国際収支統計とは?-公務員試験マクロ経済学
こんにちは、先輩!今回も質問したいことがあるのですがいいですか?
こんにちは、カズ。大丈夫だよ!
ありがとうございます!実は授業で「国際収支統計」を分析することになったのですが、これまでの経済学で勉強してきたグラフを用いた理論とかとは違って全く意味が分からないのです…。
あー、「国際収支統計」は用語も多いしなかなか覚えるの難しいよね。公務員試験とかでも捨てる受験生続出する部分だと思う(笑)。でも、経常収支とか出てくると思うけど、現実の経済により近い概念が多く出てくるから公務員試験終わった後でも役立つと思うし、ぜひ今日マスターしよう!
国際収支統計とは?
国際収支統計とは、「自国の居住者と外国の居住者の間で行われた全ての経済取引を、複式簿記の原則に基づき記録したフローの統計」のことです。国際収支は様々なものから構成され、以下のようになっています。
[参考]
国際収支とは、上記のように、「経常収支」、「金融収支(資本収支)」「資本収支移転」「誤差脱漏」から構成されます。国際収支統計は複式簿記の原理に基づいて作成されています。複式簿記の原理とは、簿記の勉強をしたことのある方ならイメージしやすいと思いますが、簡単に説明すると、1つの取引を統計上複数の科目に記載することです。例えば、100円のチョコレートを輸入した時に、100円という資金は国内からなくなりますが、100円分のチョコレートという資産は増えます。このように、モノの取引はあっても統計上はプラマイゼロになるという考え方です。
実際には、統計上の誤差などがあるためプラマイゼロとは言い切れないこともありますが、それを補うのが「誤差脱漏」になり、統計上のズレは、「誤差脱漏」によって調整します。
経常収支(CA)とは?
経済学でよく出てくる用語として、経常収支(CA)があります。特に公務員試験などではCAと英語の略称で出てくることもあり、これはcurrent account balanceの略になります。経常収支は、貿易やサービスなどの「モノ」の流れを表しており、「貿易・サービス収支」「第一次所得収支」「第二次所得収支」の3つから成り立っています。
「貿易・サービス収支」とは、「財・サービスの輸出額」から「財・サービスの輸入額」を差し引いた額になります。次に「第一次所得収支」とは、雇用者報酬や対外資産の収益の受け取り(支払い)額等になります。「第二次所得収支」は、途上国への無償資金援助や、国際機関への拠出金などリターンのないものになります。
よく経常収支の黒字・赤字という言葉をニュースなどで聞くと思いますが、イメージしやすいように「財・サービス収支」のみで考えると、経常収支の黒字は、輸出が輸入を上回っている状態、即ち資本流出を表します。他方、経常収支の赤字は、輸入が輸出を上回っている状態、即ち資本流入を表します。経常収支については国際収支均衡線(BP曲線)や、IS-LM分析でも出てくることがあるので、用語の意味と黒字・赤字の意味はしっかりと捉えておく必要があります!
金融収支とは?
金融収支とは、「お金の流れ」を表しており、対外資産/負債の増減を表したものになります。資本収支と呼ばれることもあります。ここで、資本の流入とは、イメージとして外国にいる人が日本の企業や株式に対して出資をすることです。出資によってお金が国内に来るので、資本が流入したといいます。この時、対外的な負債は増加したといえます。また、外国の企業などへの投資をやめたりして国内にお金を戻す時も、資本の流入と言います。この場合もお金の流れは外国から国内なので、資本が流入したと言えます。
金融収支は「直接投資」「証券投資」「その他の投資」「外貨準備」「金融派生商品」の5つから成り立ちます。まず、「直接投資」とは海外での会社経営などを目的に行われる対外的もしくは対内的な投資になります。次に「証券投資」とは間接投資とも呼ばれ、経営目的ではなく、外国企業の株式や債券などに投資することを言います。「金融派生商品」とは、株式や債券以外の金融商品のことを言います。例えば、先物・先渡取引の売買差損益があります。公務員試験などでは「証券投資」の中の一つとして「金融派生商品」を含めることもあります。「その他の投資」とは、直接投資・証券投資、外貨準備等を除いた全ての国際金融取引に伴う投資になります。例えば貸付や借入などが該当します。最後に、外貨準備ですが、中央銀行など金融当局が保有する外貨量の増減のことを表します。
金融収支ももちろん公務員試験などで出てきますが、経常収支と比べると出題されることはないので、金融収支の各項目を全て暗記する必要はないと思います!
資本収支移転・誤差脱漏とは?
最後に、「資本収支移転」と「誤差脱漏」を一気に見ていきたいと思います。「資本収支移転」とは、相手国の資産形成に役立つ贈与や、特許権・著作権の売買、排出権などのライセンス契約の形状を指します。「誤差脱漏」は、統計上の誤差や記録漏れを調整するための項目になります。
以上、各項目の概要を説明してきましたが、実務上はもっと細かく項目がつけられており、定義づけもされています。公務員試験では必要ありませんが、金融や統計関係の官公庁を志望する受験生は、下記の詳しい項目についてチェックするのもいいかもしれません。
https://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/data/exbpsm6.pdf
国際収支均衡式は?
以上、国際収支の各項目についてみてきましたが、最後に国際収支統計の均衡式について見ていきたいと思います。
国際収支は「経常収支 + 資本移転等収支 + 金融収支 + 誤差脱漏 = 0」ですが、公務員試験などでは、資本移転等収支や誤差脱漏は出てこないので、省略しています。また、マクロ経済学の超重要トピックの一つに「BP-IS-LM分析」というものがありますが、個々で言うBP曲線も「経常収支+金融収支=0」という考え方を使うので、経常収支と金融収支については少し理解を深める必要があります!
最後に
いかがでしたでしょうか。僕も公務員試験の勉強をしていたころは、この辺りが苦手でした。グラフを使ったり頻出度も高くないのでなかなか覚えるのに苦労すると思いますが、マスターすれば他の受験生より一歩リードできると思います!