あっ、先輩、こんにちは!
あ、こんにちは。カズ。どうしたの?今日は不機嫌な感じだね。
そうですね、少しイライラしてますよ。なんで大学の授業の教科書ってあんなに高いんですか?教科書なんて普通1000円とか2000円くらいですよね?ミクロ経済学の教科書の値段を今日見たら4000円でした!ぼったくりですよ!
はは...。まぁ、大学の教科書は専門書だから、あまり買う人も多くないし、その分出版費用を回収したりするために、少し高くなっちゃうからしょうがないよね。
そんなこと言ったって、金欠大学生にとって教科書代は死活問題ですよ!専門書ってなんであんなに高いんですかね?
確かにそうだね..(笑)。専門書が高いのにはもちろん、購入する人が多くないから1冊の価格を高くすることでコストを回収するって理由もあるけど、ミクロ経済学の「需要の価格弾力性」という観点から、上手く説明できるよ。
「需要の価格弾力性」ですか?なんか聞いたことあるようなないような…。
うんうん。公務員試験とかでは頻出の範囲になるからぜひ今日はしっかり理解しよう!
需要の価格弾力性とは?
「需要の価格弾力性」は「価格が1%変化した時に需要量が何%変化するか」を表しています。例えば、スーパーのお惣菜などは夕方値引きセールが始まると、買う人が増えたりします。このように、価格と需要量(購入される量)には因果関係がある場合があり、価格が1%増減すると取引量がどれだけ変化するかを調べたりするのが「需要の価格弾力性」になります。
スーパーのお惣菜などは値引きセールが始まると買う人が一気に増えたりします(需要の変化率が高い)が、大学で勉強する時に使う専門書はどうなるでしょうか?専門書は専門的な内容のため、その学問を専攻している大学生や学者の方など一部の人にしか買われないことが多いです。他方、その専門書がほしいという人たちは価格の高さで購入を決めるわけではないため、価格を下げても需要量が爆発的に増加するということはありません。つまり、専門書などは「需要の価格弾力性」は高くないことが分かります。
従って、同じ価格1%の減少でも財によって需要量の増える量は異なることもあり、さらには同じ財であっても元の価格が異なれば需要の価格弾力性は異なることがあります。はじめはイメージするのも難しいかと思います。そこでまずは、「専門書」と「ケーキ」という2つの財についてそれぞれ具体的な数値を用いて説明していきたいと思います。
まず、元々2000円の「専門書」と「ケーキ」があるとします。
専門書もケーキも、1冊(/つ)2,000円の時、取引量は100ですが、需要曲線の傾きが異なっています。この時、どちらとも2,000円なので1%は20円になります。しかし需要曲線の傾きは異なるため、ケーキの場合は1個の価格が20円下落すると、需要量は4個増加します。
他方、専門書は1個の価格が20円下落すると、ケーキの場合とは異なり需要量は4/3個増加します。今、4/3個増加すると言いましたが、需要の価格弾力性は以下の公式を使って求めることができます。
需要の価格弾力性計算方法
※△Q/△Pは需要曲線y=ax+bの傾きaの逆数
P,Qは元々の(基準となる)価格と数量
まず、需要の価格弾力性は「価格が1%変化した時に需要量が何%変化するか」なので、需要量の変化率を価格の変化率で割ります。簡単な例を使うと例えば価格が5%下落したときに需要量10%増加した時、需要量10%を価格の下落5%で割ると、価格の下落1%あたり需要量は2%増加していると分かります。
変化率とは、基準となる値からどれだけ増えたか(/減ったか)を表しているため、例えば元の価格が100円で110円に値上げした時、10円分増えたため変化率は10円/100円=0.1(=10%)となります。弾力性を求める公式では、それぞれ変化率を用いて考えます。
公式を見ると分かるように、変化率の式を分解して△Q/△Pという形を導出していますが、これは需要曲線の傾きの逆数を表しています。逆数とは2/3なら3/2、4なら1/4というような変形のことです。
最後に、なぜ(-1)を掛けているかですが、これは通常価格変化と需要の変化が逆向きに変化するためです。どういうことかというと、値下げしたら需要量は通常増加し、値上げしたら需要量は減少します。このように負の相関関係があるため(-1)を掛ける処理を行っています。
実際に需要の価格弾力性の公式を使うと?
では実際に公式を使ってケーキの需要の価格弾力性を求めてみたいと思います。元々の価格が1つ2000円だとして、ケーキの需要曲線y=-5x+2500だとしたとき、公式に当てはめると以下のようになります。
公式を見ても分かるように、1%価格が減少(20円の減少)すると4個需要量が増加していることが分かると思います。
次に、専門書について「需要の価格弾力性」は公式を使って求めてみたいと思います。ちなみに、専門書の需要曲線はy=-15x+3500だとします。
上記の計算結果より、専門書の需要の価格弾力性は4/3になりました。ケーキの需要の価格弾力性と異なり、専門書の需要の価格弾力性は小さくなっていますが、これは3%(60円)価格が下落してようやく4冊需要量が増加することになります。このように専門書など需要の価格弾力性が低い財は、価格を下げても需要量の増加の伸びが大きくないことがあります。
今回は異なる財を使って同じ価格の時の需要の価格弾力性の違いについてみていきましたが、同じ財でも価格の違いによって弾力性が異なることがあります。次回は、その違いについてみていきたいと思います!