憲法が規定する受益権(国務請求権)とは?-公務員試験憲法を分かりやすく
昨日憲法の授業で、「請願権」という用語が出てきました。「請願権」って日常生活でも聞きなれない言葉で、何だか難しそうに感じてしまったのですが、どういう権利なのでしょうか?
請願権は、国や地方公共団体に対して要望を言ったりする権利になるんだけど、他の基本的人権の保障をより強固にするために保障されている権利になるよ。請願権は受益権の一つとされていて、重要な基本的人権の一つになるよ。公務員試験では他の人権に比べると出題頻度は下がるけど、覚えておくべき内容にはなるから、今日はしっかりとマスターできるようにしよう!
受益権(国務請求権)とは?
日本国憲法が規定する基本的人権は、自由権や社会権など様々な権利を規定していますが、それら以外の権利として受益権(国務請求権)と呼ばれる権利もあります。受益権(国務請求権)とは、人権保障をより確実なものとするために認められた権利であり、①請願権(16条)、②裁判を受ける権利(32条)、③国家賠償請求権(17条)、④刑事補償請求権(40条)という4つの権利のことを言います。
請願権とは?
請願権とは、国民が国や地方公共団体に対して自身の希望や要望などを申し立てる権利を言います。日本国憲法は、個人の尊厳を守るために自由権や社会権など様々な基本的人権の保障を規定していますが、基本的人権の保障をより確実なものとするため、権利が侵害されている場合などに、国民が国家に意見を言うことができる体制が不可欠となります。このように国家に意見を言うことのできる権利を請願権と言います。
何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
憲法16条に規定されている請願権は具体的に請願法によって手続き等が定められています。請願を行うことのできる主体は、国民だけではなく法人や外国人も含まれます。また、請願法5条は請願を受けた機関が誠実に処理する義務を規定していますが、請願内容に応じた処理を行う義務自体はないとされています。
政府へ要望を行う権利である請願権は、現在では言論の自由の拡大や普通選挙の確率に伴い国民の政治参加手段が増加しているため重要度は減ってきています。しかしながら依然として不可欠の権利と考えられています。
裁判を受ける権利とは?
次に、憲法32条は以下のように裁判を受ける権利を規定しています。
何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
32条に規定される裁判所とは、最高裁判所と下級裁判所を指します。また、憲法32条の規定する裁判を受ける権利には以下のように2つの意味があるとされています。
国家賠償請求権とは?
憲法17条では、受益権の一つとして以下のように国家賠償請求権を定めています。
公務員の不法行為によって損害を被った時、国民は国または公共団体に賠償を求めることができます。詳しくは別のページで紹介していますが、ポイントとしては損害を与えた公務員に直接賠償請求をするのではなく、その公務員が所属する機関に請求するという点になります。
国家賠償請求権は、公務員が国民に対してお願いするような(強制的ではない)行政指導や勧告などの非権力的作用や、租税の賦課徴収や警察権の行使などの権力的作用にも適用されます。
また、国家賠償請求権について具体的には国家賠償法という法律に規定されていますが、上記のようなケースで損害賠償請求が認められているとされています。
刑事補償請求権とは?
憲法40条は受益権の一つとして以下のように刑事補償請求権を規定しています。
何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。
憲法40条は、無罪の裁判を受けた者を救済する規定になります。特に条文上にも規定されているように、拘留や拘禁など身体の自由を制約された場合に刑事補償を受けることができるとされています。ただし、通説では身体を拘束されたが、起訴されずに釈放されば場合には、本条の適用はないとされています。