労働法って一体何?その体系は?-公務員・行政辞典
今僕の友達の中に人事として働いている人がいるのですが、職場のパートの方に「労働法違反だ!」って人事部に来られたようで、対応に苦慮したそうです。
そうなんだ、それは友達も大変だったね。
はい。ところで、話を聞いていて「労働法」って言葉が何度も出てきたのですが、労働法が何かよく理解できていなくてあまり話についていけませんでした。「労働法」って一体なんなのでしょうか?
そうだったんだね。実は労働法っていう特定の法律があるわけではなくて、労働に関係する色々な法律の総称を言うよ。それじゃあ今日は、労働法の全体像についてイメージできるようにしよう。
労働法って一体何?
世間一般的に使われている労働法という言葉ですが、実際には労働法という法律それ自体はありません。労働法というのは、実は雇用契約や労働組合など労働に関連する法律や条文などの総称のことです。
労働法は法律や条文の総称と言いましたが、皆さんに馴染みの深い憲法や民法の条文の一部も労働法に密接に関わってきます。例えば、憲法の条文を見てみてみましょう。
憲法27条や28条のように直接的に労働に関わる部分や、14条のように間接的に労働に関わる条文が憲法にはあります。憲法は日本の法律体系のトップにくるものであるため、憲法の定めに従って個別具体的な法律が制定されます。また、民法には私人間の契約に関する様々なルールが規定されていますが、民法にも労働に関わる規定があります。
623条:雇用
624条:報酬の支払い時期、履行の割合に応じた報酬
625条:使用者の権利の譲渡の制限等
626条:期間の定めのある雇用の解除
627条:期間の定めのない雇用の解約の申入れ
628条:やむを得ない事由による雇用の解除
629条:雇用の更新の推定等
630条:雇用の解除の効力
631条:使用者についての破産手続の開始による解約の申入れ
規定の詳細については、実際の法令を見てもらえればと思います。実際の雇用契約の中で色々なケースがあり、憲法や民法の労働の規定だけでは対応できないケースがほとんどです。そこで労働に関する様々な具体的な法律が制定されています。
憲法や民法の労働に関する規定も労働法の一部と考えていいと思いますが、憲法や民法の下に具体的な労働法があります。それらの労働法によって現場での様々なケースに具体的に対応できるようになっています。
労働法って具体的にどのような法律?
先ほど労働法の一例として労働基準法や労働組合法などが図表に出てきましたが、実際にはもっと多くの法律があります。労働に関する法律はたくさんあるので、それらの分類方法はいくつかありますが、その中の一つとして以下のような分類方法があります。
上記の分類では、①労働者の労働条件を一定水準以上に確保するための労働基準法とそれに関連する法律、➁労働組合の定義や活動についてルールを規定する労働組合法とそれに関連する法律、③労働争議の解決のためのルールを定めた労働関係調整法とそれに関連する法律、の3つに大別されています。最近は労働組合に加入する若手社員も少なくなっているようなので、➁や③については馴染みが薄いかもしれません。一方で、①の労働基準法は最低賃金を定めた最低賃金法や、育休や介護休業などを定めた育児・介護休業法など仕事をするうえで馴染み深いものが多いと思います。
①労働基準法と関連法令
まず一つ目は、労働基準法とその関連法令など労働者の労働条件を一定水準以上に確保するための法律群になります。これらの法律群は、憲法の生存権や法の下の平等など、人々が文化的な生活を送れるようにするために、労働契約の自由を制限する法律です。
上記は関連する法令の一例ですが、最低賃金法などのように労働者と雇用者の契約に介入する法律であったり、労働安全衛生法などのように、より良い労働環境づくりを企業に促したりするなど、労働者に直接的にかかわってくる法律になります。
➁労働組合法と関連法令
二つ目は、労働組合法とそれに関連する法律になります。会社全体の待遇を良くするためには、労働者が一人で訴えても雇用者との力関係のために改善されないことがあります。そこで法律で労働組合というものを認め、団体で交渉する権利を付与しています。
労働組合法は、憲法28条の団結権や団体行動権を具体化するための法律と言えます。労働組合と言うと変な人たちというマイナスなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、特別休暇の日数や賃金を上げるための交渉など労働者の立場になって交渉を行ってくれています。そのような交渉の権利を確保するために労働組合法などが制定されています。
③労働関係調整法と関係法令
三つめは、労働関係調整法とそれに関連する法律になります。これらの法律は、労働者と雇用者の交渉がまとまらずに争議行為が生じた場合の、解決のためのルールになります。
労働関係調整法、個別労働紛争の解決の促進に関する法律、労働審判法、特定独立行政法人等の労働関係に関する法律、地方公営企業法等の労働関係に関する法律
労働争議の解決について、原則は当事者間で解決することが求められます。しかしながら、当事者間で解決することができない場合、労働委員会による「斡旋」「調停」「仲裁」という3種類の手続きを定めています。