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国際法における捕虜の定義とその取り扱いは?-国際法を分かりやすく

歴史について勉強していると、よく戦時中の捕虜の取り扱いの問題に関する記事や文献などを見るのですが、捕虜って捕まえた相手国の人全員のことを言うのでしょうか?

現実には様々なケースがあって誰が捕虜なのかって実際には難しい問題だけど、国際法上は戦闘員で捕まった人のことを言うよ。

一般住民で投降した人などは捕虜には含まないんですね~。ちなみに、近年のアフガンやISの捕虜や、戦時中の日本など度々捕虜の待遇に関して問題になることがありますが、国際的なルールなどはあるのでしょうか?

捕虜に関して言うと、1949年ジュネーブ第三条約(捕虜待遇条約)などに規定されているよ。国際法にも出てくるし、一般教養としても勉強になると思うから、今日は国際法上の捕虜の定義と取り扱いの規定について見ていこうか。

戦闘員と犯罪者の違いは?

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バルジの戦いで捕虜となったアメリカ兵(1944年12月)

[出典]goo Wikipedia捕虜

 

そもそも、元々殺傷破壊を行う戦闘員が敵国の権力内に陥った場合、捕虜となります。戦闘員の殺傷破壊それ自体は、武力紛争法という国際ルールに則ってなされる限り、法的責任は追及されず、通常の犯罪者とは区別されます。

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戦闘員と犯罪者の違い

このように法的責任を追及されないことを「戦闘員特権」といい、敵国に捕らえられた後も犯罪者ではなく、捕虜として保護されます。そのため、後述するような捕虜待遇条約のような国際ルールに従って捕虜を拘束した国は、捕虜を適切な手続や方法で保護する義務があるとされています。

 

 

戦闘員と一般住民への保護の違いは?

戦闘員ではない一般住民も戦闘員と同様に捕虜となるかですが、紛争当事国の権力内に陥った場合、一般住民は捕虜ではなく、国際法上「被保護者」という扱いになります。

 

もちろん、捕虜資格を得られないからといって保護されないのではなく、「被保護者」という扱いで保護されることとなります。「被保護者」の資格を得る一般住民は国際法上「文民」と呼ばれ、文民保護の内容は1949年ジュネーブ第四条約(文民保護条約)に規定されています。

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戦闘員と文民の保護の違い

文民保護については、捕虜への待遇以上に手厚い保護が求められます。例えば、戦禍に巻き込まれないようにするための消極的保護はもちろんのこと、宗教上の習慣の尊重や強制移送・労働の禁止など積極的保護も要求されます。

 

 

国際法上の捕虜の定義は?

戦闘員とは基本的に「アメリカ軍所属の軍人」や「日本軍軍人」など正規軍の構成員のことを言います。捕虜資格についてはじめて規定した国際ルールは、ハーグ陸戦条約附属規則(1899年、1907年)になります。

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ハーグ陸戦条約附属規則における捕虜資格

ハーグ陸戦条約附属規則において、正規軍の将校については特に条件を付けることなく捕虜資格を与えるとしましたが、正規軍の構成員ではない民兵義勇兵については、上記の4つの条件を満たす場合にだけ捕虜資格を認めました。

 

しかしながら、正規軍だけでは戦力を補うことができない国では、制服や標識をつけない非正規軍やゲリラなど現実には戦闘員や文民との区別が曖昧な人たちもいます。そこで、捕虜条約やジュネーブ諸条約第一追加議定書は、より多くの人々が適切に扱われるよう捕虜の定義を拡大しています。

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捕虜条約における捕虜資格の拡大

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ジュネーブ諸条約第一追加議定書における捕虜資格の拡大

近年では民族自決団体や正規軍と戦う反政府組織など戦闘の主体も多様化してきています。そのため、犯罪者としてではなく、捕虜として保護されるように捕虜資格が拡大されています。

 

 

捕虜待遇条約における捕虜取扱いのルールは?

具体的な捕虜の取扱いのルールについては、捕虜待遇条約の条文を見ると分かります。全て紹介することはできないので、今回は取扱いのルールについていくつかピックアップしてみました。

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例えば、上記は第25条の条文になります。捕虜が抑留される環境に関する規定や火災の予防措置など具体的な条件などが規定されています。さらに興味深いのは女性捕虜に対する待遇など、細かく規定しています。

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第28条は軍隊内の捕虜のための売店に関する規定になります。

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第38条は捕虜への娯楽や運動を行う機会の提供について規定されています。上記はあくまで一例ですが、捕虜条約は結構具体的な規定で国際法初学者でも理解しやすい規定なので、興味がある方は捕虜待遇条約で全文を見てみるといいかと思います。

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