外国人が基本的人権を享受できる範囲は?-公務員試験憲法を分かりやすく
最近公務員試験対策のために憲法で基本的人権について勉強しているのですが、憲法11条で「国民は基本的人権を享受できる」とありますよね?国民って日本国民のことだから、外国人は基本的人権を享受できないってことでしょうか?
勉強していて偉いね。確かに憲法11条にはそう書いてあるから、日本人と比べて日本で外国人が保障される基本的人権は制限されてしまうよ。でも全く保障されないというわけではなくて、保障される範囲は公務員試験でもよく出題されるから、今日は一緒に見ていこう。
基本的人権とは?
基本的人権とは、全ての人々に当然に認められる権利のことを言い、具体的には自分の言いたいことを発信できる表現の自由であったり、自分の住みたい場所に住む居住権などの権利を言います。何が基本的人権なのかは国によって異なりますが、日本国憲法では、第3章に規定されているように、以下のような権利が基本的人権として、国民全てが当然に主張できる権利になります。
日本国憲法に規定される基本的人権は、上記のように4つに大別されます。一つは、「自由権」と呼ばれる権利であり、思想・良心の自由や職業選択の自由など国家から強制されない自由になります。
次に、「社会権」という権利は、生存権や教育を受ける権利など、国家によって保障してもらう権利になり、「自由権」とは性質が異なります。三つ目は「参政権」ですが、これは「受益権」とも呼ばれ、請願権や裁判を受ける権利があります。最後に、「その他の権利」とは、アクセス権やプライバシー権など社会の進展に伴って保障してほしいと要請されるようになった新しい権利になります。
人権の性質は?
人権は、以下の3つの性質を持っているとされています。
まず一つ目は、固有性という性質になります。人権は、憲法や天皇から与えられるものではなく、人であることにより当然に与えられる権利であるという考え方になります。
二つ目は、不可侵性という性質になります。人権は、公権力などによって侵害されることのない、「侵すことのできない永久の権利」という性質であるという考え方です。しかし、無制限に認められるというわけではなく、他の人の人権との兼ね合いの結果、「公共の福祉」によって公権力によって人権が制約されることもあります。
三つ目は、普遍性という性質になります。人権は、人種、性別、身分などの区分に関係なく、広く保障されるという考え方です。ただし、後述するように外国人など合理的な区別がなされる結果、人権が制約されるというケースはあります。いずれにしても、日本国憲法は上記3つを兼ね備えた権利を人権と定義しています。
外国人が保障される人権の範囲は?
日本国憲法は、第11条で「国民は、すべて基本的人権の享有を妨げられない」と規定しており、ここでいう国民とは、「日本国民」を指すため、外国人の基本的人権は保障されないのか?という疑問が出てくると思います。
人権の性質である固有性や普遍性に照らして、外国人にも平等に人権が保障されるべきです。そのため、憲法で規定される基本的人権の保障は外国人にも等しく及ぶといする立場が支配的です。しかしながら、予算の限界など国家運営の関係上、日本に住む外国人は、日本人と比べ享受できる基本的人権の範囲が制限されています。
下の表を見てください。まず日本人は当たり前ですが、全ての基本的人権を享有できます。しかしながら、日本における外国人の基本的人権は、一定程度制限されてしまいます。また、外国人については、定住外国人と一般外国人に分けて考えています。
定住外国人とは、学説上様々な定義がありますが、永住者を定住外国人とする説が有力です。一方で、短期滞在であったり永住者でない外国人は一般外国人として定義されます。なぜこのように2つに分類して考えるかと言うと、日本に一定期間以上住む外国人が、来日して数ヶ月もしないような外国人より基本的人権の制限が緩和されるべきと考えられているからです。
まず、一般外国人には参政権や社会権、入国の自由などの基本的人権が制限されます。なぜこれらの権利が制限されるかというと、まず参政権については日本の政治に外国人が介入するのは好ましくないためです。また、社会権とは生活保護などの社会保障を受ける権利のことですが、財源にも限度がある中で、税金をこれまで払ってこなかった外国人にまで保証することが困難だからです。また、入国の自由ですが、これは外国からテロリストなどが入国しないよう水際対策として必要な場合があるためです。しっかり説明しようとすると理由はもっと詳細になりますが、とにかく安全上や政治上、行政運営上の理由などから一般外国人の人権が一定程度制限されます。
一方で、定住外国人の場合は、一般外国人と異なり社会権や入国の自由が保障されています。というのは、定住外国人は生活の拠点が日本であり、簡単に母国に戻れとも言えない部分があったり、これまで定住者として税金を日本で納めてきたりなど一般外国人と事情が異なるためです。さらに、生活の拠点が日本であるため、入国の自由が認められないと住み慣れた場所に戻ることもできないので、入国の自由も保障されています。
しかしながら、定住外国人であっても国政選挙権、国政被選挙権は制限されています。これらは国家の政治に関わる大事な部分であり、日本国民が決めるべきだという考えからです。ただ、地方選挙権などは認められているとするのが判例の考え方です。これは、定住外国人もその地域で長く生活してきており、地域をよりよくするための選挙権は認めてもよいというスタンスだからです。