カードというものが導入されたのを聞いたことはあるかと思います。例えばマイナンバーカードを使って全国どこのコンビニで住民票や戸籍関係の書類をとることができますが(機能を付帯した場合)、自治体が戸籍関係の書類をとれるようにサービスを拡充する場合、自治体にもよるかもしれませんが、5,000万円程度かかったりします。

 

また、自治体の多くは印鑑登録をする際印鑑登録カードを住民に渡していますが、自治体によっては印鑑登録証明書が発行できる機械を役所内に置いていたりすることがあります。僕が働いていた自治体にはその機械はなかったのでコストはどのくらいだかは分かりませんが、その機械を導入していたけど、サービスを終了した自治体があるというのを聞いたことがあります。推測ですが、マイナンバーカードで印鑑証明書がとれるようになったからという理由と、コストに対して効果が見合っていない(つまり、多くの住民が結局窓口に撮りに来てしまう)という理由があると思います。

 

もちろん、いくらコストがかかるからと言っても、効果がコストに見合っていれば行政的には問題ないのですが、費用対効果自体も問題があるので、なかなか実施できないという部分があると思います。

 

 

機械化に対応できない住民

二つ目が、機械化に対応できない住民の方が一定数少なからず存在するため、機械化が行えないという理由です。「機械化しろ!」と言ってくる人がいるのは事実です。しかし他方で、「マイナンバーカードを使ってコンビニで取るのは、危ない感じがするから職員さんから書類を受け取りたい」と言う住民の方や、「機械は使い方分からないから職員さんとのやり取りで手続したい」「手続に関して分からないことがあるから職員さんと対面で手続を進めたい」という方がたくさんいらっしゃいます。

 

もちろん、「機械化しろ!」も住民の声ですが、「機械化より直接対面で手続したい」というのも住民の声です。どちらも貴重な意見ですが、全ての住民が窓口に来れば事足りるので、機械化しなくとも現状維持のままで問題はないですが、機械化すると機械が使えない人もいて行政サービスが受けられない人が出てくるので、なかなかより多くの部分を機械化するというのは現状難しくなってしまっています。

 

 

法令の解釈適用の難しさ

一つ目、二つ目の理由は何となく役所の職員でなくとも分かるんじゃないかと思いますが、三つ目の理由は住民からは見えにくい、しかも機械化を難しくしている一番の問題だと思います。その最大の理由というのが、各住民のニーズや現状に合わせて、法令を解釈して手続ができるかできないかの線引きをするのが機械では困難であるという理由です。

 

証明書の発行にしても、行政手続にしても、誰が手続を行えて、必要書類は何かなど厳密に定められています。役所の職員は申請をただ受理するだけだと多くの方は勘違いしているのですが、実際には申請者の情報を引き出して法規に照らして要件をチェックします。例えば、委任状の有無であったり、手続人の死亡や病気により、代理人が来ざるを得ない場合があると思いますが、そのような情報は対面で職員が聞いて、関係機関に確認等をとらないと噓をついていないか等機械では分からないことがたくさんあります。

 

一見要件としては手続できなそうな人(例えば、任意代理人は表面上は赤の他人)でも、例外的に手続できる場合など機械の画一的な判断だけでは難しい部分があるため、機械化できないという事情があります。

 

任意代理人の他によくあるのが、不動産関係の書類(評価証明書など)の申請です。基本的には不動産所有者が申請可能ですが、登記簿謄本に所有者が記載される時期の関係で、基準日時点(1月1日)の所有者と、現在の所有者が異なる場合があり、データベースの反映もできていないことがあります。そういったときに、機械のみだと申請が受理されないというケースがあるので、なかなか機械化できないという課題があります。

 

僕は役所を退職した身分なので、公務員寄りの立場に立つ必要はないのですが、あえて公務員を擁護すると、要件に関して判断することが難しいため、行政手続の時間がかかってしまうことがよくあります。よく職員たちを見るとゆっくりと仕事をしているように見えますが、個人情報を扱うため、万が一間違えたら訴訟にもなりかねないので万全を期して落ち着いて状態で手続を行っています。住民の方が怒ったりすると逆にミスにもつながりかねず、再度来庁しなければならないということもあるので、なかなか手続が終わらないとイライラすると思いますが、寛容になってあげてください!

 

 

犯罪の防止・抑止

最後の理由は、窓口で直接手続を行ってもらうことで犯罪の防止・抑止になるという理由です。「手続や証明書の発行なんて、自動販売機のようにボタン一つでできるようにすればいいだけじゃないか!」と反論する方もいらっしゃるかもしれませんが、職員が取り扱っているのは、住民の個人情報なので、間違って別の人に公開することのないように厳密に扱う必要があります。

 

ボタン一つで簡単に手続ができるようになってしまうと、別人がなりすまして手続を行う可能性があり、さらには職員が対面で本人確認等できないため、誰がなりすましたかわからなくなってしまうという事態が起こりえます。

 

直接窓口で手続を行いに来てもらえれば、どのような人が来庁したのか、また本人確認を通じて本人なのかどうか職員の目で識別できます(もちろん、個々の職員が対応するので主観的になってしまうこともありますが)。それこそ監視カメラや指紋認証を導入するのはどうかという方もいるとは思いますが、コストの面はもちろんのこと、個人のプライバシーにそこまで踏み込むことは問題がある場合があるので、実現しにくいという現実はあります。

 

ちなみに、役所で手続を行う時に、よく書類をいちいち書く時、めんどくさいなぁと思うことはありませんか?僕はよくあります(笑)。ただ、あのような申請書類も保存期間を定めてしっかりと保管しています。もし本人になりすまして申請に来ると、犯罪目的であれば警察から照会がかかり、申請書類の指紋採取や筆跡鑑定などもあります。俺は悪いことをしているわけじゃないんだから書く必要ないだろという方もいるのですが、職員が「(あなたは犯罪人っぽい風貌だから)申請書書いてください」と選別していたらそれこそ問題ですよね。

 

少し横道にそれましたが、機械で簡単に手続ができない理由が、このように犯罪の防止・抑止という部分にもあるのです。

 

 

最後に

いかがでしたでしょうか。もっと複合的に様々な事情が重なっていて、役所で機械化が進まないという部分はありますが、主なポイントを実際に働いていた職員の視点から並べてみました。

 

当サイトのメインターゲットは公務員試験を受ける受験生だと思うので、これから入庁する方たちには、このような現状がある上で、どうすればより住民のために行政サービスをよくできるか考えてもらえると、役所の仕事も楽しくできると思います。ぜひ問題意識を持って仕事をしてもらえればと思います!

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