強行規範とは?-国際法を分かりやすく
強行規範とは?
強行規範とは、条約法条約53条にて「いかなる逸脱も許されない規範として、また、後に成立する同一の性質を有する一般国際法の規範によってのみ変更することのできる規範として、国により構成されている国際社会全体が受け入れ、かつ、認める規範」のことを言います。
そもそも国際法の原則とは?
条約とは締結した国同士のルールになりますが、時代とともに実態にそぐわないルールになってしまうことがあります。そのため、矛盾する内容の国際法のルールがある場合、原則として古い条約よりも新しい条約が優先されます。これを「後法優位の原則」と言います。
また、国際法の原則として、「特別法優位の原則」というものがあります。これは一般的なルールや決まりを定めた抽象的な条約(一般法)と細かく具体的に定めた条約(特別法)がある場合、特別法が優位するという考え方です。
強行規範は国際法の原則が適用されない!
しかし、強行規範の場合には、「後法優位の原則」、「特別法優位の原則」が適用されません。
条約は当事国間のルールであるため、基本的には当事国間で自由に定めることができます。しかし、完全な自由にしてしまうと、例えば当事国間で「人権侵害してもオッケー」という特別法を作ってしまった場合、国際社会全体としては「人権尊重」が必要だと思っても、一部の国で人権侵害行為が許されてしまうことになってしまいます。
また、戦前までは国際社会のルールを列強諸国など一部の国で決めていました。このような一部の国の合意でルールを決めるのではなく、国際社会全体が受け入れたルール、つまり強行規範が必要だと考え、強行規範の必要性が説かれるようになりました。
強行規範って具体的に何がある?
強行規範の考え方は、条約法条約に記載されていますが、具体例については条約法条約の注釈書に例示列挙されています。
・侵略禁止
・ジェノサイド禁止
・海賊行為の禁止
・奴隷売買の禁止
また、国連憲章2条4項に記載されている「武力不行使原則」も同様に強行規範だと国際社会では広く受け入れられています。「破ってはいけない強行規範なのにどうして戦争とか紛争はなくならないの?」と疑問に思うかもしれませんが、憲章上に明記されている個別的・集団的自衛権など様々な例外があるので、興味があれば別の記事で紹介したいと思うので、見てください。
[参考]