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地方債と協議制度-公務員試験財政学

こんにちは、先輩。最近財政に関するニュースを見ていた時に、よく国債という言葉をよく聞くのですが、国があるということは地方公共団体が発行する債券もあるのでしょうか?

こんにちは、カズ。しっかりとニュースをチェックしていて偉いね。確かに地方公共団体が発行する地方債と呼ばれる債券もあるよ。国と違って各地方公共団体が発行することになるから、地方債が乱用されないよう協議制度と呼ばれる制度も整っているのだけど、国債との違いは公務員試験でポイントになってくるから、今日は地方債についてマスターできるようにしよう!

地方債とは?

地方債とは、地方公共団体が資金調達のために発行する債務証書や証書借り入れのことを言います。その返済は一会計年度を超えて行われます。通常、地方公共団体は、何かを支出する際、地方債以外の歳入によって賄う義務があります(地方財政法第5条)。しかしながら、以下の項目のような大規模事業を行う場合においては、世代間の公平を図る観点からも地方債の発行が認められます。

 

地方債の発行が認められる対象

1.公営企業に要する経費(交通事業、ガス事業、水道事業等)

2.出資・貸付金

3.地方債の借換えに要する経費

4.災害対応・復旧・救助の事業費

5.建設事業関連費(学校や道路、保育所、河川の補修など)

 

例えば建設事業など上記の事業は、現役世代だけではなく、将来世代も公共サービスを享受できます。そのため、地方債によって返済時期を後ろ倒しにすることによって、租税負担を将来に移転しています。

 

令和2年度の地方財政計画における歳入を見てみると、地方債という項目があるのがわかると思います。地方財政計画はあくまで見込みではありますが、今年度は9.3兆円になると見積られています。また、地方債の項目の下の部分に「臨時財政対策債」とありますが、これは地方財政法第5条の特例として発行される赤字地方債になります。

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令和2年度地方財政計画歳出歳入の概要

[出典]総務省令和2年度地方財政計画のポイント

臨時財政対策債」とは、本来建設事業等でしか発行できなかった地方債を、地方公共団体の基礎的な財政収支のマイナスを埋めるために発行するモノになります。本来は、会計年度内に支出するものであるので、同じ年度の歳入で賄わないといけません。しかし、昨今の地方の財政状況の厳しさから、基礎的な運営のための財源すらも足りなくなってきている地方公共団体があるため、地方財政法第5条の特例として、「臨時財政対策債」が認められることとなりました。

 

 

協議制度とは?

次に、地方公共団体はどのように地方債を発行するのかについて見ていきたいと思います。実は2006年度に施行された地方分権一括法により、その前後で地方債発行の際のプロセスが変わりました。

 

まず、地方分権一括法が施行される前までは、原則的に国または都道府県の許可が地方債発行には必要でした。しかし、地方分権一括法により、総務大臣または都道府県知事と協議を行えば、原則として国または都道府県の同意がなくても地方債を発行できるようになりました。これを地方債における「協議制度」と言います。つまり、協議さえ行えば、同意はえらなくとも地方債を発行できるということになります。

 

しかし、この「協議制度」は、以下のような地方公共団体(許可団体と呼びます)には適用されないとされています。

 

許可団体とは

1.実質赤字による許可団体

2.実質公債費比率による許可団体

3.不適正行為による許可団体

4.資金不足比率による許可公営企業

5.標準税率未満による許可団体

 

上記の許可団体は、地方債発行の際、総務大臣または都道府県知事の許可を受けなければならないとされています。

 

1.実質赤字による許可団体

実質赤字とは、「(歳入総額-歳出総額)-翌年度に繰り越すべき財源」の赤字額のことを言います。前年度の実質赤字比率(=実質赤字/標準財政規模)が、道府県は5%、市町村は20%に達している場合には、財政再建計画を作成して財政再建団体となる必要があります。しかし、財政再建計画を作成しない場合には、起債制限団体になってしまうため、許可団体として地方債の発行すらも行えなくなります。

 

2.実質公債費比率による許可団体

実質公債費比率(当該年度前3か年の平均)が18%以上の場合、許可団体となってしまいます。実質公債費比率とは、財政負担における公債費の割合を表したもので、総務省によると以下のように算出されます。

 

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実質公債費比率

[出典]総務省健全化判断比率の算定

 

実質公債費比率が25%以上の団体は、原則的に起債制限団体となってしまいます。ちなみに、総務省の「平成30年度地方公共団体の主要財政指標一覧」によると、北海道が20.9%で都道府県の中では一番高い比率となっています。また、市区町村を見ると、北海道夕張市が71.8%と他を圧倒する比率になっています(ちなみに2位は奈良県河合町で21.1%)。

 

3.不適正行為による許可団体

不適正行為による許可団体とは、元利償還金の支払い遅延や、過去における支払い遅延、協議をせずもしくは許可を受けず起債を行ったり、あるいは虚偽記載等不正を行った団体のうち総務大臣が指定した団体のことを言います。

 

4.資金不足比率による許可公営企業

繰越欠損金を有する地方公営企業などが該当します。

 

5.標準税率未満による許可団体

普通税の税率が標準税率未満の団体が該当します。

 

 

最後に

今回は、地方債について基本的な部分について紹介してきました。地方自治体の職員になると、はじめのうちは財政の知識等が必要ない窓口部署などで業務を行うことも多く、若いうちは知っている必要はないかもしれませんが、年次が上がるにつれて、予算や議会対応などで活用する知識になると思います。今のうちからしっかりと理解できるようにしましょう!

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