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憲法の規定する人身の自由ってどういう意味?-公務員試験憲法を分かりやすく

最近北朝鮮の収容所に関するニュースを見たのですが、不当に捕まえた人に対して拷問したりとかしていて本当ひどいですね…。でも日本でも昔はそういった拷問とかが普通に行われてたと聞きました。実際、日本ではいつからそういった拷問とか不当逮捕がなくなったのでしょうか?

日本では、明治憲法下においては人身の自由を不当に制限するような逮捕や拷問とかが行われていたんだけど、戦後日本国憲法ができてからは、過去の反省から人身の自由をしっかりと保障するようになったんだよ。公務員試験では出題は多くない部分ではあるけど、それでも出題されることはあるから、今日は「人身の自由」について勉強していこうか。

人身の自由とは?

日本国憲法に規定される基本的人権は、①自由権、➁社会権、③参政権、④その他の権利と大きく4つに分類することができます。

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基本的人権の種類

その中でも①の自由権とは、個人に対する国家の介入を排除する「国家からの自由」を規定しており、人権保障の考え方が確立した当初から現代に至るまで、人権体系の中心的地位を占める権利になります。①の自由権は、①精神的自由、➁経済的自由、③人身の自由に分類されます。

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自由権の分類

今回紹介する人身の自由は、上記のように自由権の一つとして分類されます。人身の自由とは、不当な逮捕や監禁、拷問など人身に対する不当な迫害からの自由を言い、「身体の自由」と言われることもあります。冒頭でも少し話しましたが、明治憲法下では、政府による不当な逮捕や拷問が制限されておらず、人身に対する不当な迫害がまかり通ってしまっていました。そこで、日本国憲法では、戦前の反省を踏まえて、以下のような体系で人身の自由を保障しようと試みました。

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憲法における人身の自由の全体像

まず、日本国憲法では、憲法18条や31条で人身の自由それ自体について規定を置いています。そしてさらに、人身の自由の規定をより確実にするために、逮捕時の被疑者の権利や被告人の権利を33条から39条の間で規定しています。以下、それぞれ具体的に見ていきましょう。

 

 

憲法18条における奴隷的拘束・苦役からの自由とは?

憲法18条では、以下のように奴隷的拘束・苦役からの自由を規定しています。

憲法18条

何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

18条に規定される「奴隷的拘束」とは、人間の尊厳に反する身体の拘束のことを言います。これは例えば、人身売買や、タコ部屋での強制労働などが奴隷的拘束に当たります。また、「意に反する苦役」とは、本人の意思に反して強制される強制的な労務のことを言い、徴兵制については、日本国憲法では徴兵義務を規定していないため、意に反する労務として、禁止されています。

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憲法18条の意味

「奴隷的拘束」については絶対的に禁止され、公共の福祉による制約もしてはならないとされています。一方で、「意に反する苦役」については犯罪による処罰の場合など例外が認められています。

 

 

憲法31条における適正手続きの保障とは?

また、憲法では国家による刑罰権行使の濫用を防ぎ人身の自由を保障するため、憲法31条で以下のように法定手続の保障についても定めています。

憲法31条

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

憲法31条の条文だけ見ると、法律で手続きが定められていることのみ規定しているように見えますが、通説では、以下4つのことについて規定していると考えられています。

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憲法31条の内容

図上の「手続きの法定」と「手続きの適正」についてですが、まず人身の自由を保障するためには、手続きという過程に関する法律が明確かつ適正に定められている必要があります。例えば、二つ目の「手続きの適正」について、公権力が国民に刑罰その他の不利益を科す場合、当事者にあらかじめその内容を告知し、弁解と防御の機会を与えなければならないという「告知と聴聞を受ける権利」が保障されています。

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手続きと実体の関係

一方で、「実体の法定」と「実体の適正」についてですが、「実体」とは「権利や義務」そのものを言います。具体的には、学問の自由や思想・良心の自由など具体的な権利義務のことを言います。憲法31条の文言は直接的には法律の手続きについて規定していますが、そもそも手続きの前提となる具体的な権利義務も法律で適正に定められている必要があります。そうでないと、公権力が恣意的に「○○という権利は基本的人権ではないから保障する必要はない!」として、基本的人権が侵害されかねないからです。

 

そのため、憲法31条では、「手続きの法定」、「手続きの適正」、「実体の法定」、「実体の適正」という4つを保障していると考えられています。

 

 

刑事裁判手続きに関する規定(33条~39条)

18条と31条は、人身の自由の基本的原理を定めていました。一方で、33条から39条は、刑事裁判手続きについてのルールを規定しており、「被疑者の権利」と「被告人の権利」の2つに分類することができます。

刑事裁判手続きの保障

1.被疑者の権利(33~35条)

2.被告人の権利(37~39条)

被疑者の権利(33~35条)

被疑者の権利とは、捜査過程における被疑者の人権を確保するための規定になります。

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被疑者の権利

被疑者の権利を規定する33~35条では、①不当な逮捕からの自由、➁不当な抑留・拘禁からの自由、③住居の不可侵について規定しています。被疑者というのは「罪を犯した疑いがあるが、まだ起訴されていない者」のことを言います。罪を犯した確証はない状態の人たちであるため、不当な逮捕や扱いがされないよう憲法で保障されています。特に、現行犯逮捕など緊急の場合を除き、逮捕や家宅捜索などの場合には「令状主義」の原則が適用されます。

 

被告人の権利(37~39条)

次に、37条から39条では、被告人の権利を定めています。被疑者とは異なり、被告人とは「証拠十分として起訴された者」を言います。しかしながら、罪を犯した確証があるからと言って、不当に扱ってよいわけではありません。そこで憲法では、公平な裁判を確保するため、以下のような規定が置かれています。

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被告人の権利

公務員試験では各条文について詳細に出題されることはないので、細かく覚える必要はなりと思いますが、37条1項の公平な・迅速な公開裁判を受ける権利や38条の黙秘権、自白強要からの自由については択一で出題されることがあります。

憲法37条

①すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

➁刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。

③刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

憲法38条

①何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

➁強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。

③何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

憲法37条1項では、刑事裁判上の手続に関する権利を規定しています。

刑事裁判上の手続きに関する権利

1.公平な裁判所の裁判

2.迅速な裁判

3.公開裁判

つまり、被告人は①公平な裁判所で、➁迅速かつ③公開された裁判を受けることが保障されているとなります。3つの要件については試験では問われやすい部分になります。

 

次に、憲法38条では、黙秘権や自白を強要されない自由が規定されています。黙秘権については日常でも聞いたことがあると思いますが、38条2,3項の「自白強要からの自由」では、「自白排除の法則」と「補強証拠の法則」について規定しています。

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自白強要からの自由

まず、「自白排除の法則」とは、拷問や長期間の抑留など不当な方法によって得られた自白は、証拠とすることができないというルールです。一方で、「補強証拠の法則」とは、自白だけで有罪とすることを禁止するルールです。自白に対してしっかりとした証拠があって初めて有罪とできるという考え方になります。

まとめ

・人身の自由とは、不当な逮捕や監禁、拷問など人身に対する不当な迫害からの自由を言う。

・人身の自由は、基本原理と手続きに関する規定に分類される。

・刑事裁判手続きの規定は、被疑者の権利と被告人の権利に分類される。

両議院の国政調査権と司法権との関係-公務員試験憲法を分かりやすく

以前憲法の講義で、議院の権能として国政調査権というものがあるということについて先生が触れていたのですが、国政調査権って実際にどういうものなのでしょうか?

疑問を持ちながら講義を聞いていて偉いね。国政調査権は議院に認められている特別な権能の一つになるよ。公務員試験では特に、司法権や検察権との関係についてもよく出題されるから、体系的に覚えられるようにしよう!

国政調査権とは?

憲法では、衆議院参議院の両議院に等しく与えられた権能として以下のような権能を規定します。

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両議院が持つ権能

公務員試験レベルでは、これら全てを覚える必要はありません。しかしながら、下から3つ目の憲法62条国政調査権は、憲法41条の「国権の最高機関」の解釈と関係して出題頻度が高いです。

憲法62条

両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。

国政調査権とは、上記のように国会に与えられた権能を円滑に行使するにあたっての調査の権能になります。また、条文からもわかるように、純粋な調査だけでなく証人による証言や記録の提出を要求することができます。

 

 

憲法42条と国政調査権の性質

次に、国政調査権を行使できる範囲ですが、これは憲法42条の「国権の最高機関」という文言の解釈の仕方によってそれぞれ行使できる範囲が異なってきます。憲法42条では、「国会は国権の最高機関である」と規定していますが、「国権の最高機関」の解釈について大きく「統括機関説」と「政治的美称説」の2つの考え方があります。

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国権の最高機関とは

それぞれの考え方について詳しくは「日本国憲法における国会に関する条文と国会の地位」という記事を見て頂ければと思いますが、統括機関説に立つと、国政調査権は国権統括のための独立の権能(独立権能説)と解することができ、広い範囲で国政調査権を行使できることになります。

 

一方で、政治的美称説に立つと、国政調査権立法権や予算審議件、行政に対する監督権など議院に認められた権能を適切に行使するために認められた権能(補助的権能説)であると解することができ、国政調査権を行使できる範囲が狭くなります。

 

現在は「政治的美称説」が通説であり、従って国政調査権は補助的権能であるとする補助的権能説が通説となっています。

 

 

国政調査権司法権、行政権の関係

補助的権能説をとる場合でも議院の権能は国政全般に及びます。そのため、国政調査権も国政に関することであれば行使可能となります。しかしながら、憲法は権力分立制を採用しており、行政権や司法権の権限を侵す調査は許されないとされています。

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行政権、司法権国政調査権の関係

行政権、司法権に対しても国政に関する事柄であれば国勢調査権を行使することは可能です。しかし、上記の表のように、それぞれの権力の独立を担保するため国勢調査権の範囲には限界があります。特に、司法権に関して、裁判所で審理中の事実に関して異なる目的のために調査することは認められますが、判決に関わるような調査などは認められていません。

 

また、行政権における検察権も起訴・不起訴と裁判に関する業務を実施する中で、政治的な圧力が加わらないよう国政調査権の範囲が制限されています。

 

 

国政調査権と人権の関係

また、行政権や司法権だけでなく、個人の人権への配慮も国政調査権の行使の際には求められてきます。

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人権と国政調査権の関係

上記に表に書いてあるように、基本的人権を侵害するような調査は当然のことながら認められていません。この考え方は、補助的権能説でなく独立権能説をとったとしても認められないという点で変わりません。

まとめ

国政調査権とは、国会が与えられた権能を円滑に行使するための調査の権能である。

国政調査権の範囲は、通説では補助的権能説から国政全般に及ぶとされる。

国政調査権の権能は国政全般に及ぶが、司法権、行政権、人権との関係上、制約が及ぶケースがある。

憲法に規定される国家賠償請求権とは?-公務員試験憲法を分かりやすく

最近ニュースを見ていたら、「国家賠償を求めて提訴」という文字を見たのですが、もし僕が公務員として働き始めた後に、住民の方に損害を与えてしまったら僕が賠償しないといけないのでしょうか?

どういった不法行為をしたかにもよるけど、通常国家賠償では国や公共団体に賠償義務があるかな。国家賠償は行政法でヤマになるトピックではあるけど、憲法にも賠償責任の規定があって択一で出題されることがあるから、今日は国家賠償請求権について理解できるようにしよう!

国務請求権とは?

日本国憲法は、「個人の尊厳」という目的を達成するために、「基本的人権の尊重」を基本理念の1つとしています。そのため、憲法には保証されるべき様々な人権が規定されています。しかしながら、「基本的人権の尊重」を保障するためには基本的人権を列記するだけでは不十分であり、人権保障をより確実なものとするため、国民が権利の保障を国に要求したり、裁判を受ける権利を保障してもらうなど国務請求権(受益権とも言います)も規定する必要があります。

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国務請求権(受益権)の種類

憲法上の国務請求権は、「請願権(16条)」、「国家賠償請求権(17条)」、「裁判を受ける権利(32条)」、「刑事補償請求権(40条)」の4つがあります。国民が国や公共団体から不利益を被った際に請求できる場所として裁判所があります。そのため、国務請求権とは「裁判を受ける権利」や判決後の「刑事補償」など政府に対する訴えに関連する権利のことを言います。

 

 

国家賠償請求権とは?

憲法で規定される国務請求権の1つに以下のような国家賠償請求権があります。

憲法17条

何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

国家賠償請求権とは、公務員の不法行為により損害を受けた場合に、国または公共団体にその賠償を求めることができる権利のことを言います。この権利は、行政権(省庁や自治体)に対してのみならず、警察による権限の行使に対してなど広く公務員の行為に対して賠償を求めることができる権利です。

 

そもそも、国家賠償請求権が認められるようになったのは日本国憲法の制定以降であり、明治憲法下では「国家無答責の原則」により、国家賠償に関する規定は何も設けられていませんでした。

 

 

損害賠償請求が認められるケースは?

具体的にどのようケースで国民が損害賠償を請求できるかについては、憲法にではなく国家賠償法という法律に規定されています。

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国家賠償が認められるケース

国家賠償法自体が第6条までしかないため、国家賠償が認められるケースの規定はあまり多くはありません。この中でもよくニュースなどで耳にする国家賠償請求の事例としては(4)の冤罪や(5)の警察の不当逮捕による損害賠償請求だと思います。

 

 

損害賠償請求の流れと賠償責任

損害賠償請求の流れとしては、以下のようになっています。

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損害賠償請求の流れ

公務員の不法行為による不利益を被った国民は、国や公共団体に対して損害賠償請求を請求するという流れになります。この時、本来の賠償責任は公務員自体にあるのか?、それとも所属する国や公共団体組織自体に対してあるのか?という考え方があります。

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賠償責任に関する説の対立

前者の「賠償責任は公務員にあり、国や公共団体は賠償責任を代わりに負っているに過ぎない」という考え方を「代位責任説」と言います。一方で、後者の「不当行為は公務員に与えられた職務権限の中で行われており、公務員の不当行為の責任は権限を与えた国や公共団体にある」という考え方を「自己責任説」と言います。公務員試験の憲法の範囲ではここまで出題されませんが、同じく公務員試験の行政法の範囲ではよく出題されるポイントなので、チェックしておくべきポイントになります。

まとめ

憲法上の国務請求権として、「請願権(16条)」、「国家賠償請求権(17条)」、「裁判を受ける権利(32条)」、「刑事補償請求権(40条)」の4つがある。

・国家賠償の認められる具体的なケースは、国家賠償法に規定されている。

・賠償責任について「代位責任説」と「自己責任説」がある。

衆議院と参議院の組織や権限の違いは?-公務員試験憲法を分かりやすく

よく衆議院参議院という言葉がニュースで出てきますが、具体的に何が違うのでしょうか?

憲法の講義でまだ勉強してない?公務員試験でもよく出題される範囲だからしっかり覚えておかないと!

いえ、まだ勉強してないです…。憲法の勉強は全然進んでないので…。

そうだったんだ。時事問題とかでも必要な基礎知識になるから、今日は衆議院参議院の違いについてマスターできるようにしようか。

国会の組織

日本国憲法42条には、国会は衆議院及び参議院で構成されると規定されています。

憲法42条

国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。

憲法42条の規定からも分かるように、日本国憲法では国会において二院制(両院制)を採用しています。日本では明治憲法下の帝国議会においても貴族院衆議院という二院制を採用しており、二院制という体制自体は戦前からの体制を維持しています。しかしながら、帝国議会における貴族院議員は選挙によって選ばれた国民の代表ではなく、現在の参議院とは大きく異なります。

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二院制が採用されている理由

二院制が採用される理由としては、議会の決定を慎重にできるようにしたり、議会の暴走を議会内で止めるためなどがあります。

 

後述するように両議院議員の間で権能の違いなど様々な違いはありますが、互いに暴走を抑制したりするために二院制が採用されているため、以下のように両院の体制自体はほとんど同じです。

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衆議院参議院の組織

組織として異なる点として、参議院独自に「調査会」があるという点です。調査会とは、参議院には解散がなく長期的かつ総合的な視点に立って国政に関しての調査等が行えるため、参議院独自に設置される機関になります。公務員試験ではここまで細かい点は出題されませんが、参議院には調査会があるという点は、衆議院と大きく異なる点になります。

 

 

両議院の定数や任期は?

衆議院参議院の組織体制全体としてはそこまで大きな違いはありませんが、議員定数や任期は両議院で大きく異なります。憲法第43条第2項では、以下のように両議院の定数について規定があります。

憲法43条

①両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。

➁両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。

第2項では、議院の定数は、法律で定めるとあります。ここで言う法律とは公職選挙法を表し、議員の定数については、公職選挙法第4条に「衆議院議員の定数を465人」、「参議院議員の定数を248人」(令和2年11月現在)と規定されています。

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両議院の違い

公務員試験でよく出る部分として、平成25年(2017年)の選挙権年齢の引き下げがあります。これまでは投票できる人(=選挙権を持つ人)は20歳以上でしたが、公職選挙法の回線により18歳以上から投票できるようになりました。

 

また、衆議院には解散の可能性や、内閣不信任決議ができるのに対し、参議院にはないというのが大きな違いとなります。これらの点は特に公務員試験で出やすいので注意が必要になります。

 

 

両議院の権能の違いは?

日本で二院制が採用されている理由として、先述したように専横化の抑制や審議の慎重性の担保など様々な理由があります。そのため、以下に列挙した権能は衆議院参議院ともに等しく有しているとされます。

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両議院が持つ権能

しかしながら、両院の権能を完全に同じにしてしまうと、両院で意見が対立した時に議論が進まなくなってしまいます。そこで憲法では、任期中でも解散の可能性がある衆議院に対して、重要事項に関しる優越を認めています。

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衆議院参議院のみの権能

特に衆議院のみの権能は要チェックです。例えば、内閣の信任・不信任決議は、内閣が解散権を行使するキッカケの一つでもあり、内閣の解散権に大きく関わってくる範囲でもあるためです。

 

また、法律案の議決、予算の議決、条約承認、内閣総理大臣の指名については、参議院と意見が対立したままで議論が先に進まなくなってしまっては特に大変な議題であるため、衆議院の優越を認めています。

まとめ

・日本の国会は、衆議院参議院の二院制で構成されている。

衆議院参議院の組織や権能の違いは、公職選挙法などに規定されている。

衆議院の解散と解散権に関する学説-公務員試験憲法を分かりやすく

最近「衆議院の解散」をするかどうかのニュースをよく見ます。これまで衆議院の解散について理解していると思っていたのですが、実際に憲法の問題を解いてみると色々な学説もあって結構間違えてしまいます…。

衆議院の解散権」については公務員試験でもよく出題されるし、いくつも学説があって択一問題でも惑わされやすい部分だよね。そうしたら今日は、衆議院の解散と解散権に関する学説について見ていこうか。

衆議院の解散とは?

衆議院の解散とは、衆議院議員全員に対して、その任期満了前に、議員の身分を失わせることを言います。なぜ衆議院の解散という制度があるかというと、解散後の選挙で「今後の政権運営はどの政党が担当するべきですか?」という質問を問うためです。

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国会では日々様々な問題について議論が行われていますが、内容によっては与党と野党の意見が対立して法案が議会を通過できないということがあります。意見が対立したままで法案が通過しないとなると、行政運営が停滞してしまいます。「それじゃあどっちがいいのか国民に聞いてみよう!」というのが解散の趣旨になります。

 

 

衆議院解散の過程は?

それでは、どのようなケースで衆議院が解散となるのでしょうか?憲法69条では、衆議院が解散となるケースを以下のように規定しています。

憲法第69条

内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

憲法69条では、内閣不信任決議案が可決(または、信任決議案が否決)後、10日以内に内閣が衆議院解散を宣言することによって解散となります。また、後述するように学説上の対立はありますが、一般的に69条の規定に基づく解散以外でも、内閣は自由に衆議院解散を宣言することができます。

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衆議院解散の過程

つまり、衆議院の解散は、①内閣不信任決議の可決(内閣信任決議の否決)と、➁内閣の決定という2つのケースに分類することができます。そして、①のケースで内閣が衆議院の解散を行わない場合、内閣はそのまま総辞職となります。一方で、①と➁のケースで衆議院が解散となった場合、40日以内に総選挙を行う必要があります。そして総選挙後、30日以内に国会に召集(特別会と呼ばれます)となり、新たな内閣総理大臣が任命されます。

 

 

解散権に関する学説

日本国憲法において、どのような場合に内閣が衆議院解散を行うことができるか明確に規定しているのは憲法69条のみになります。しかしながら衆議院解散の方法が憲法69条のみしかないとすると、内閣不信任決議/信任決議という国会起点でしか解散というアクションがとれなくなってしまい、内閣が解散権を行使できる範囲が著しく狭くなってしまいます。

 

そこで、学説上は、衆議院が解散できるケースを憲法69条の条文だけに制限する69条説のほかに、65条説(行政説)、制度説、自律解散説(41条説)、7条説という4つの学説があり、内閣の解散権を広くするための根拠づけがなされています。

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解散権の範囲に関する学説

色々な学説がありますが、69条説以外は、各条文や制度を基に、内閣の自由な解散権を認めるという立場をとっています。特に、65条説(行政説)は、衆議院の解散権を行政作用と捉え、「解散権は行政作用なのだから内閣が自由に解散できる権限があるよね」という無制限に解散権を認める立場をとっています。

 

しかしながら、内閣に自由な解散権は認めるけど、主権者はあくまで国民であり、解散は国民の信を問うための制度で行政の無制限な解散権は認めないという立場をとっているのが、制度説や自律解散説、7条説となります。特に、天皇の国事行為に対する内閣の助言と承認を通じて内閣に実質的な決定権があるため、自由な解散権を認めるという7条説が通説となっています。

まとめ

・通説では、衆議院の解散権は内閣に属するとしている。

衆議院の解散を行使できるケースとして様々な学説があるが、7条説が通説。

国会の会期の種類は?-公務員試験憲法を分かりやすく

少し前に「臨時国会が召集された」というニュースを見たのですが、通常国会とか「○○会」って言葉がいくつかあって、少し混乱しますね…。

そうだね。でも、公務員試験の憲法でも出題される範囲だから国会の種類についてはしっかりと覚えておく必要があるね。

そうですね…。実は違いがあまり良く分かっていないので今教えて頂けますでしょうか??

国会の会期に関わる条文

国会とは、国民の代表である議員が話し合いを行う場所のことを言いますが、話し合いの場所を確保するため、日本国憲法では以下3つの条文によって国会の会期・種類を規定します。

第52条

国会の常会は、毎年一回これを召集する。

第53条

内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。

第54条

衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。

衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。

③前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。

 

国会の会期の種類

憲法52条から54条の条文から、常会(通常国会)、臨時会(臨時国会)、特別会(特別国会)、大きく3つの国会の会期と、緊急集会という4つの国会の活動に分類することができます。

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国会と集会の種類

常会(通常国会)

常会とは、毎年1回、定期的に召集される国会のことを言います。常会については憲法52条に規定されていますが、国会法2条では、毎年1月中に召集することを常例として定めています。通常、会期は150日ですが、会期中に議員の任期が満期に達する場合には、その満期日までとなったり、一方で両議院一致の議決があれば会期の延長も一回だけ可能です(議決については衆議院が優越)。

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常会・臨時会・特別会とは

臨時会(臨時国会)

臨時会は、臨時の必要に応じて内閣の決定によって召集される国会のことを言います。臨時会については憲法53条に規定されており、議員の要求によって臨時会を開くことも可能です。いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば内閣に要求が可能となります。また、衆議院議員の任期満了による総選挙、参議院議員通常選挙の場合にも内閣に臨時会の召集決定義務が生じます。

 

さらに、臨時会は常会と異なり2回まで延長可能です。会期の長さと延長については、それぞれ両議院一致の議決が必要になりますが、これも衆議院が優越します。

 

特別会(特別国会)

特別会は、衆議院が解散され、総選挙が行われた後に召集される国会のことを言います。憲法54条の規定では、解散の日から40日以内に衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から30日以内に特別会を召集しないといけないとされています。特別会は、衆議院の解散によってのみ開かれる会であるため、任期満了の場合など解散以外の場合には特別会は開かれません(ちなみに、任期満了の場合後に開かれるのは臨時会になります)。

 

会期の長さや延長に関するルールは臨時会と同じです。「わざわざなんで臨時会と特別会を分けるの?」と思うかもしれません。しかしこの違いは択一問題などでも出題されることが多いため、注意が必要です。

 

緊急集会

最後に、憲法54条2項・3項では、緊急集会と呼ばれる会が定められています。緊急集会とは、衆議院の解散中、国が緊急の必要があると認める場合に参議院で開かれる集会になります。

 

衆議院が解散すると、参議院は同時に閉会となります。しかしながら、閉会中も緊急のために議論を進めないといけない事柄があることもあります。そこで憲法は、緊急集会という形で対応できるようにしています。

 

緊急集会は内閣のみが求めることができ、定義上は「国会」ではないため、天皇による召集(国事行為)は必要ありません。また、期間自体はないですが、緊急の案件の審議を終えたら終了となります。また、次の国会(特別会)の開会後10日以内に衆議院の同意がない場合には、その措置の行為は失われるとされます。

 

 

会期に関する原則

国会の会期のルールとして、大きく2つの原則があります。

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会期の原則

まず一つ目は、「会期不継続の原則」と呼ばれる原則です。これは、前の会期の意思は、後の会期の意思に影響を及ぼさないとする原則です。つまり、もし当会期中に議決に至らなかった案件については、その次の会期に継続して審査されることはなく、一度廃案となります。

 

しかし例外もあり、各議院の議決により付託された案件については、常任委員会や特別委員会で継続して審査することができ、その後の会期に継続することがあります。

 

次に、「一事不再議の原則」と呼ばれる原則があります。これは、既に議決のあったものと同一の問題について同じ会期中には再び審議しないという原則になります。「一事不再議の原則」については条文上には規定がなく、先例として踏襲されている原則のため、原則に従わなくても明確に違反しているというわけではありません。

まとめ

・国会の会期には、常会、臨時会、特別会の3つがある。

・国会の会期の召集は天皇の国事行為であるが、緊急集会では天皇の召集は不要。

・会期に関する原則としては、会期不継続の原則と、一事不再議の原則がある。

国会議員の3つの特権とは?-公務員試験憲法を分かりやすく

この間国会議員に関するニュース見ていたんですが、国会議員の給料ってすごく高いんですね!あんなにもらえるなら僕も将来なりたいです。

国会議員は歳費という形で手当てをもらえるんだけど、確かに金額は普通のサラリーマンと比べると全然高いよね。もちろん、任期もあるし色々な調査とか人間関係の構築が必要だから結構費用がかかるそうだけど。

そうなんですか?ちなみに、どうやって国会議員の歳費って決まるのでしょうか?

うん、具体的には「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」などに規定されているんだけど、憲法上にもその規定があるよ。また、憲法上には国会議員の3つの特権を規定していて、公務員試験でも出題される可能性があるから、しっかり理解できるようにしようか。

国会議員の3つの特権とは?

日本国憲法は、議員が国民の代表としてその職務を全うできるようにするため、3つの特別な権利を規定しています。

国会議員の3つの特権

(1)歳費受領権

(2)不逮捕特権

(3)免責特権

上記3つ以外にも、通常の権能として、国会召集請求権(53条)や、国会法に規定されている内閣に対する質問権(国会法74条)など様々な権能があります。しかしながら、特に重要な権能として憲法では、「歳費受領権」や「不逮捕特権」、「免責特権」を特権として定めています。

 

 

歳費受領権とは?

国民の代表として活動をするためには、国会で話し合うだけではなく、住民一人ひとりと話し合いを行ったり、実態調査を行ったりするための活動費が必要となってきます。また、国民の代表として活動する期間中の給料の保障が必要となります。そこで憲法第49条は、以下のように国会議員の歳費、つまり給料の保障を規定しています。

憲法第49条

両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。

憲法は国の最高法規として、改正するには厳しい要件があります。そのため、憲法には直接的に歳費の額などは規定されず、「法律によって定める」とされています。

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国会議員の歳費

国会議員の歳費は、「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」第1条に基づいて、上記のような金額で支払われます。ちなみになぜこの金額になるかというと、金額の根拠は「国会法」第4章35条に「議員は、一般職の国家公務員の最高の給与額(地域手当等の手当を除く。)より少なくない歳費を受ける。」と規定されているためです。これは、国会議院は、国家公務員の中でも特に重要な公務に携わる者であるとされているためです。

 

また、上記の歳費以外にも、文書通信交通滞在費として月額100万円支給されていたり、期末手当(ボーナス)を支給されるなど、在職期間中は厚く保障されていることが分かると思います。

 

 

不逮捕特権とは?

二つ目に、不逮捕特権という特権が憲法第50条で以下のように規定されています。

憲法第50条

両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

不逮捕特権とは、行政府による逮捕権の濫用によって議員の活動が妨害されることを防ぐという趣旨の規定になります。この不逮捕特権ですが、議員である期間中ずっとというわけではありません。不逮捕特権は、国会の会期中のみ適用されます。

 

国会の会期中とは、通常の会期である常会、さらには臨時会、特別会が開かれている期間を言い、この期間は不逮捕特権が認められます。さらに、参議院の緊急集会は国会の会期中には当たりませんが、例外として緊急集会開催中の参議院議員にも不逮捕特権が認められます。なお、国会閉会中に委員会が継続審査をすることもありますが、この期間は会期には当たらず、不逮捕特権は認められません。

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議員の不逮捕特権

しかしながら、第50条中にも書いてあるように、法律の定める場合は会期中であっても逮捕されることがあります。その例としては、①院外における現行犯逮捕の場合と➁議院の許諾がある場合です。現行犯逮捕の場合には、犯罪の事実が明白であり、不当な逮捕である可能性が少ないため、不逮捕特権は認められません。また、➁の議院が許可した場合にも、議員の審議権が確保されることとなるため会期中でも不逮捕特権は認められません。

 

 

免責特権とは?

三つ目は、国会議員の院内での演説等は、院外で責任を問われないという免責特権になります。免責特権は、憲法第51条に以下のように規定しています。

憲法第51条

両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。

免責特権とは、院内における議員の発言や表決の自由を最大限に保障するための規定になります。「議院で行った演説や討論、表決」とありますが、議事堂の敷地内でしか適応されないというわけではありません。実際には、議事堂外での演説も含まれます。

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議員の免責特権

上記の図のように、院内で行った演説や討論、表決については、院外での刑事・民事などの法的責任は問われないこととなっています。しかしながら、院内で行った行為について法的責任は問われませんが、議院での懲罰や所属政党、支持団体による除名処分や懲罰から免れるというわけではないので、この点注意が必要です。

 

免責特権は、両議院の議員には適用されますが、国務大臣、地方議会の議員、証人・参考人・公述人にはこの特権が及びません。

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免責特権の主体と対象

また、免責特権の対象としても、国会議事堂内で開かれた政党の集会、議員連盟等の会合での発言や、正規の手続きを経ないでなされる会議中の単なる私語、野次等の不規則発言は対象となりません。さらに、暴行・傷害・公務執行妨害等の犯罪行為も対象となりません。

まとめ

・国会議員には、憲法の規定に基づいて3つの特権がある。

・「歳費受領権」、「不逮捕特権」、「免責特権」が国会議員の特権である。

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