産業連関分析とは?-公務員試験マクロ経済学
こんにちは、先輩!最近公務員試験のためにニュースをチェックしているのですが、ニュースで時々経済波及効果って用語がよく出てきました。ただ、経済学部なのに具体的にはよく分からないんですけど、先輩は既に習いましたか?
こんにちは、カズ。私は経済波及効果について既に勉強しているよ。頻出ではないけど、公務員試験でも出てくるよ。ただ、試験では、経済波及効果という用語で出題されるというより、産業連関表というものを使って出てくるかな。
産業連関表ですか…?僕はまだ勉強してないのでさっぱりです…。
そうだったんだね。実際に経済波及効果を分析するには、何百もの財・サービスが記載されている産業連関表を使うけど、公務員試験では2つの財だけを使った表を活用するよ。今日はしっかりと産業連関分析について理解できるようにしよう!
産業連関表とは?
公務員試験で産業連関分析に関する問題が出題される場合には、ほとんどの場合で計算問題になりますが、実際に解き方を学ぶ前に産業連関表について少し紹介したいと思います。総務省のHPによると、産業連関表とは、「一定期間(通常1年間)において、財・サービスが各産業部門間でどのように生産され、販売されたかについて、行列(マトリックス)の形で一覧表にとりまとめたもの」になります。産業や財・サービス間のつながりがまとめられており、経済波及効果や、産業連関表を応用して環境負荷なども分析することができます。
具体的にどういうことかというと、例えば自動車が一台生産・購入されるとします。自動車を製造・販売するまでにタイヤや窓、ワイパーなど様々な部品が必要になりますが、それらは一つの会社が全て作っているわけではなく、色々な会社が原料を調達し、製造することによって完成します。そのような産業間の繋がりを金額で示しているのが産業連関表になります。
[出典]「総務省 平成23年(2011年)産業連関表」
上記の表は一枚でまとめられていますが、国の産業連関表では、実際には何百部門もの財・サービスに分けられているため、膨大な統計データになります。また、国だけではなく、各都道府県や規模の大きな市も地域内の産業連関表を公表しています。そのため、規模の比較的大きな市や都道府県庁で働きたいという受験生にとっては、試験のためだけでなく入庁後に触れる可能性もあるため、覚えておいて損はないと思います。
産業連関表の計算方法は?
公務員試験対策のためであれば、ここからが重要になってきます。公務員試験では、現実の産業連関表を用いて計算するということはありません。公務員試験では、産業の数を2部門に限定した産業連関表を使って計算することが多くあります。それでは、以下の例を使ってみてみましょう。
|
中間需要 |
最終需要 |
総産出額 |
||
A産業 |
B産業 |
||||
中間投入 |
A産業 |
10 |
20 |
70 |
100 |
B産業 |
40 |
100 |
60 |
200 |
|
付加価値額 |
50 |
80 |
|
||
総投入額 |
100 |
200 |
単位:億円
産業連関表は「横」と「縦」という2方向から表を見れるようになることが必要です。まず表を「横」から見ることで、それぞれの産業が生産したものに対して、誰がどれだけ購入(需要)したかを表します。下記の表の緑で囲んだ枠を見てみてください。A産業の総産出額は100億円ですが、その内訳を見てみると、A産業自身で10億円、B産業が20億円、最終需要は70億円となっています。同様に、B産業を見てみると、
図:産業連関表を横から見た場合
次に、表を「縦」から見たときですが、これは、それぞれの産業が生産に際してどこからどれだけ材料を購入したかを表します。例えば以下の表の緑で囲んだ枠を見てみると、A産業は総産出100億円分を生産するために、A産業自身から10億円分、B産業から40億円分材料を購入していることが分かります。
図: 産業連関表を縦から見た場合
ここで「付加価値額」って何?と疑問に思う方もいるかもしれません。付加価値のイメージとして一番分かりやすいのが、「利益」です。A産業の例で言うと、総産出額100億円が売上で、100億円売り上げるために生産にかかったコストが縦からみた50億円の部分になります。この時、50億円分の差があるのが分かると思いますが、これは利益と似ていますよね。つまり、総産出額(=総投入額)から中間投入の合計を差し引いた残りが付加価値額となります。
投入係数とは?
また、出題時には、投入係数と呼ばれるものが併せて出てくることがあります。投入係数とは、「総投入に対する各部門への投入の割合」を表しており、式にすると、「投入係数=投入額/総投入額」となります。先ほどの表において、各投入係数は以下のようになります。
|
中間需要 |
最終需要 |
総産出額 |
||
A産業 |
B産業 |
||||
中間投入 |
A産業 |
0.1 |
0.1 |
|
|
B産業 |
0.4 |
0.5 |
|
|
|
付加価値額 |
0.5 |
0.4 |
|
||
総投入額 |
|
|
例えば、A産業がA産業自身の財を購入した場合の投入係数は10/100=0.1となります(左上の緑色数値)。また、A産業がB産業の財を購入した場合の投入係数は40/100=0.4となります(黄色数値)。投入係数を見ると、財1単位の生産に対し、各部門どれほど材料を買っており、付加価値の割合はどれほどかが分かります。この投入係数を用いて、一番初めの表の数値を穴埋めさせる問題もよく出るので、投入係数もしっかりと理解しておきましょう!
[参考]
・総務省「産業連関表とは 第1部 特集 データ主導経済と社会変革」(2020年9月14日参照)