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ナイフ=エッジ原理(不安定性原理)とは?-公務員試験マクロ経済学

こんにちは、先輩。先日経済成長の分野で「ハロッド=ドーマー・モデル」について勉強して、「ハロッド=ドーマー・モデル」自体は理解できました。

こんにちは、カズ。「ハロッド=ドーマー・モデル」は理解するのなかなか大変だから、理解できて良かったね!

ありがとうございます。これも先輩のおかげです。ただ、「ハロッド=ドーマー・モデル」の範囲で、「不安定性原理」というものも出てきたのですが、こちらは全く分かりません…。

「不安定性原理」かー。別名「ナイフエッジ原理」とも呼ばれる原理だね。確かに字面だけだと何を言っているかわかりにくいよね。

そうなんですよ。

公務員試験で「ナイフエッジ原理」の計算問題自体は出題されないけど、択一問題とかで時々出てくるから、今日はどういう原理なのか理解できるようにしようか。

均斉成長条件とは?

まず、「ハロッド=ドーマー・モデル」を学習したことのある方は思い出してほしいのですが、「ハロッド=ドーマー・モデル」では、一国で財やサービスを生産する際、資本Kと労働Lという2つの生産要素によって生産が行われると仮定し、その2つの生産要素がバランスよく投入されることで生産量、つまり国民所得が増加するという考え方になります。そして保証成長率Gwとは、資本Kと労働Lという2つの生産要素の内の資本Kの投入量に着目して、ある一定の必要資本係数v(ある生産に対してどれだけ資本の投入が必要かという割合を表した係数)の時に、適正な国民所得の成長率はいくらかを表したものとなります。

 

ハロッド=ドーマー・モデルでは先述したように、「資本Kと労働Lをバランスよく投入する」という考え方があります。そのため、適切な資本Kの投入量を表す保証成長率Gwと労働Lの投入量(労働人口の成長率)を表す自然成長率Gnが同じであり、また、現実の成長率Gも同じである「均斉成長条件」の時が安定状態となります。

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均斉成長条件

 

  

ナイフ=エッジ原理とは?

しかし、何らかの事情で現実の成長率Gと保証成長率Gwが一致しない時にはどうなるのでしょうか?実はこの時、ハロッド=ドーマー・モデルでは時間がたてば均斉成長条件に戻るというわけではなく、現実の成長率Gと保証成長率Gwの差がさらに広がってしまうという考え方をとっています。これを「ナイフ=エッジの原理(不安定性原理)」と言い、現実の経済成長率Gと保証成長率Gwが一度乖離すると、両者はより一層乖離するという原理を表しています。

 

 

成長率が乖離する過程は?

では、なぜ現実の経済成長率Gと保証成長率Gwは一度乖離すると、より一層乖離するのでしょうか?以下では、その過程を見ていきたいと思います。

 

まず、現実の経済成長率Gが保証成長率Gwを上回っている場合には、どうなるでしょうか?現実の経済成長率Gとは、国民所得の変化率△Y/Yを表します。一方で、保証成長率Gwとは、貯蓄率sと必要資本係数vの比s/vです。この式を以下のように変形します。

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不安定性原理過程

加速度原理より、v△Yは企業が望ましいと考える投資水準I*となります。一方で、財市場の均衡条件よりsYは実際の投資水準Iとなります。今、企業が望ましいと思う投資水準I*が実際の投資水準Iを上回っているため、今期は投資が少なかったと判断し、来期の投資を増加させます。

 

すると、来期の国民所得Yも増加します。この時、例えば1億円投資した場合、国民所得も1億円のみ増加するわけではありません。乗数過程という効果によって、1億円以上国民所得は増加します。この時、保証成長率Gwは貯蓄率sと必要資本係数vが一定とすると、現実の経済成長率G=△Y/Yはさらに大きくなってしまいます。その結果、両者が乖離している状態では、より一層乖離してしまうという結果になってしまいます。

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不安定性原理図

反対に、現実の経済成長率Gが保証成長率Gwを下回っている場合には、来期の投資を減少させるため、現実の経済成長率Gは下に乖離していってしまいます。このように、現実の経済成長率Gと保証成長率Gwが一度乖離してしまうと調整するのが困難になってしまう様子を、ナイフの先端(エッジ)でバランスをとるのが難しいことになぞらえてナイフ=エッジ原理と言います。

 

 

最後に

以上のように、市場の原理で政府が介入しないと現実の経済成長率Gが保証成長率Gwはより乖離してしまう可能性があります。そこでケインズ派は、定常状態、つまり最適な経済成長のためには政府の介入が必要とし、政府の介入の必要性を主張しました。この点は公務員試験の択一でも出てくるので、頭の隅に置いていくといいと思います。

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