生産関数と費用方程式とは?-公務員試験ミクロ経済学
先輩、こんにちは!すいません、ミーティングに来るの遅れてしまって。
こんにちは、カズ。大丈夫だよ。
あれ、今はどんな話をしているんですか?
今はこのサークルでお世話になっている地域の特産物を使って地域活性が出来ないかをアイデアを考えていたところだよ。
なるほど。これまでどんなアイデアが出たんですか?
いくつか出てるけど、一つは地域にある酒造の日本酒を大学のお祭りで販売するのはどうかって案だよ。
なるほど~!あ、でももっとたくさん売るために酒屋さんとかに話を持ち掛けに行くとかだとダメなんですか?
うーん、大量生産出来るならそれでいいかもしれないけど、地域にある酒造はそれほど規模が大きくないから今は難しいかな...。
それなら、酒造の中の設備をもっと大きくして大量生産出来るようにするとか!
うーん、費用が高くなるから難しいというのもあるし、もし設備を大きくしても、それを管理する従業員がさらに必要になってくるよね。でも、ここの地域では住んでる人が少ないし、新たに従業員を募集しても応募が多く来ると思う?
そうですね…。かなりの高齢地域なので募集しても人が集まらないかもしれないですね…。
そうそう。これって、ミクロ経済学の生産者理論で出てくる「生産関数」の考え方と同じ考え方なんだよ。今ちょうどミーティングは休憩時間だし、公務員試験でもよく出てくる範囲だから、生産者理論の「生産関数」と「費用方程式」について勉強しよう。
生産関数(等量曲線)とは?
そもそも、「生産者=企業」は何を目的として設立されているのでしょうか?一般的には、どの企業にも共通する目的の1つとして「利潤=もうけ」を大きくすることが挙げられます。そこでミクロ経済学では、企業は「利潤最大化」を目指すことを目的として行動するという前提に立って、様々な分析において企業を登場させています。
では、「利潤」とはどのように求めればよいのでしょうか。企業はモノやサービスを販売すると、消費者から商品の代金=「売上」を得られます。「売上」は「生産量×価格」で求めることができ、「利潤」を算出するうえで重要な指標になってきます。
しかしながら、モノやサービスを提供する際には、原材料費や人件費など「費用」がかかります。そのため、「売上」から「費用」を差し引いた額を「利潤」としており、「利潤」が最大となるように企業は生産量を決定します。
費用は先述したように、従業員などを雇うための人件費や、モノを作るための設備費、原材料費など様々な費用が存在しますが、ミクロ経済学の一番簡単な生産者理論では、人件費などに関連する労働投入量と、設備費用に関連する資本投入量の2つで生産できると仮定して分析を進めます。
・利潤を最大にするために、費用を最小化して生産量を出来る限り多くする
・一番単純化した生産者モデルでは、労働投入と資本投入で財を生産できると仮定
下記のように労働投入量(L)と、資本投入量(K)を横軸と縦軸にとって書いた右下がりの曲線を生産関数と言い、等量曲線とも言います。
なぜ等量曲線というかと言うと、等量曲線上の労働投入量と資本投入量の組み合わせの時は、生産量が等しいとしているため、等量曲線と呼ばれています。例えば、グラフ上の「労働投入量5人、資本投入量10台」の組み合わせの時の日本酒の生産量500本だとすると、「労働投入量10人、資本投入量5台」の組み合わせの時も生産量が500本で同じということになります。
生産関数は、ミクロ経済学の消費者理論で勉強する効用曲線と似ています。考え方は同じで消費者にとっては効用を大きくしたい、つまり効用曲線を右上にシフトさせたいという考え方だったのが、生産者理論では等量曲線を右上にシフトさせたい、つまり生産量を多くして利潤を多くしたいという考え方になっています。
図:等量曲線のシフト
上図のように、「労働投入量5人、資本投入量10台」の組み合わせや、「労働投入量10人、資本投入量5台」の組み合わせの時に比べて右側の等量曲線上にある、「労働投入量10人、資本投入量15台」の組み合わせの時の方が、生産量は高いことを示しています。
費用方程式(等費用線)とは?
以上のように、ミクロ経済学では企業の生産量は等量曲線を使って表現します。しかしながら、生産者(/企業)は利潤最大化のために、財を生産する際にかかる費用も気にしないといけません。そこで生産者理論でも、消費者理論で使った「予算制約線」と同様に生産するときにかかる費用を等費用線を使って表現します。
予算制約線の時と同じように、等費用線上であれば資本投入量(K)と労働投入量(L)の組み合わせの時の合計の費用は同じになります。そして、この等費用線を式で表すと、以下のような「費用方程式」となります。
※TC;Total Cost(総費用)のこと。
r;設問では要素価格と言われることが多いが、利子率と言われることも。
費用方程式では、労働部分の賃金として支払う費用と、設備などの資本投資に支払う費用を合計した総費用(TC)を導出します。ここで出てきたwとrの賃金率、利子率についてですが、L(労働投入量)とK(資本投入量)はそれぞれの生産要素の投入量を示しています。
そのため、wの賃金率は、1労働投入量(1人)に対してどれだけ費用が掛かるかのことで、rの利子率は1資本投入量に対してどれだけ費用が掛かるかを示しています。wとrは設問において「要素価格」と呼ばれたりするので、注意が必要です。
ここで、利子率rについての補足ですが、例えば、何かを生産するために100万円の機械を購入するとします。その時、自分の貯金が足りなければ銀行から借りますが、借金の返済時には利子分も返済しなければいけません。利子率とは、そのような利子率分を表しています。
なお、等費用線も「費用方程式」を用いて計算で求めることが出来ます。
どちらの組み合わせも同じ等費用線上にありますが、上記の計算のように、同じ等費用線上にある組み合わせは総費用が同じになります。このように、消費者と生産者という立場は異なりますが、消費者理論の時とやっていることはほとんど同じになります。