憲法における天皇制について-公務員試験憲法を分かりやすく
公務員試験の憲法の講義を最近受講し始めたのですが、憲法第1章の「天皇」の部分は先生が「試験には出題されることはほとんどないからスルーして大丈夫」と言って触れられませんでした。でも、スルーされると気になります…!
先生の言う通り、試験ではほとんど出題されない条文だから、勉強する必要はないけど、確かに天皇制って憲法にどう規定されているのか気になる部分ではあるよね。それじゃあ今日は、教養として憲法の天皇制の規定について理解できるようにしようか。
憲法における天皇制の条文
日本国憲法は、全11章103条から成る日本における最高法規になります。全11章の内容から構成されていますが、第1章と一番初めの章で天皇制について触れられていることからも、憲法において天皇制の規定はとても重要であることが分かると思います。
第1章の天皇については、第1条から第8条まで全8つの条文にて規定されています。これら8つの条文は、以下のように天皇の地位について規定しています。
憲法には、「象徴としての地位」、「国家機関としての地位」、「私人としての地位」、「公人としての地位」と大きく4つの地位について記載されています。上の図のように、天皇の地位に関する4つの側面について、各条文で具体的に記載されています。
象徴としての地位とは?
憲法第1条では、天皇が日本国の象徴であり、象徴としての地位は日本国民の総意に基づいていると規定しています。
戦前の明治憲法下においては、天皇の地位は神によって与えられたものとして神格化された地位とされていました。しかしながら、戦後GHQの命によって、天皇の地位は神ではなく国民の総意によって与えられた地位として、非政治的な存在として定義しました。つまり、場合によっては天皇制の廃止のように、国民の意思によっては改廃も可能となっていることを意味します。
公人としての地位とは?
憲法第2条では、皇位は世襲制であること、皇室典範に基づいて皇位が継承されることなど公人としての地位を規定しています。
世襲制は、日本国憲法の平等の理念とは相反するものではありますが、天皇制を維持するにあたっての例外となっています。また、皇室に関するルールや皇位継承に関するルールなど具体的な規定は、皇室典範という法律で記載されています。
国家機関としての地位とは?
憲法第3条から第7条の条文は、国家機関としての天皇の地位や役割を規定しています。天皇は憲法によって政治的な行為は禁止されていますが、第4条より一方で形式的・儀礼的行為である国事行為は認められています。しかしながら、第3条で規定されているように、この国事行為であっても内閣の助言と承認が必要とされています。
さらに、第5条では、摂政を置いた際の国事行為について記載されています。
さらに、第6条、第7条では国事行為の具体的内容が記載されています。
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。
公務員試験で天皇に関する出題はほとんどでないと話しましたが、憲法第6条、7条の国事行為については内閣(行政権)の範囲とも絡んでくるため、暗記は不要ですが理解しておくべきポイントとなります。
私人としての地位とは?
憲法第8条では天皇の私人としての地位として、皇室の財産について規定しています。
皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。
憲法は、皇室財産を国に属する財産としています。もちろん、皇室の財産であっても純粋に私的生活のための財産は皇室財産には含まれず、私有も可能ではありますが、皇室財産やその費用は、国の予算に計上して国会の議決を経る必要があります(憲法88条)。
このように、皇室財産を国の民主的コントロールの下に置くことによって、皇室の権力集中や特定の利権との関連を防止しています。