労働関係調整法って一体どんな法律?-公務員・行政辞典
先日県庁に勤めている友人が労働委員会に異動になったのですが、法律や業務など新しいことを覚えないといけないらしくて大変そうでした。
公務員は異動になると全く新しい分野で業務を行わないといけなくなったりするから、異動のたびに新しいこと覚える必要あって大変だよね。
そうですね。その友人なのですが、今勉強していることを聞いて見たら、労働基準法や労働関係調整法と言った労働法に関する法規を勉強していると言っていました。労働関係調整法は僕もはじめて聞いたのでよく分からなかったですが、労働関係調整法ってどう言った法律なのでしょうか?
労働関係調整法は労働組合と使用者の間の紛争の調整のための法律になるんだけど、組合の人とか人事や経営者にとっては、理解しておくべき法律になるよ。今日は労働関係調整法について全体像を理解できるようにしようか。
労働関係調整法とは?
ニュースや職場など様々な場面で「労働法」という用語を聞いたことがある方も多くいると思います。しかしながら、日本には「労働法」という名称の法律は存在しません。「労働法」とは、労働条件や労働契約、労使紛争など労働に関わる様々なルールを規定した各法律の総称を言います。
労働法は大きく3つに分類できますが、今回のトピックである「労働関係調整法」とは、労使間の争いを解決するために定められたルールのことを言います。本来であれば労使間による自主的な解決が一番望ましいですが、互いの利益のためにお互い譲歩できず、交渉が進展しないということがあります。そこで労働委員会と呼ばれる行政機関が労働組合と使用者との間に入って調整を行うためのルールや手段を規定しているのが労働関係調整法になります。
労働関係調整法の全体像
労働関係調整法は、附則部分を除いて全5章43条で構成されています。ただし、第4章が1と2の2つに分かれているため、実質的には6章分あります。
第1章の総則においては、労働関係調整法の目的や労働組合、使用者、政府の義務など一般的な事項が記載されています。第2章から第4章の2までは労働委員会による調整の具体的な方法について記載されています。そして最後の第5章では、争議行為が禁止される場合について記載をしています。
労働委員会による紛争の解決方法とは?
労使間の紛争が起きた際の労働委員会による解決手段としては「斡旋」、「調停」、「仲裁」と大きく3つの手段があります。まず「斡旋(あっせん)」とは、労働組合または使用者からの申立てによって開始される調整手段となります。「斡旋」はどちらか一方の申請によって開始可能であり、比較的簡単な方法であるため、「調停」や「仲裁」と比べて利用件数が多いです。「斡旋」が開始されると、労働委員会が労使の間に入り、互いの主張が折り合うよう交渉のあり方や内容について助言を行い、それによって解決を図ろうとする方法になります。
2つ目の手段として、「調停」があります。「調停」とは、労働委員会から選ばれた委員が調停委員会を組織して、当事者の主張を正したり、実情を把握して調停案を作成、提案することによって労使紛争の解決を図ろうとするものです。この調停案に労使が納得すれば解決となりますが、拒否した場合は不調となり、調停終了となります。
3つ目の手段は、「仲裁」になります。「仲裁」とは、労働委員会の公益委員からなる仲裁委員会に紛争の解決の判断が一任され、仲裁委員会の提案によって解決を図ろうとする方法になります。「調停」との大きな違いとしては、仲裁委員会の提案に対して当事者は拒否権がなく、それに従わなければならないという点になります。
緊急調整って一体何?
労働関係調整法第4章の2では、緊急調整について記載されています。ここで言う緊急調整とは、内閣総理大臣が発動する緊急措置のことを言います。例えば、公共事業におけるストや規模の大きい労働争議など国民生活に多大な影響を与えうる場合に総理大臣が発動するものになります。
総理大臣が発動することによって、50日間ストなどの労働争議をストップさせる効果があります。その間に、中央労働委員会が労使の間に入り、解決を図らせるというものになります。しかしながら、緊急調整が適用されたのは昭和37年のスト1度だけであり、それ以降は一度も適用されていません。今後発動する可能性はありますが、それでも可能性は薄いかと思われます。