住民税の普通徴収と特別徴収の違いは?-公務員・行政辞典
先日会社を退職したのですが、住民税の納付書が市から届きました。今まではこんなの届いたことがなかったのですが、どうしてでしょうか?
会社から退職したことで「特別徴収」から「普通徴収」に切り替わって、これからは自分で支払う必要があるからだよ。よく自治体では「特別徴収」、「普通徴収」って言葉を使うんだけど、今日はその違いについて理解できるようにしよう。
住民税って?
そもそも住民税とは、「前年度の課税所得に対して賦課される税金」のことを言います。所得税も所得に対して課税される税金であるため似ていますが、住民税は前年度の所得に対して課される税目であり、所得額に関わらず税率が一定(一部自治体を除き10%)という点で所得税と異なります。
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住民税の納付方法は?
住民税は「市町村民税」と「都道府県民税」から成り、住んでいる市町村が「道府県民税」も一緒に徴収します。なので、納付書は市役所などから送られ、住民税が納付されると、道府県と以下のように配分されます。
但し、住民税の納付の仕方には以下の2つの方法があります。
特別徴収
普通徴収
まず「特別徴収」とは、サラリーマンなど給料を会社からもらっている人に対する住民税の徴収方法になります。「特別徴収」の場合には、従業員が税務署や役所で手続きをすることなく、会社と役所とのやり取りによって完結します。つまり、従業員の住民税を毎月の給料から天引きして支払う方式になります。
「特別徴収」のことを役所の人間は「特徴」と呼んでおり、僕も入庁当初は「特徴って何??」と思ってしまいました。世の中の大部分の人は会社から給料を得て生活していると思うので、給与明細で住民税が天引きされているのを見たことがあると思います。これが「特別徴収」です。
一方で、「普通徴収」とは、会社経由ではなく、自分で住民税を支払う方式になります。フリーランスの方や、副業をやっていて会社に知られたくない方にはなじみのある方式だと思います。「特別徴収」では、6月から次の年の5月まで毎月の給料から住民税が天引きされるのですが、「普通徴収」の場合には、市区町村から送付される納税通知書によって年4回に分けて納付する必要があります。僕が役所で対応していた当時の話ですが、「普通徴収」に切り替わった方の中には、1枚の納税通知書の値段を見て高いとびっくりされる方もいました。しかし、1年の住民税を12分割しているか4分割にしているかの違いでトータルの額は変わらないというのが実情です。
特別徴収から普通徴収へ切り替わるタイミングは?
給与所得を得ている人の場合は、地方税法第321条の3の規定により、例外を除いて「特別徴収」の方式で住民税を徴収するとされています。しかしながら、給料を得ている人でも事情がある方や、フリーランスの方などは、「普通徴収」の方式で支払うこととなります。
普通徴収は上記のように年4回に分けて支払いを行います。しかしながら、年度の途中で退職するなどした場合、「特別徴収」から「普通徴収」に切り替わるため、退職時期によって年4回ではなくなります。例えば、8月末に退職した場合、8月分までの住民税(6月から8月まで3ヶ月分)は給料から天引きされて支払われますが、9月から5月までの残りの住民税は、普通徴収で支払うこととなります。
8月以降の普通徴収の納期は8月末、10月末、1月末とありますが、8月に退職した場合8月の納期には通知書が間に合わないため、10月末と1月末の2回に分けて支払うこととなります。仮定として、この方の1年間の住民税が12万円だった場合、6月から8月までの3カ月分の住民税3万円(=1カ月×1万円)は特別徴収として既に納付されていますが、残りの9万円は10月末と1月末の2回の普通徴収の納期限までにそれぞれ支払う形となります。つまり1回の支払いは4.5万円となり、高額に感じてしまいますが、支払う回数が少なくなっているためです。
・住民税には、特別徴収と普通徴収という2つの支払い方式がある。
・給与所得は原則特別徴収によって会社から直接納付される。
・普通徴収は年4回に分けて支払う必要がある。