予算の法的性格と成立過程-公務員試験憲法を分かりやすく
ニュースで「予算案が成立」という表現がよく使われますが、予算って国会で成立するんですよね?
そうだね~。ちゃんとニュースをチェックしていて偉いね!
いえいえ、分からないことがたくさんです…。ちなみに、国会では法律の審議などが行われますが、予算も法律と同じものという考え方でいいのでしょうか?
いい所に気が付くね~。その点に関しては学説上の対立もあって、公務員試験でも出題される部分になるよ。その部分は憲法86条の条文が関係してくるんだけど、今日は憲法86条の予算に関する規定について理解できるようにしようか!
憲法86条の規定とは?
日本国憲法において、財政に関する規定は83条から91条まであります。
予算については、上記の各規定を見ると分かるように86条にあり、以下のような規定となっています。
内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
予算を実際に執行するのは、言うまでもなく内閣(行政)になります。しかしながら、国民の税金を使って執行するため、国民の代表から構成される国会での審議・議決を要求しています。これによって予算を適切かつ民主的なものにできるようにしています。
予算の法的性格は?
予算は、単なる歳出入の見積もり表ではなく、政府の行為を規律する法規範とされています。しかしここで、予算は法律と同じものなのか、それとも独自の方形式なのかなど、法的性格について疑問が生じます。なぜなら、法律と同じか同じじゃないかなどによって、国民が予算案に厳格に拘束されるかや、予算案成立過程などの考え方が変わってくるためです。実際、予算の法的性格について以下3つの考え方があります。
まず一つ目の「予算行政説」ですが、これはそもそも予算には法的性格はないと考える説になります。この説を採ると、予算は行政行為であり、国会の議決はあくまで予算という行政行為に対する承認ということになります。そのため、法的拘束力もありません。しかし、この考え方は、予算には法的拘束力もなく民主的コントロールも必要としないため、財政民主主義に反するとの批判があります。
次に、「予算法形式説」という考え方があります。この考え方は、「予算は法律とは異なる法の一形式」であるという立場になります。実際、実務上でも予算は法規範性を持っていますが、法律とは異なり①国民を直接拘束しない、②効力が一会計年度に限られている、③予算発議権が内閣だけにしか認められていない、など法律とは異なる性質のため、法律とは異なる法形式だという考え方になり、通説とされています。
最後に、「予算法律説」という考え方があります。この考え方は、「予算は法律それ自体である」という考え方になります。なぜなら、予算は法律と同様に国会で審議され、議決を経てから効力を発するためです。しかしながら、「予算法形式説」でも話したように、法律と異なる取り扱いをする場面も多いため、不都合が生じることがあるため、多数説とまではいきません。